一・濫觴(らんしょう)
私はクロノ・バインド。バインド一家の一人っ子である。
それもあってか、両親はとても大切に私のことを育ててくれた。
私の両親は勇者である。
正確には言えば母は私を産んだ後、勇者として仕事をしていない。
彼らはただ興味本位で勇者になったのではなく、やむなく勇者になってしまったのである。
彼らの両親、つまり私の祖父母らもまた勇者であった。
しかし、過去に魔族によって他界させられたのだそうだ。
その魔族から逃げ延びた祖父母らの仲間の一人が、私の両親の教育係を名乗り出たという。
その者は優しく、強かった。
そのため、両親は完璧といっても過言ではないほどの人となった。
しかし、その教育係はかの魔族に復讐したいという気持ちが抑えられなかった。
そうして思い立ったのが私の両親を勇者にすることだった。
彼の考えは正しかったといえるだろう。
両親は無事、魔族の討伐に成功したのだ。
こうして、のちにバインド家は『英雄家』と呼ばれるようになった。
こうしてバインド家は世界の期待を背負うことになった。
母親が私を産めば噂はすぐに広がり、私が歩けるようになっただけで街が騒いだ。
大げさだとは思うが逆の立場から考えれば当然のことなのかもしれない。
しかし、幼い私には大勢の人々の期待など知るはずもなかった。
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この世界では子供が8歳になると『職業』が与えられるようになっている。
職業選択には個人の自由が保障され、他人の干渉は制度によって禁止されていた。
選択した職業によって適切なスキルが与えられる。
スキルを使えばスキルが育ち、育ったスキルが増えると職業がより良いものに更新される。
そこで、早いうちに子供に職業を与えることで子供の成長を促進させることができる。
以前までは職受取所にて職業の授与をしていたが、魔法技術等の発達によって8歳の誕生日に時間や場所を問わず、本人が職業を選択し、受け取ることができるようになった。
私も8歳の誕生日の朝、職業を受け取った。私は両親から
「立派な冒険者になれるな。」
と何度も言われていた。そのたびに私は、
「無理だよぉ、私にできるわけないよぉ…」
と応えていた。
実際、私は動くのが苦手だった。
しかし、書物を読んだり、絵を描いたり、細かい作業をするのは好きだった。
だから、自分の知識が役に立ちそうな職業が欲しかったのだ。
そんなある日、私は一つの職業に目を惹かれた。
それは、『設計者』である。
まさに私に似つかわしい職業だった。
私は設計者を受け取ることにしたのだ。
私はのちに、この決断を後悔することとなる。
はじめまして、Kの助です。
異世界転生ものと聞いてみている皆さん、
「おい、転生ものじゃないのかよ!」思ったかもしれませんが、もう少し待っていただきたいのです。筋結構大事。転生にも理由がなくちゃ。次回でなんとなくわかると思います!えーと、今回はかなり短めです(次回も)。それは事情があってであり、毎度毎度短いわけではありません。2分で読んじゃったよーって方も長編くるまでお待ちいただければと思います!
最後に。辛口でも何でも正直な評価ください!
ではまた!