第十六話 レイディアの仕事(最重要)
「その花はもっと上に飾って…そう、少ししなる様にね」
「薄紅の絹紐余ってませんか?同じものが切れてしまったんですけど…」
「燭台と飾りは一定に離して。燃え移ると大変だからね。あ、でも灯りで陰影付けたいから離し過ぎもだめよ」
「垂れ布はぴんと張らないで。ゆったりたわむくらいに」
謁見も無事に終わり、宴の準備に今度は女官達の出番がきた。城中の使用人達はそれぞれ奔走しだす。
新しい側妃を歓迎するという名目で、王宮で盛大な宴が催されるのだ。実に五年ぶりである。皆の気合が反映される様に、飾りの一つ一つが生き生きと輝き、宴の間が幻想的な色彩に彩られた。シルビアの髪に合わせて金色や黄色を基調とした装飾だ。飾られる花は白百合。シルビアを例える花だ。宴の間を満たす百合の甘い香りが、何処か別世界に紛れこんだかの様な不思議な感覚を演出する。
あちこちで飾り付けや料理の論争が繰り広げられる中、レイディアも当然その渦中にいた。このような楽しげな雰囲気の中で、相変わらず俯きがちで、言葉を交わすも義務的な会話のみ。淡々と女官らに指示されるまま厨房や広間の間を行ったり来たりした。
「レイディア様」
レイディアの仕事が一段落したのを見計らってか、クレアがそっと袖を引いた。
「何?」
人のいる場では滅多に寄って来ない彼女に不思議そうに首を傾げた。
「あの……」
クレアは耳打ちした。
「…そう。じゃあ早速そっちに向かうわ。後をよろしくね」
「畏まりました」
クレアに背を向け歩き出した。自身の部屋へ。
「ディーアちゃん」
自分の部屋の戸を開けて真っ先に目に飛び込んできたのは藍色だった。服の裾にひらひらとした繊細な群青色のレースがあしらわれ、下へ垂れ下がる様に小さなガラス玉が数珠状に連なっている。意匠は可愛らしいが着る人が着れば喪服でも通りそうな暗い色どりだが、にじみ出るソネットの明るい性格のせいか陰気な雰囲気はなかった。
今日の髪は灰色か。レイディアは何とはなしに思った。
「こんにちは」
「お久しぶりですね」
にっこり笑いかけてくる『ミレイユのお菓子工房』店主、ソネット。何故か一抱えもある荷物を持ってきている。
「お茶でも出したいところですが…ここには備え付けがなくて…ごめんなさい」
「あ、いいのいいの。気にしないで」
「それで…どうしました?貴女がここに来るなんて珍しい」
ソネットは表業のお菓子屋の仕事も忙しいのでこちらへの連絡等は専ら配下の仕事だ。
「うん?今日の宴、私も参加しようと思って」
持参した荷物を掲げて見せる。中身はどうやら宴用の衣装らしい。
「…そうですか」
レイディアは頷いた。それだけの説明で事情を察し、余計な事を聞かないレイディアにソネットは感心したように唇をつりあげた。
「では、着替えのお手伝いを…」
「いいの、ここで着替えていいか訊こうと思っただけだし。大丈夫、慣れてるから」
まあ頻繁に身に付ける衣装を変えているソネットにとって多少着るのが大変な衣装もお手のものだろう。
言葉に甘えて仕事に戻ろうとしたレイディアはしかしソネットに引きとめられた。
「あ、えっと…」
しかし気まずげに目を泳がせて話そうとしない。ソネットにしては珍しい行動だ。レイディアは黙ってソネットの言葉を待った。
「エリカが…帰ってきたわ」
レイディアは数度瞬きをした。
「……そうですか。よく見つかりましたね」
レイディアは素直に感心した。同時にレイディアをここへ態々呼び出した本題はこれだと気付いた。
「街で落ちてたから拾ったの」
「………」
何故。そう思ったが口にしなかった。エリカに限ってはそんな問いは愚問というものだ。
