第十一話 冒険者のお仕事
依頼、赤泣きの実採集に挑戦中。
大量に落ちているが虫食いはダメだそうだ。1個ずつ観察するから案外大変。
かごが一杯になったろころで切り上げた。
ギルドに戻り受付の人に渡す。
「もう来たのね。そのやる気には関心関心、では確認するよ」
凄まじい速さで赤泣きの実のチェックをする受付の人。はやい。
「はーい、合格。次もこんな感じでお願いね」
「ありがとうございました」
ホッと胸をなでおろす。お金を稼ぐって大変だな。
「ブワッハッハ、坊主、慣れだよ慣れ」
冒険者が俺を励まし? てくれた。
「んじゃお前ら、ちょっくらいくとするか」
先程の冒険者はこれから仕事なのだという。依頼の内容によっては時間が夜遅くってのもあるだろう。ふむふむ、自由だけどきつい仕事もあるよな。
ちなみに他の街と違いこの冒険者ギルドだけ24時間やっており、依頼、報告はいつでも可能。大規模都市ならではといったところか。
依頼書掲示板を眺める。迷子の猫の捜索から魔獣の討伐まで、様々な依頼があるな。ん~、正直討伐のほうが楽だな。休日に受けてみようか。
帰宅後、イリスに相談する。
「休日暇だから私も行くわ。カレンは土日暇?」
「空いてるよー」
「よーし! 土日は皆で魔獣狩りに決まりね!」
週末の休みの日、三人で依頼書を物色していた。
「ビッグラビットかしら、いやでももっと強いほうがいいか」
「レイさんはどれがいい?」
「う~ん、この辺りの魔獣とは戦ったことがないから弱めのほうがいいね」
「ふんふん、とするとこれね」
フレイムウルフ討伐。素早く体の一部分が燃えている魔獣だ。
「それじゃいきましょ」
街から出てヴィッカー平地に向かう。と言っても街の隣がヴィッカー平地だが。
街道から外れ、広大な平地を魔獣を探しながら移動する。
見つけた、フレイムウルフだ。それも3体居る。
「はじめるわ」
俺とイリスは前衛、お互い剣を使う。カレンは後方支援の魔道士だ。唸り声を上げ、こちらへ向かってくるフレイムウルフ。カレンが氷の魔法を放った。
「アイススティング」
複数の氷の刃がフレイムウルフに襲いかかる。かなりのダメージを与えたな、弱点も突いたか。
魔法は基本7属性、魔獣も同じでどれかの属性に属している。今回は炎属性の魔獣を弱点である氷の属性の魔法で突いたかたちだ。
弱って動きが鈍くなった魔獣を俺とイリスで倒す。
「もう少し強いところでいいか」
倒したフレイムウルフの皮を剥ぎ牙を抜く。肉は食用に向いていないとのことだ。手慣れたものだな、さすがギルドマスターの娘。
「次行くわよ」
戦利品を持ち歩き次の獲物を探す。
その後依頼である10体討伐を終え街に帰る。
「お昼までまだ時間があるわね。依頼受けちゃいましょ」
「今度はこれ。ラウンドスネーク」
この魔獣も簡単に倒してしまう。
「討伐数終わりっと、街に戻ってお昼にしましょ」
歩道に張り出して客席を設けている店で昼食をとった。
料理を食べながら賑やかな歩道を眺めていた。街の人達は皆おしゃれだ。村じゃいつも似たような服だったな。
「レイはああいう子が好みなの?」
「いや、街の人はおしゃれだなと」
俺の時代は皆地味な服装だった。本によれば目立って俺に目をつけられるのを恐れていたからとか。
「むっふっふー」
「どうしたのカレン? 面白い顔して、まあいいわ」
「そうそう姉さん、今日はお父さんもお出かけだから夕飯もどこかで食べようよ」
「そうね、そうしましょ。料理作るのも大変だし依頼もその分受けられるし」
「カレンの料理が食べられないのは残念だけどたまにはお休みしないとね」
「ん。レイさんが私の料理を食べたいなら作るけど?」
「いやいや、休んで休んで」
「んむ。そーする」
昼食後。お次は森に生息するウッドウィップ。
「ここからは本来まだレイ一人じゃ依頼を受けられないんだけど、パーティ組んでその中に私とカレンが居るから受けられる依頼ね」
が、これも瞬殺。
「次の依頼で今日は最後かな~」
最後は山岳地帯にあらわれるロックグリズリー。カレンの魔法を受けてもひるまない。いや俺の練習のためだろうか手加減してくれているようだ。
ロックグリズリーの突進に合わせて剣をなぎ払い首を刈り取った。
依頼数をこなし俺たちはギルドへ戻った。
「余裕ね。明日もこんな感じでやりましょ」
「はーい」
次の日。依頼を受け魔獣と相対する。
少し敵が強くなったためカレンは一段階上の魔法を使った。
「ファイアバニッシュ」
その後あっという間に片付けた。次の依頼も即クリア。
昼食後、ギルドで掲示板を眺める。今日は次で最後にしようという話になった。魔獣討伐の依頼を受け、街を出る俺達。結局その依頼もすぐに片付いた。
まあ、色々な魔獣と戦っておきたいからこれでいいんだけどね。
街へ帰ろうと片付けをしていたところ、山頂から怒号が響き渡る。
「今の音はなに!?」
「あれは! イビルドラゴン!」
魔獣でトップクラスに強い魔物、竜族。その竜族の中でも上位の強さを誇るイビルドラゴン。その強さは昔のブックくらいあるんじゃないかな。
それに相対している魔族がいる。
「4つの精霊魔法を操っている。たぶんエレメンタルマスターね」
「すごい、イビルドラゴン相手に力負けしていない」
そのまま力押しでイビルドラゴンを倒すエレメンタルマスター。
「はー、いいもん見れたわ。やっぱ世界最強って言われるだけあるわね。恐怖の魔王を除いてだけど」
「さ、帰りましょ。お父さんが餓死しちゃうわ」
俺もエレメンタルマスターの話は聞いていた。実際戦闘を見たが聞いていた話よりも強そうだな。まだまだ余力を残している。
俺の魔王時代に彼が生まれていたら戦っていたかもしれないな。だけど今は力を隠しているし、目立つから戦わないほうがいいからな、ちょっと残念だ。
精霊魔法の余波が立ち昇る山を背に俺たちは下山した。




