山口県での出来事①
長期出張ともなると、ホテルではなくアパートを借りて自炊する事になる。
特に、今回の山口県の出張は、半年間という長期だった。
アパートは一室5人の共同部屋。
台所は一つしかないので、各自、ご飯は順番に作る。
その中で、1番の節約家のY班長。
出張費を浮かすために、毎日の晩御飯はいつも“お好み焼き”だった。
仕事が終わると、風呂も洗濯も順番なため、Y班長はアパートに帰ってくるなり、真っ先にお好み焼きをボールに練って下準備をする。
その間に、別の先輩が風呂に入るのだが、Y班長は下準備が終わると、次に風呂に入る。
風呂から出ると、お好み焼きを焼き始める。
これがY班長のルーティンである。
ある日、いつものようにY班長がお好み焼きを練り上げ、お風呂に入っていると、T先輩がお好み焼きが入ったボールに七味唐辛子を少し降って混ぜていた。
T先輩「気づくかな?」
と言って、Y班長が風呂から出てくるなり、T先輩は知らないフリをしていた。
いつものようにお好み焼きを焼き上げ、普通に食べるY班長。
その後、何事もないように完食した。
この日から、T先輩のイタズラ心に火が着く。
次の日は、小さく刻んだえのきを入れてみる。
しかし、普通に何事もないように完食するY班長。
次の日はイカソーメンを半分、ボールに入れてみる。
T先輩「さすがにコレは、歯ごたえで気づくやろ!」
と、自信満々に言っていたが、やはり気づかないで完食するY班長。
Y班長「ふぅ~、美味かったわ。」
これに腹を立てるT先輩。
T先輩「なるほどねぇ…
ワイのイカソーメンの借りを、キッチリと返してもらおうやないか!」
さらに次の日、この日はキムチのお好み焼きを練ったY班長。
真っ赤に染まったボールに、T先輩は禁断の行動に出る。
チューブのわさびを大量に投入。
ボールを混ぜると、赤色だったのが、赤緑の不気味な色に変わってしまった。
我に返ったT先輩。
A先輩「やべっ!
これ、見た目で絶対に気づくわ…
どないしよ…?」
それを見ていたA先輩が、チューブの豆板醤を出して来た。
A先輩「これなら中和して、わからんようになるんとちゃうか?」
と言って、Tせ先輩に手渡した。
T先輩「サンキュー♪
入れてみるわ。」
と、赤緑色のキムチのお好み焼きに、豆板醤を大量に入れた。
A先輩「おいっ!
それ、メチャクチャ辛いやつやで?
入れすぎやっ!」
T先輩「えっ!
そうなん?」
ボールを混ぜると、今度は赤黒く色が変わる。
それと同時に、ボールから溢れる強烈な辛味の匂い。
T先輩「痛ッ!
このキムチのお好み焼き、目がメッチャ痛いわっ!
これどないしょ?
やりすぎたわっ!」
A先輩「やけん、言うたやないか!
こうなったら、砂糖で匂いと辛味を中和できんか?」
そう言いながら、A先輩は5キロの砂糖の袋をT先輩に手渡す。
T先輩「それいいな!
ナイスや!」
T先輩は赤黒い、辛味の匂いを放つボールに、またしても大量に砂糖を投入した。
A先輩「アホかっ!
何でも入れすぎじゃ!」
ボールの中は、まるで塩盛りをしたみたいに砂糖が盛られていた。
A先輩「お前…
砂糖2キロも入れて…
これ、下手したら死ぬぞ?」
T先輩「もう後には引けんわっ!」
そう言ってボールをこねるA先輩。
T先輩「あかんっ!
砂糖が多くて混ざらんわっ!
ヤバッ!」
A先輩「みてみい!
入れすぎるからや!
水で薄めるしかないぞ?」
T先輩「ほな、牛乳で薄めたろ!
パンケーキもお好み焼きも同じやろ。」
そう言って牛乳を投入し、かき混ぜるT先輩。
T先輩「ちょっとシャリシャリ感が残ったけど、色と匂いもマシになったし、いけるか?」
ボールの中で最初は2/1ぐらいだったキムチのお好み焼きは、3/2ぐらいに膨れ上がっていた。
A先輩「色が赤黒で、量も増えとるし、これは絶対に気づくわ!
ワシ、知らんけんな!」
そう言っていたら、Y班長が風呂から出てきた。