「…それで、今家にいるのよね…お腹一杯で寝てるわ」
その言葉を聞いてレイディアは了解した。
「では今日一日は彼女を動かすのは無理ですね。私がそちらに行ければ良かったんですけど、さすがに手が離せません。差し支えなければ明日くらいに連れてきてもらえませんか?」
「…うん、そうするわ。ごめんねぇ」
はぁ、と心底面倒そうに溜息をついた。エリカの扱いはソネットでさえ手を焼くようだ。
レイディアは労りの念を込めて首を少し傾け、ソネットを残し騒がしい王宮へと戻っていった。
宴には後宮の妃達も参加する。その後ろで待機している侍女達、招待された貴族達がそれぞれ煌びやかに装って宴の場に散りばめられ、そこかしこで交わされる会話は漣のよう。
そしてその中で一際輝き、人々の注目の集めているのがシルビアである。彼女の周りには引きも切らずに祝辞を述べに来る貴族達が群がった。
「この度はシルビア・ポルチェット様のお輿入れ、真におめでとうございます」
「真にお美しい。これからもますますこの国は栄える事でしょう」
そんな彼らの言葉にシルビアは一つ一つ頷いて百合の様な清楚な笑みを見せ、時に言葉を返し、貴族男性達の頬を赤らめさせた。
その絶世の美女を娶る当の王は、普段と変わらない無表情ながらも特に何も言わずにその様を眺めていた。宴に相応しい衣装を身に纏い、泰然と構えている王と、その傍で楚々として寄り添っているシルビア妃。どちらも並はずれて美しい。並んだ様子は一幅の絵の様で、さらにはその隣り合った構図が貴族達には仲睦まじく映り、益々シルビアに阿った。
その時、人々がざわめいたかと思うとざぁっと人波が引いた。
「……エーデル公爵様だわ……」
「…ノノリズから態々いらしたのね…」
「……王とご対面なさるのはお久しぶりね…」
ひそひそと貴婦人や紳士の間で囁きが紡がれる。
「今宵はなんとめでたき日よ…夜空にかかる月も祝福していようて…」
その割れた波間を当然の様に歩いてくる人物を目にし、ギルベルトはほんの僅かに眉を上げた。
「これは…エーデル公。遠方遥々痛みいる」
「何の。大事な甥の祝宴であるぞ。老骨に鞭打ってでも飛んでこようぞ」
エーデル公は恰幅の良い身体を揺らして声を上げて笑った。
「それに、今宵の主役は我が領地の一画、リヴェラの白百合であるしのぉ」
エーデル公はちらりとシルビア見た。
「領地にいた頃から噂はかねがね聞いておったが…ほんに美しい姫君ですな」
「ありがとう存じます」
シルビアは突如現れたこの大物にもゆったりと構えて微笑んでみせた。
「姫よ、お父上はお元気か」
「ええ。お陰様をもちまして父や母を始め、リヴェラの民は飢える事も敵国に脅かされる事も無く日々平穏に過ごしております」
「そうか。大事なく結構な事だ」
「エーデル公…」
「憂うものなく、真に祝着至極。我がノノリズの娘は我が娘も同然。何か変事があれば力をお貸ししようぞ」
大きな腹を前に突き出して愉快そうに笑った。
「――叔父様、お久しぶりにございます」
エーデル公の笑い声が収まると、見計らった様に第三者の声が彼らの間に割り込んだ。シルビアが顔を向けると、彼女とは反対側の王の隣にいたローゼが身を乗り出していた。
「おお、これはローゼ妃。相変わらず大輪の薔薇のように美しいの。ミルリエーナに似てきた」
賛美のままに、真紅の薔薇の如き唇を妖艶に歪ませ優越に微笑んだ。
「まあ、叔父様。今宵の主役はシルビア姫ですのよ。お褒め頂いて嬉しいのですけど今日のわたくしは唯の脇役ですわ」
扇で優雅に口元を覆う。美しく整えられた薔薇色の爪が照明に煌めいた。
