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第三十一話 休み明け前の冒険者需要

 今日は朝早めに起きて三人でギルドへ。


「ランクはそろそろ6いけそう?」


「まだまだかかりそうだよ。確かに5からはなかなか上がらないね」


「そうよねぇ」


「あらカレンじゃない」


「ベス、ギルドに来るなんて珍しいね」


「あっはっは、金欠なのよ。あ、お姉さんお久しぶりです。こちらは例の離れの人?」


「そうだよ」


「はじめましてベス・リチャです」


「久しぶりねベス」


「レイです」


(このこの! あのカレンが男連れなんて!)


(そんなんじゃないけど……)


(いいのいいの。友達としては心配だったのよ、全く男に興味を持ってなさそうだったから)


「それでは失礼しまーす!」


 ベスは笑顔をこちらにふりまきながら依頼書を持って受付へ向かった。


「相変わらず元気な子ね」


「お姉ちゃんには負けると思うけどね」


「さーって、どの依頼を受けようかしら」


 夏休みのうちにある程度稼いでおこうと、最近はよく三人でギルドに顔を出していた。


「ウーンこれはキャンプになるわね、却下」


 一日で終わりそうにない依頼は、当然野宿、キャンプをすることになる。このキャンプ用品を整えるのにお金が結構掛かるし、学生だと泊まり込みで依頼ってのは正直きつい。


「冒険者が本業になってからだよね。キャンプ用品を揃えるのなんて」


「学生の今だと滅多に使わないからね」


「ん~、これかな」


 アサルトホーンディアーか。なかなか強い魔獣だな。

 三人で依頼を受け、魔獣の生息地へと向かった。


「ん? あれは!」


 生息地付近の森の中で、金色に輝く玉のような魔獣がゆっくり地面を転がっている。


(激レアのゴールデンキャノンじゃない! ゆっくり近づいて狩るわよ!)


 イリスがジリジリとにじり寄る。


「パキッ」


「アッ」


 小枝を踏みつけ、折れて音が出てしまった。魔獣はイリスに気づき凄まじい速さで逃げ出した。


「あちゃー失敗しちゃった。それにしても逃げ足早いわね」


 気を取り直しアサルトホーンディアーを探す。足跡を見つけそれをおっていくと見事魔獣を発見。


「よーし! 狩るわよ!」


 カレンの魔法で先制攻撃。森の中なので氷の刃を放つ。魔獣はそれを身軽にかわした。


「なかなかやるわね」


 こちらへ突進、避けるとカレンに突き当たるので剣で応戦。首を薙ぎ払おうとしたが横に飛びそれをかわした。


「当たればほぼ一発なのに。この手の魔獣は厄介ね」


 実際当たらなければどんな切れ味の剣でも意味がない。避けるは強力な防御行動だ。

 それでもまだまだイリス達を追い込むには程遠いつよさだけど。

 少しづつ相手の動ける範囲を狭め、遂にはイリスの刃が魔獣に届く。


「ガァーーー!」


 致命傷、血を吹き出しアサルトホーンディアーは倒れた。


「勝ったわ!」


 早速解体を始める。


「この魔獣の肉は美味しいのよね。結構量も取れるししばらく胃袋を喜ばせてくれそうね」


 相変わらず見事に解体する彼女達。俺も練習をしているが高価な素材が取れる魔獣は彼女たちに任せるようにしている。

 周囲の警戒をしていると、先程のゴールデンキャノンを見つけた。


(ここからだと距離がある、奇襲は難しいか。ああ、そうだ)


 ちらりと二人を見る。二人共真剣に魔獣を解体中。これならばれないかな。

 二人から見えない所へ移動、魔力を込めてゴールデンキャノンに剣を投げつけた。


「ギャイン!」


 ダッシュで近づきあたかも魔獣を突き刺したような姿勢を取る。


「魔獣狩れたよ」


「おー! ラッキーだったわね! これも解体しちゃいましょ」


 この魔獣は皮が希少で高く売れるとのこと。


「おしまい。いやーゴールデン狩れたのは大きいな」


 ギルドに戻り依頼クリアの報告。ゴールデンの皮も売ると結構な額になった。


「たっか! こんなに高く売れるとは思わなかったな」


「そうだ、ミスリルの剣でも買っとく? そのくらいなら余裕で買えるくらい稼いだし」


 イリスの言う通りミスリルの剣を買い家へと帰る。

 晩ごはん、先程の魔獣が早速食卓に並んだ。


「おいしーい。あーほっぺたおちそ」


「本当、おいしいね」


「部位によっては数日寝かせたほうが良かったりするけどね。今回は即料理しても味はそんなに変わらないもので作ったよ」


「そのへんはカレンに任せるわ」


「ふーむ、さすがカレン。料理においては勝てる気が全くしない」


「ははは、レイさんったら」


(ハァ、今日ベスにあんなこと言われてちょっと意識しちゃったかな。でもなんでだろう、不思議と心が落ち着くのよね)


 次の日、朝食の時間。イリスがすでに着席していた。俺も着席する。


「おはようレイさ……、レイさんズボン」


「ん? おっとすまない」


 いろいろ考え事をしていてまたやらかしてしまったか。俺は離れへ戻った。


「まったく、レイったらたまに抜けてるのよねー」


「お姉ちゃんズボン……」


「あ……」


(もしかしてレイさんがいると安心するのはお姉ちゃんに似ているからかな?)


 離れから戻ると笑顔のカレンが椅子に座り俺達二人を待っていた。

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