浮気されて怒らない令嬢はいますか?
何故かグレン殿下と市場に来ることになってしまった。
どういう状況……?
あの後、エカテリーナ様は止めてくださったが「行く」の一点張りで私が折れてしまった……。
いいのか?王族がこんな人が多い所に来て。
「大丈夫だリリィ。一応俺の護衛が付いているから」
「それなら……」
仕事ではないので服もシンプルなワンピースに髪も下ろしている。
「…………」
「あの、何か?」
「リリィは仕事とプライベートでは雰囲気が随分変わるな」
「そうでしょうか」
「あぁ! 今のリリィもとても美しい」
「っ……」
何なの今の!?サラッと褒めてくるあたり流石王族って感じだけど。
普通にびっくりしたー!
「リリィ?」
「殿下、その様な事を軽々しく女性に言ってはいけません。誤解されます」
「流石に俺だって誰彼構わず言わないさ」
「……そうですか」
※
「ほぉ! これは凄い活気づいているな!」
「この国では他国の輸入品など様々なものを取り扱っていて、それがこの市場に集まっているので毎日活気づいています」
「流石だな」
グレン殿下は初めて見る物が多いのか、あれは?これは?と興味がある物を片っ端から見ていた。
「店主これはもしや……」
「お、兄ちゃん良い目をしているな!これは隣国のバイデン国から取り寄せた宝石だ。価値は安いが逆に平民には人気だ」
「そうだな綺麗だ」
「兄ちゃんどうだい? その宝石を使ったアクセサリーなんかそこの美人な恋人に贈るのにもお勧めだ」
「お、店主も良い目をしてるな!」
「ちょっ! でんっ……グレン様!」
「リリィ、ちょっとこっちを向いてくれ」
殿下は私の髪に髪留めを合わせていく。
「あ、あの」
「これだな、店主これを貰う」
「毎度ありがとうございます」
そのまま殿下と広場に行き休憩をする事に、そこで先程買った物をプレゼントされる。
「今日のお礼だリリィ」
「しかし……」
「俺からのプレゼントは中々ないぞ?」
そりゃあ王族からプレゼントされる事なんて普通ないですからね。
グレン様の引く様子がない姿に溜め息が出そうになりつつも有難く受け取る事に。
「ありがとうございます」
「あぁ」
そのままグレン殿下は王宮に泊まることになり、久しぶりのエカテリーナ様との家族団欒を楽しんだという。
次の日。
「変じゃないかな?」
グレン殿下から頂いた髪飾りを使って髪を纏めていた。
シンプルでそれでいて使いやすいデザインに実は気に入っていた。
噂はまだ流れたままだが私の事を知っている人は事情も知っているので噂を本気にする人はいない。私を気に食わない人が流しているぐらいだ。だが、そんな事気にしている暇も時間もない。
「リリアン?」
「え、アラン」
エカテリーナ様の所に行こうとしていたらまさかの元婚約者に出会ってしまった。
うわー、最悪。
そういえば、騎士団に所属していたわね。出会いたくなかったわ……。
「久しぶりだねリリアン」
「……もう婚約者ではないので名前を呼ぶのは止めて頂けますでしょうかブラケット様」
「あっ、そうだね」
ちょっと!なんでしゅんとした顔するのよ!
私が悪いみたいじゃない!ほら、そこらのメイドが「悪女よ……」なんて言ってるでしょ!?
「元気そうで良かったよ。あれ以来会ってなかったから」
「そうですね、元気ではあります。お陰様で心置きなく仕事に集中出来ておりますので」
「……やっぱりまだ怒っているのか?」
はぁ!?浮気されて怒らない令嬢がどこにいるって言うのよ!
「あの時は本当にすまなかった。ずっと近くにいたから当たり前になっていて君がいなくなってから分かったんだ」
「…………」
「許してくれとは言わない。けどもう一度僕にチャンスを貰えないか!」
「え?」
意味が分からない事を言うアランにぽけーっとした顔になってしまった。
「やっぱり僕には君しかいないんだ」
「え、」
「君のためなら何だってする!」
「ちょ、あの」
「だからもう一度やり直さないか」
「ん?」
なんで?
どういう考えになるとそんな答えが出るの?
「アランどういう事?」
「君ともう一度やり直したいんだ」
「いえ、だってあのご令嬢はどうしたのよ」
「……ハンナは本当は妊娠していなかったんだ」
「えぇ!」
「彼女は僕と結婚したかったみたいで咄嗟に嘘をついたみたいなんだ」
「なっ……」
「元々それっぽい症状が出てたから本人は妊娠していると思って僕に言ったみたいだが、後から実は違う事が分かったけどその後言えずにいたらしい」
「そう……でもだからといって私達がやり直す意味が分からないわ」
「僕は目先の事ばかり見ていて君の本当の姿を見ていなかったんだ。こんなにも僕の事を想っていてくれていたのに」
「ん?」
「あんな噂が出るくらいだ君も僕の事忘れられなかったんだよね」
すぐに忘れましたなんて言えない。