「おやおや、ローゼ妃は謙虚だのう。秋妃を気遣って差し上げるとは」
「そんな…当然の事でございますわ」
彼らのやり取りをギルベルトは目を瞑り、無言でやり過ごした。
ひとしきり彼らだけで花を咲かすと、やがてエーデル公は上機嫌で下がっていった。
ローゼも満足げに椅子に座りなおした。
先王の異母弟であるエーデル公と親しげに会話した事は他の側妃にも、その様子を見ていた貴族達にも見せつける事が出来た。今は臣籍に下っているが王位継承権は未だ保持しているエーデル公との繋がりがあるのは自身も王族に連なる者だからだと、他者とは格が違うのだと。
万が一王がシルビアとの事を考えていたとしても、これで考えなおされるはず…。
ローゼは上位者という目線で優しげな笑みをシルビアに向けた。
シルビアも少々固くなってはいたが優美な笑みを返す。彼女の固い表情にローゼは喜んだ。
傍から見れば白のシルビア、赤のローゼが王を挟んで仲睦まじく微笑み合っている様に見えるだろう。他の側妃とは違い、新参者に対しても鷹揚な態度をとる筆頭側妃。ああ、なんて自分は出来た妃であろう。
その酔いしれた気分のまま隣の王を仰ぎ見る。無表情ながらも精悍な横顔。滅多に笑みを見せてはくれぬ冷徹な王。一瞬でもこちらを見ないものかと、その目に自分を称讃し、欲する男の気配はないかと期待して、さりげなさを装ってそっと腕を伸ばす。
わたくしはこの国で最も高貴な姫。わたくし以上に王に相応しい女なんかいるものですか。
ローゼは笑顔を保った。
ローゼの手が王の腕に触れる瞬間、王の腕が遠のいたのは、単に彼が酒杯に手を伸ばしたから。さっきまで長いこと会話をしていらしたのですもの。ええ、喉が渇いて当然だわ。ええ…それだけよ。
ソネットの目には王がいらついているのがよく分かる。侍る側妃達はあんなに傍にいるのにどうして気付かないのか不思議なくらいだ。
白く淡く輝く優美なシルビア、赤く情熱的に咲き誇る妖艶なローゼ。傍から見たら両手に花だ。世の男から見たら極楽そのものであろう。彼女らには劣るもののいづれも美しいその他の妃達も口実を見つけては王に近づこうとしている。
ここからではよく聞こえないが、精一杯可愛らしく、しとやかに彼女達が話しかけている様子が伺える。が、王は一向に反応しない。それでも側妃達は負けじと懸命に王の反応を引き出そうとしていた。ついでに妃ではないが宴の場にいる女達の秋波が王に集中している。ソネットは声をかけてくる男達と談笑しながらも内心ひやひやしていた。
そして、とうとう王の眉が微かに寄った。
「……………」
ソネットはよそ行きの笑顔を貼り付かせたまま、こりゃまずいと悟った。
「なんであんたがここにいるわけ?」
どうしたものか、と思ったその時だ。丁度と言おうか間の良い事に、グラスの乗ったお盆を掲げたクレアがソネットの傍を通りかかった。
しめた。
今まで周りにいた男達を当たり障りなく追い払ってクレアの腕を引っ張った。
「何すんっ……」
「黙って王の顔見てみなさい」
「あん?」
ソネットの言葉に眉を寄せるも素直に従って王を仰ぎ見た。
「…げっ」
呻いた。
「近くに控えている蔭の誰かに伝えて」
その意図を察してすぐさまクレアは足早にその宴の間を走り去った。
宴とはいえ皆が皆宴の席に出向いている訳ではない。裏でその裏方業務を押し付けられた女奴隷達の中にレイディアはいた。
「もぅ! ほんっと信じらんない! 何でこんな皆が呑めや騒げやのドンチャン騒ぎしてる時に皿洗いなんてしなきゃなんない訳ぇ!?」
「裏方って毎回つまんないのを押し付けられるのよね! はぁ~貴族の従僕の方はこんな裏方までいらっしゃるわけないし…美味しいトコは全部女官達のもの。今回も出会いが期待できないじゃない…」
