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アナザーアドベンチャー

 まるで麦畑と見まごってしまう程、密集している薄茶色の何かの群勢。そんな波の中心にその男はいた。

 一閃、二閃と無造作に振り回される刀。その動きに呼応し、吹き出るモザイクの掛かった血飛沫。地中からの奇襲さえ、予見していたかのように避け、返しの一刀で見事に両断する。その姿は中世の画家に目撃されていれば、間違いなく雄編として後の世で称えられることとなっただろう。それほどまでに男の動きは洗練されており、その顔に浮かべている狂気的な笑みは美しかった。


「いいぞ!いいぞ!もっと来い!まだ五百しか斬れてないんだよ!」


 心の底から楽しんでいる様子の男は、既に二十分以上斬り続けているにも関わらず、一切疲れを感じさせない動きで斬り続ける。時には刀の刃先から不可視の斬撃を繰り出し、時にはなんらかの詠唱を唱え、無尽蔵に襲いかかってくる餓鬼を殺し続ける。

 

 それからどれ程の時が過ぎたであろうか。飛びかかってきた最後の小鬼を一刀両断すると共に、男はついに地面に膝をついた。


「ハハッ…スタミナがもう2しかねえ…mpもゼロか…今襲い掛かられたら死ぬしかねえな…」


 背中に触れるゴブリンの死骸の感覚を気にする事なく、大の字に寝転がる男。そんな彼は数分間スタミナを自然回復させた後、起き上がった。


「おっしゃ!5%回復!早いとこボスやんねえと夕飯に間に合わなくなっちまう!」


 男は先ほどまでの疲労を一切見せず、何処かに向かって駆け出した。その時であった。急に男の体が疾走の姿勢でフリーズする。男は突然制御の効かなくなった体に驚き、次の瞬間にはなにやら必死にログアウト、と唱え始める。


「強制ログアウト!ログアウトっつってんだろ!バグったフルダイブ環境で五分以上過ごした時の脳機能障害発生率知ってんだろクソゲーム!きょうせーいローグーアーウトー!」

『えー、こちらGM〜もとい神でーす!みなさん元気―?あっ元気じゃないか!体動かなくて焦ってるよね〜??だいじょーぶ!それバグじゃないから!繰り返すよん?アバターが動作停止したのはバグじゃありませーん!』

「!?」


 そして聞こえてきたのは男もよく知っている慣れ親しんだゲームマスターの放送。相変わらずふざけた口調で行われた放送にログアウト出来ず苛立っていた男は激昂する。


「GMこの野郎ふざけんな!フリーズさせるなら事前告知必須だろ!」


 どこかずれた発言をする男。そんな彼の主張は当然の如く聞き届けられることはなく、GMの放送は続く。


『では〜今から事情を説明するね〜?耳かっぽじってよーく聞けよー?実は!僕!神なんですよ!』


 顔を見れば確実にドヤ顔をしているであろう自慢気な声色に男は罵詈雑言の嵐を浴びせている。


『あっ別にこれは信じても信じなくてもいいからね〜。まあ、で本題なんだけど。君達、<<アナザーアドベンチャー>>のプレイヤーにお知らせでーす!なんとですね!今ゲームにログインをしている十三万六千五十七人の方々全員に転生してもらいまーす!』

「は?」


 GMの宣言にすっとんきょんな声を出す男。


「おい転生って俺は鬼人のままがいいんだが!」


 男はゲームのシステム上で存在する種族転生を強制的に行われる、と思い込み、抗議の声を上げるが、無情にも放送は続く。


『あっ転生って言ってもゲーム内じゃないよ?君達に行ってもらうのは<<アナザーアドベンチャー>>の元となった世界!ロゼリアってとこだ!存在している種族や国々は同じ!なんと剣と魔法のリアル異世界!』

「…?」

『実はこのゲームは君達に四千年も停滞し続けてるロゼリアの為に新しい技術とか魔法技法を開発してもらう為の実験地でねぇ〜?今まで君たちが編み出した魔導技術とかをロゼリアの巫女に伝授してたんだけどさ、一切発展する様子が見えないんだよ〜…だ!か!ら!君たちに転生してもらうことにしました!』

「???」


 なにがだからなのか理解出来ず、内心首を傾げる男。人生経験に基づき生粋の無神論者である男は、前提条件を伝えられた時点で思考を半ば放棄していた。その結果、理解が一切追いついていなかったのだ。


『ってことで君達には赤ん坊としてロゼリアに生まれてもらいます!記憶を取り戻すのは五歳の時!生まれ変わる種族はランダムだけどクレームは受け付けないよ!じゃあ行ってみ……えー…いやなんだけど…まあしょうがないや…えー、僕の補佐様からリクエストが入ったんでもう少し説明続けまーす…』


 明らかにテンションを落としたGMが話を続ける。


『えー、君たちの現実はどうなるんだ、に関してですが、実は今の君達は本来存在するはずのなかった世界線を無理矢理作ってそこから引っ張ってきてまーす。転生後は崩壊するんで気にする必要ナーシ。元の世界線では既に君達は元の生活に戻ってまーす。なんで後顧の憂いはないよ。あとはえー、と転生特典ね〜。五歳の時に受ける加護の儀の時に今君達が所持してるスキルを五つまで、武器を一つまであげる。以上。あっそうだった今まで通りウィンドウは表示されるよ!自分のしか見れないけどね。他になんか言わなきゃダメ?おお!ないか!じゃ、今度こそ!((冒険の果てに、永遠に続く物語にその名を刻め!いざ、ダイブ!アナザーアドベンチャーの世界へ!))ってことで頑張ってきてねー!』


 そうして<<アナザーアドベンチャー>>を起動した時に流れり音楽と共に、男の意識は闇へと落ちていくのであった。

素人が手慰みで書いているものです。よければ評価等宜しくお願いします。

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