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第三十二話 人間界の勢力図

 アリスが今どうなっているか心配でハリル邸へ。


「現在は魔王様が紹介してくださった場所に私共で家を建て、彼女がそこに住んでいる状態です」


「剣を普通に握ることが出来るとか。精神的な問題はなさそうです」


「そうか良かった」


「それから襲撃の件なのですが」


「犯行グループはみな殺されてしまったようです」


「なんとまあ」


「調査中ですが、原因究明は難しいかもしれません」


「人間族の勢力はどうなっている? 日頃から怪しい動きをしているような組織があるのならそこを調べてみるとか」


「現在3勢力ほどありますがそのどれもが胡散臭いというか、信用出来ないというか」


「ひどい状況のようだな」


「はい。実質人間属領を支配しているのはジュルズ帝国。皇帝ウィブル・ノーガムが治めていますが愚政に愚政を重ね、有力貴族と商人、多くの国民が反発。反抗組織フレイムウォークが結成される」


「彼らは帝国軍とほぼ同規模の軍事力を持っているとか」


「皇帝の愚政は聞いていたがそこまでひどい状態になっていたとは」


「現在は膠着状態のようです」


「で、反抗組織は正義の集団なわけか」


「ところが調べてみるとこの反抗組織、国を牛耳って今より甘い汁が吸おうと考えている貴族達が大多数、商人も似たようなもの、という実態が明らかに。こちらが勝っても帝国時代とたいして変わらないでしょう」


「どうしようもないな。国民はただ踊らされているだけか」


「もう一つ、中立と言われている組織、神皮機関」


「どちらにも属さない彼らですが、話では強大な力を持っているとのことです」


「世界に危機が迫れば動く組織、とのことですが詳細はわかりません」


「うーん、胡散臭い」


「彼らに関しては非常に秘匿性が高く、また小規模なためこれ以上調べるのは困難。さらに両陣営、どちらも神皮機関には絶対に手を出さないようお触れを出していますね」


「小規模だが権力? があるわけか。ますますわからんな」


 人間族は曲者ぞろいか。


「人間族領に関してはこのまま監視を継続します。大きな動きがあれば連絡致します」


「了解した」


 ハリル邸を後にしてアリスの元へ向かう。家の外で剣を振るっている、稽古中かな。


「これはこれは魔王様! その節はありがとうございました」


「いや気にするな。ところでもう剣を握れるようだな」


「はい、お陰様で。前と変わらず剣を振れるようになりました」


「そうか、よかった。今剣の稽古中だったな? そのまま続けてくれ。ちょっと見てみたい」


「そ、そういうことでしたらわかりました! 訓練します」


 人間族は神からもらった力とされる御力を使う。魔力、破力を少しだけ使え、この3つを組み合わせて戦うという。まだ見たことがなかったからこの目で見ておきたかった。

 それとブックを倒せるという彼女の力が気になっていた。


「あ、その前に今」


「お久しぶりです、魔王様」


 心臓が口から飛び出そうになった。


「ル、ルーナ。久しぶりだな」


「あのときは申し訳ありませんでした。もう大丈夫ですので、どうぞお気になさらず」


「そうか」


 何故ここに。何とか平静を装って話をした。


「何故君がここに?」


「こちらでも焼き討ち事件を調べていました。そこでエレメンタルマスター、アリスさんと出会ったというわけです」


「それで仲良くなったと」


「はい、我が国民を救った方です。本来ならもっとおもてなししたいところですが」


「それに彼女は凄いんですよ。かなりの使い手でして」


「ルーナと同じくらいか?」


「大体そのくらいです」


 ルーナも魔力コントロールを会得してから更に強くなったと聞いていた。


「そうか、それはなおさら気になるな。うーん」


 そうだ!


「二人の力が気になるな。どうだ俺と一戦」


 ルーナとアリスがお互い見つめ合う。


「わかりました、お願いします」


 山に登り、広そうな平地を探す。


「あそこなら存分に戦えそうだな」


 建屋から少し離れた距離にある平地に到着。魔力をゆっくり第四圏まで開放。


「凄まじい魔力……これが恐怖の魔王」


「これでまだまだ本気を出していないんですから化物過ぎますよ、魔王様」


「いでよ『奈落戦器(タルタロスウエポン)』No.11『百選腕武(コットスハンドレット)』」


 今回選択した武器はツインブレード。柄の端をつなぎ槍のように使ったり、離して剣二本、二刀流で戦うことも出来る。


「二人まとめてかかってこい」


「はい」


 二人共まっすぐこちらへ走り込んでくる。と思いきや途中ではなれ左右からの挟撃を仕掛けてきた。出会ってそんなにたってないだろうに、いいコンビネーションだ。お互い気が合うのかもな。


「ギャリン! ガイン!」


 ルーナは上段、アリスは下段。それを左右の剣でそれぞれ弾く。


「ぐっ! こちらを見もしないで」


「これは、魔力視!?」


「気づいたかルーナよ。そうだ魔力視だ」


 魔力視。視とされるが実際は感。魔力をまとい、その結界内に入った相手は魔力により動きを感知出来るという技。

 膨大な魔力を持ちその魔力をうまくコントロールできれば習得可能な技。今のルーナなら覚えられるかもしれないと思い急遽アドリブでやってみた。


「二人共本気でこい」


「はい!」


 ルーナは持っている魔力を全て開放、ほぉ、これなら初期ブックなら倒せるな。対してアリスは3力全てを剣に込めているな。御力が少し多いか。


「いきます!」


 アリスがその場で剣を振るう。空を切る真空の刃がこちらに向かって飛んでくる。ウーン? 妙に遅い飛び道具だな。近づいたところで対処しようとしたが俺に届く前に爆発、飛び散った破片も爆発。

 爆発は魔力視の弱点でもある。結界内で激しい動きがあるとそちらに反応してしまうからだ。その爆発とほぼ同時に二人が俺を攻撃。なるほど、遅い飛び道具は計算通りか。魔力視の弱点を突いてきたかな?


 しかし――


針山連突(ニードルマウンテン)


針山連突(ニードルマウンテン)


「ライトニングスラッシュ」


積石崩し(ヘルリバー)


 それぞれ技で対抗、結果二人を弾き飛ばした。


「魔力視を封じたのに」


「単純に目もいいのね。そりゃそうか……」


 いやー非常に充実しているね。戦いとはこう楽しくなくては。


「さあこい!」


 久しぶりの本格的な戦闘に俺は心躍らせた。

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