その頃、レイディアは文句たらたらな同僚の愚痴に適当に相槌を打ちつつ黙々と仕事をこなしていた。レイディアにとって宴の場で華やかに動く事こそ御免被る事柄だ。女官らにしてみればレイディアを日陰者にすることで日頃の鬱憤を晴らそうとした様だが彼女は寧ろ有り難くこの役目を賜った。おかしな話だがお互いの利害は一致していた。
その彼女の元に、何故か何人もの蔭達がすっ飛んで来た。レイディアが同僚達から離れて一人廊下を歩きだした瞬間だった。
「レイディア様、宴の方へお出まし願えますでしょうか?」
「どうしてです? 仕事が…」
「我々がやっておきます」
「………………」
王の命令なら暗殺にも手を染める事もある蔭達が屈んで洗濯する光景を想像し、レイディアは若干微妙な顔をした。
王はいらいらしていた。
宴に関してはまだいい。楽しくもなんともないが、これも慣例、暇を持て余した貴族達の鬱憤晴らし。それに付き合うのも王の義務だと思えば耐えられない事も無い。だが、宴の名目が新しい妃のお披露目だからか、いつにもまして妃共の袖引きが激しい。シルビアの美貌を初めて近くで対面し、妃達の心にいっそう激しい警戒心やら競争心を焚きつけたらしい。
宴に出された物を食べる気もしない。何かを食べようというそぶりをちらと見せようものならこぞって妃達が自分の手で食べさせようとするからだ。そんな状況で食欲など湧こう筈も無い。仕方なく酒杯を空けて間を持たせるという事を何度もした。
今宵の主役であるシルビアはといえば、主役らしくギルベルトのすぐ隣に座って寄せられる祝言に柔らかく対応していた。ギルベルトに必要以上に話しかけたりしない。
レイディアが推しただけあって、他の妃達よりマシなようだな。
それがギルベルトから見たシルビアの感想の全てであった。
こうして考えている間も喧しくギルベルトの気を引こうと躍起になっている妃達の争いは続いていた。ギルベルトはそれらを全て右から左に流していたが、いい加減我慢も限界に近付いてきた。
最近忘れられがちだが、即位前、ギルベルトは気に入らぬ者を悉く屠ってきた。
ギルベルトの不興を買えば身分に関わらず切り捨てられるというので皆ギルベルトの扱いを慎重にした。脛に傷を持つ者は早々に切り捨てた。
即位前では、後宮には妃だけで三桁はいたが、今では二桁を切った状態だ。今回シルビアを入れても七名である。
歴代を見ても異例の少なさである。
後宮の住人は使用人を入れて数千人が普通であったが、今のギルベルトの後宮には数百人しかいない。
王太子時代、女など性欲処理以外に見たことなど無く、どうせならいろんな種類の女達を相手した方が楽しめるかと思い、薦められるままに召し上げた。だがどの女もすぐに飽きた。名はおろか顔さえ碌に覚えなかった。一度抱いただけの女など、部屋さえ与えなかった事もある。
それを続けていたら二度以上抱かれた女は寵妃としてでかい顔をするようになっていた。婀娜っぽい笑みを見せ、馴れ馴れしくしな垂れてきた女を誰か分からずも、とりあえず不快だからと首を刎ねた事も一度や二度ではない。
他にも分不相応な振る舞いをしてギルベルトの気分を害した女達を、彼は顎を少しだけ上げ、警護していた近くの近衛に手を下させた。気が向いた時は自ら切り捨てた。
しかし、それも即位してからはなりを潜めた。皆は王は落ち着いて、気が長くなったのだと思っているが、ギルベルトの気性は五年前と何ら変わってなどいない。単に、レイディアが血を嫌う為だ。
それに、レイディアが傍にいると思うだけで剣と手に取る気も起らなかった。彼女の住まう後宮を血で汚したくなかった。
