2・The beginning
私は二児の母である。
私には夫がいた。
しかし、持病で先月他界してしまった。27歳。
他界するには早すぎる年齢だった。
彼は努力を惜しまない人であった。
持病があること周囲に感じさせず、会社を立ち上げ、ほんの数年でかなり売り上げを伸ばした。
私も一緒になって彼を支えた。
―きっと頑張り過ぎたのだ。
私は彼のことが大好きだった。
彼はもういない。
心にぽっかりと穴が開いたようだった。
自分も彼と同じ所へ逝きたくなることが幾度とあった。
ただ、私には子どもがいる。
ここで死ぬわけにはいかないと思いとどまることができたのだ。
これから話すのはその矢先のできごとである。
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私は夫のおかげもあり、夏は山にある別荘におり、それなりに豊かな生活を送ることができていた。
親一人、いわゆるシングルマザーというのは大変だと聞くが、これを身にしみて感じられた。
でも、子供たちを見ると「よしがんばろう」と思えるのだ。
そんなある日。
私は子どもたちに家で遊んでいるように伝え、家を後にした。
そして家電量販店へと向かった。
その日の翌日は長男の誕生日であった。
私はいつも頑張っている長男のために、大好きなラジコンを買ってあげようと思ったのだ。
ラジコンだけ買うつもりだったが、頑張っている自分にも褒美が欲しくなり、好きなアニメのDVDも買って帰路に着いた。
自宅へ帰ってきた。
何やら不穏な空気が感じられ、いつもと様子が違う。
正面玄関のドアをゆっくり開ける。
―荒れていた。
一瞬、あの二人がやったのではないかと考えが浮かんだが、その考えはすぐに消える。
誰かが入り込んだのだろうか。
居間へと進む。
こちらもまた、荒れていた。
ありとあらゆる棚が開けられている。
…強盗か?
「おーい、いるなら返事して…。」
家の中にいるはずの我が子に声をかけたつもりだったが返事がない。
踏み場がないくらいに散らかった床の上を歩き、居間へと進む。
誰もいない。
喉は締め付けられたように苦しくなり、頭から血が引いていく。
一階にいる様子はなかった。
さほど歩いてもいないのに棒のようになった足を無理やり動かし、階段へ向かう。
嫌な予感しかしない。
上へ進む度に四肢が震えだす。
そうしてようやく、二回へたどり着いた。
長男が次男を抱きかかえるようにして壁にもたれかかっている。
二人のTシャツには薄暗い赤色の斑模様がよく目立っていた。
壁には尖った凹みが見られ、その下には鈍い金色の銃弾が転がっていた。
急に全身の筋肉がこわばり始めた。
何が起きてるのか頭では理解できなかった。
涙も出ない
喉元が押さえつけられたようで息をするのでさえ難しい。
徐々に頭の理解が追い付いてくる。
涙があふれ出てくる。
あふれ出る気持ちを言葉にするのを代弁するように。
腹の底から叫んだ。
私は衝動を抑えられず、二回の網戸と窓を大きく開け放った。
そして風に誘われるように窓枠から飛び出した。
最低なのは強盗でも、先に逝った夫でも、ましてや子どもたちでもない。
―私だ。
長男に誕生日を迎えさせることもできす、プレゼントもほかりっぱなしで、長男が次男を庇ったことも褒めず、みんなの分まで長生きもせず、ちゃんと弔ってあげることもしなかった。
私は強盗犯なんかよりよっぽどタチが悪い凶悪犯だ。
Kの助です。
えっとですね、大変申し訳ないんですけども…
物語の性質上次回も短編になりそうです…
徐々に展開が来ました。
まだ面白いからは程遠いですが。
今回も正直な評価お願いします!
ではまた!