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鈴の音の子守唄  作者: トトコ
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序章

「お前が―――か」


晴れ渡る空の下、一面に広がる花畑に、場にそぐわぬ武装した男がいた。


彼の視線の先には頭をすっぽりと覆う繊細なヴェールに包まれた少女。


彼女の反応はない。花を摘む手は休む様子も見せない。

男は彼女が反応を示すまいが気にせず続けた。


「この国は、俺が貰う」


花を摘む手が、止まった。


「これまで栄えてきた神国アルフェッラもこれまでだ」

「…」


風に花畑が波のようにうねる。静かに、さやさやと風がささやく。

とりどりの花弁の舞う幻想的な風景の中、響く男の声はその世界をはねのける力を持っていた。


そこでようやく少女は男に目を向けた。

薄いヴェールの越しの漆黒の瞳と彼の翡翠の瞳が初めて合わさった。


「…そうなったらお前もこうしてはいられまい」

男はその目と真正面から対峙した。

彼女は静かに彼を見つめる。

「だが、ここでお前に選択肢をやろう。一つは国と共に美しく滅ぶか。儚げな少女が国と共に散る。なんとも情緒的じゃないか。吟遊詩人共はこぞってお前を悲劇の巫女と(あが)(たてまつ)るだろうさ」

少女は答えない。


「二つめは、お前が――――――」







男が告げた言葉を聞いた後、少女は吟味するように小さく瞬きした。

そうしてしばしの沈黙の末、彼女は初めて口を開いた…―――。










チリィン―――――――――……………………










―――少女の首元の鈴が、小さく、鳴った――――…。


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