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第十二話 お仕置き訪問

 月曜日、カレンのうまい朝食を食べ元気に登校。


「えー精霊魔法は皆さんが知っている通り――」


 精霊魔法は精霊と契約して使える魔法。通常の魔法より強いのだが、基本的に一つの属性の精霊としか契約できない。そして精霊を出さないと魔法を使えないため弱点がすぐにバレる、弱点となる魔法を使用した際威力が落ちる等、非常に使い勝手が悪い魔法だ。

 その点はエレメンタルマスターは4属性を使役している、となれば弱点を打ち消し、克服しており強力な精霊魔法を使用できる。

 非常に興味深い、目をつむり彼とイビルドラゴンの戦いを思い出していた。


 今日の授業が終わり、帰りにイリスと武器、防具屋を見て回ることにした。昨日の依頼でなかなかいい金額を頂いている。良いものがあれば新調しようかな。


「まずは武器屋からいきましょう」


 イリスに連れられて剣と剣が重なった看板を掲げてある店に入る。


「いらっしゃい……」


 うん? 何やら元気がない。いつもこんな感じなのだろうか。

 とりあえず武器を見てみる。


「今、レイが持っているのは銅の剣ね。となると鉄か強鉄の剣かな~」


「アダマン、ミスリルは良いものだけど高くて買えないしね」


 うーん、出来ればアダマン、ミスリルが欲しいけど無理だなこりゃ。今後の目標にしておくか。

 使いやすそうな鉄の剣を買い、今度は防具屋へと向かう。


「……いらっしゃい」


 ここの店長も元気がない。おや、衛兵さんが居る。なにか事件かな。


「ここもか。店長、いくつか物品が盗まれこの書き置きがあったんですね?」


「はいそうです」


 衛兵が店長にその書き置きを見せていた。俺は後ろからちらっと見る。


『恐怖の魔王が頂いたり。汝光栄に思うが良い』


 ブッ、身に覚えのないことが。


「最近、各所で盗難被害が相次いでいるんだけど毎回この置き手紙があってね」


「衛兵さん、ずっと考えていたんですがもし本当に魔王様だったらどうなるか見当もつきません。できればこの件はなかったことにしてください」


「そうなんだよね、皆怖がってしまってなかなか捜査が進まないんだ。恐怖の魔王様はこんなセコイことをする方じゃないと思うんだが」


 俺の名前を使って捜査をさせにくくしているのか、困った犯人だな。


 ん? 店内の様子を伺っている男が居る。おや、挙動不審だな……なんだか怪しいぞ。

 もしや犯人? うーん、衛兵さんに知らせようかと思ったけど、何が起きているか見ておきたいんだよね、恐怖の魔王関連だし。よし、ここは俺が動くか。


「イリス、ゴメンちょっと用事があるの忘れてた。先帰っていて」


「うんわかった、またね」


 イリスにさとられぬよう嘘をついて店を出る。

 そのまま遠巻きに怪しい男を観察した。しばらくして動き出し、俺は尾行を開始。特に寄り道もせず歩き続け男は街外れの一軒家に入っていく。ここに住んでいるのかな。


 深夜。離れの部屋から抜け出し、男の家へ行きこっそり観察する。彼が家から出てくる、その後をつけた。あれは道具屋か、店に侵入しアイテムを袋に入れ始めた。取り終わったところで例の置き手紙をアイテムがあったところに置く。やはり犯人だったか。


 その後男は自分の家に戻る。

 彼に気づかれないように、屋内に侵入する。奥の一室から男の声が聞こえてきた。


「クックック、バカな奴らだ。『恐怖の魔王がやった』ことにしておけば俺まで追求が及ぶことがない。なんせ恐怖の魔王様、誰も逆らえねえからな! アーッハッハッハ!」


 うーん、これは悪質だな。わかった上での利用。仕方がない、お灸をすえるとしよう。

 男は俺が侵入している部屋に入ってきた。チャンスだ。


(『奈落戦器(タルタロスウエポン)』No.20『裏切りの風聴(シーシュポスボイス)』)


 奈落戦器を男の衣服に引っ掛け、一旦家から出る。


 さて、始めるとするか。


『俺は恐怖の魔王、今道具屋の店の中にいる』


「な、なんだ? 道具屋って俺がさっき盗みをした……いやそんなことよりこの声はどこから? きょ、恐怖の魔王ってまさか!?」


 この奈落戦器は少々特殊。2つあり、今俺が持っている戦器に声を発する、すると男に引っ掛けた戦器からさきほど俺が発した声が聞こえてくる。


『俺は恐怖の魔王、今お前の家の前にいる』


「ひっ、ひぃ! 居る! あれは恐怖の魔王!?」


 少し魔力を放出しながら家の前に立つ。男はこちらを見てすぐカーテンを閉め部屋の奥へ行く。俺は閉まっていた玄関のドアを少々強引に開け家の中に入る。


「バキン!」


『俺は恐怖の魔王、今お前の家の中にいる』


「くっ、くるな! いや、こないでください!」


『俺は恐怖の魔王、今お前の部屋の中にいる』


「あっ、あっ、あっーー!」


『俺は恐怖の魔王、今お前の後ろに……』


「ほごぉ」


 俺が男の方を掴むと立ったまま動きが止まった。回り込むと白目をむいたまま意識を失っていることがわかる。

 ちょっとやりすぎたかな? いやいや少しお灸をすえないとね。中途半端だとまた恐怖の魔王を悪用しかねない。

 これに懲りて真っ当な人生を歩んでくれることを願う。

 衛兵さんがいる詰所の前に彼を置き、俺は家に帰った。


「昨日はごめん。もう一度防具屋に行こう」


「いいよ~、昨日の続きからね」


 帰り道、イリスと二人で防具屋に入る。


「いらっしゃい!」


 今日は元気だな。ちょっと心配だっただけどうまくいったかな?


「動き回るから皮か布の防具ね。理想はドラゴンの皮だけど高いのよね」


「ん~、このマッドダイルの皮にしておこうかな」


「おう店長。事件解決したんだって? 良かったじゃねえか」


「いやいやおかげさまで、物品も全部戻ってきまして。賊が魔王様を語っていたようですね」


「らしいな。魔王様を語るとはふてぇ野郎だ」


 スムーズに終わったようだな、良かった。


「今日取引先の鍛冶屋産でドラゴンの皮が入ったらしくて、それもイビルドラゴン!」


「ほぉ~!」


 マッドダイルの皮の鎧を買い、店を後にした。

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