「陛下、そして側妃様方、マイヤの実で作られたお飲み物など如何でしょう。本日、商人から買い取ったばかりの品でございます」
ギルベルトがもの思いに耽っていると、突如そんな言葉が耳朶を打った。はっとして前を見ると女官長が自ら酒壺を持って跪いていた。マイヤの実は楕円型の艶々した橙色の実だ。甘く酸味のある実は庶民にも流通しており、女性や子供に人気の果物だ。その実から作られる酒も甘口で口当たりの良い事から女性達の間で一般的に呑まれる代物だ。
「あら、マイヤはわたくし大好きよ。頂くわ」
「わたくしも。ねぇ陛下も頂きましょう」
側妃達も嬉々としてグラスを女官長の前に差し出した。女官長は順番に杯を満たしていく。女官長にはギルベルトも杯を満たすのを許した。しかしその目は杯ではなく、その後ろに向けられていた。
俯いて、スカーフで頭全体を覆って女官長の後ろにひっそりと控えている一人の女奴隷。
一瞬だけ、彼の視線に気づいたのか、その顔が持ち上がった。
刹那の逢瀬。
すぐにスカーフの奥に隠れてしまったが、彼にはそれで充分だった。
色々な女と関係を持った。媚びてくる女媚ない女、気性の激しい女温和な女、あくの強い女さっぱりした女、妖艶な女可憐な女。レイディアと性質の似た物静かな女だっていた。しかし心に響いてきた女はいなかった。どの女もレイディアではないからだ。
どうしてお前でなければならないのだろうな。
世界を見るその目を、意志を伝えるその声を、他者の願いを掬い取るその耳を、ギルベルトは常に自分に向けられていたいとどれほど願った事か。彼女の一挙手一投足その全てがギルベルトの目に焼きついた。知らず握りしめていた拳が、ゆっくりとほぐれていった。
ギルベルトの視界に初めて宴の間の幻想的な装飾が映った。楽師の音が耳に反響する。彼女の息吹が彼の世界に命を吹き込んだかのようだ。
ギルベルトは急に空腹を感じて、酒と共に目の前に盛られた料理に手を伸ばした。
レイディアが去る背中を周りに気付かれない程度に目で追っていると、ふと視線を感じてそちらに顔を向けた。
その先にいた、したり顔で王に片目を瞑ってみせるソネットと目があった。
――――お前の指図か。
裏にいるはずのレイディアを、女官長を動かす事によって、本来王に近づく事さえ出来ない女奴隷を一瞬とはいえ近づけたのは。
―――宴の間を血まみれにするわけにはいかないでしょう?
何でもお見通しと言いたげなソネットから目を逸らした。癪だが確かにここで剣を振りまわすわけにはいかない。
先程の、レイディアの若干の呆れの混ざった目を向けられて頭が冴えた。
ギルベルトは昔と何かが変わったわけではない。強いていうなれば、彼を抑制できる存在がいるか否かくらいである。
「ありがと、ディーアちゃん」
「…何もしていませんが?」
何とも言えない顔でレイディアは首を傾げた。レイディアはただ言われるがままに連れて行かれ、待ち構えていた女官長と共に王の御前に引っ張り出されただけだ。状況がさっぱり読めない。
「なんとかなってよかった。抜刀五秒前だったのよ」
「…?」
一瞬だけ目が合った時、彼は剣を抜くほど不機嫌だっただろうか?
何でもないわ、と言ってソネットはレイディアに笑みを向けた。
レイディアを与えておけばギルベルトは大人しくなる。
『王の機嫌が悪くなったらレイディア様を呼べ』
蔭達の間では合言葉にさえなっている言葉であった。
どなたかはわかりませんが、小説を評価してくださりありがとうございました。読者様からの手ごたえが、そのまま小説執筆の力になります。この場をお借りしてお礼申し上げます。