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第十話 大狩猟祭への誘い

「それでは自分の力を知ることが出来る魔法ライトブロックを使って各自現在の自分の魔力を把握してください」


 今は実技訓練の授業の最中だ。


「レイ君も知ってるよね? そうそう、ライトブロック」


 本来明かりを灯す魔法だが非常に魔力の消費量が多くすぐに消えてしまうため、実用的ではない魔法。

 その性質を利用して、自分の魔力量を量ることを主な目的として使われる。


「始め」


「ライトブロック」


 肩幅まで広げた手を向かい合わせ、魔法を唱えるとその中に光る小さな正方形の箱が現れた。その後1秒で消える、本当に効率の悪い魔法だ。


 その箱を己の限界まで作り続け何個できたかで魔力量が分かる仕組みだ。魔力を使い果たすと倒れるから加減するけどね。一般的な魔法使いで10個、王宮魔道士クラスだと20だったかな?


 手加減は当然する。しかし昔イングリッッド婆の前で調子に乗ってちょっと多く作っちゃったんだよね。あれは失敗だった。その情報が学園にいっている可能性は高いし、それプラス2ってとこかな。


「レイは37個か。剣の腕前もかなりのものって聞くしやっぱすげーやつなんだな」


 皆だいたい30前後、このクラスは特別だと聞いていたがナルホド、納得だ。

 おや、一人だけおかしな数字を叩き出しているな、ルーナだ。

 300を超えなお計測中。


「316! もー限界」


「凄いじゃないルーナ、前より魔力上がったね」


 俺が第2圏を開放した時の少し下くらいの魔力か。


「これでも例のヤツや、その手下にも届かないのよね。全く化物すぎるわ」


「まあまあ、魔力だけが強さではないから」


「はい、魔力測定は疲れますからこの後は時間まで自習とします」


「イエー、先生話がわかる~」


 皆の力がだいたいわかったな。ただし俺のように隠していれば話は別だが。


「レイ君見てたよ、大量の魔力を持っているようだね」


「えっと、そうだ。ルーナさんを守っているガードの」


「そうだ。僕は同じクラスのベラン・カランだ。どうだい? 僕達と一緒に王女様をお守りしないか」


(ここだけの話、王族に取り入るチャンスでもあるよ。将来有利に物事が運ぶ可能性があるわけだ)


(考えておくよ。王女様のガードとなるとそれなりに覚悟が必要だからね)


「はっはっは、良い返事を待っているよ」


 将来のことを考えた上での行動なんだな。


(ムムム、こんなにはやく勧誘が、しかも口説き文句まで備えて。お父さんの言う通り取り合いになりそうね。うかうかしてられないわ)


 今日の授業が終わり、帰りに冒険者ギルドに立ち寄る。イリスからまずは登録してきてくれと言われ受付に向かう。


「いつもありがとうございます。当ギルドは初めてですか? あ、イリス嬢ちゃんのお連れさんか。聞いてたよ、手続きしちゃおうか」


 若い女の受付はそう言うと書類を俺に渡す。


「これに記入お願い。書く所はそこね」


 場所を変え書類に目を通す。名前等の基本情報、くらいか。


「少々お待ちください」


「冒険者カードに血の契約をしておしまいっと。はい、出来上がり、無くさないでね。それから本来は初心者講習学生版があるんだけどうちのボスが直々にって話だからギルドマスター室に行ってもらうね」


 受付の案内でギルド2階の部屋に通される。そこにはボーマンとイリスがいた。


「来たな、じゃまずはカードについて説明するぞ」


 名前と数字が書いてあるだけのシンプルなカード。数字は1~10、数字が多いほど上位冒険者。カードに血の契約を施してあるから不正は出来ないようだ。

 民間、貴族達、様々なところからギルドに仕事の『依頼』が来る。その依頼をギルド員達が難易度を決める。当然数字が低いうちは難しい依頼は受けられない、受けられる依頼が少ない。学生ならさらに。


「それでも学生有利の依頼ってのもあるからうまく活用してくれ」


「学生専用の依頼で無期限ってのがあるからそれを受けておくと良いかもね」


「それとこれはまだ先の話なんだが、一ヶ月後に大狩猟祭があるのは知っているか?」


「聞いたことはあります」


 大狩猟祭か、魔王時代に一度だけ経験したな。あの時調子に乗って力を出しすぎて皆を怖がらさせてしまった。


「一年に一度、この時期に魔獣が大量発生するんだ。どうだい? 冒険者討伐隊の一人として出てみないか。なに、どうせ学校は休みになるさ」


「そうそう、一週間ほど学校が休みになるのよ。それに高等部の授業は今までの応用が多いから実は授業はそこまで重要じゃないのよね。もちろん休んでばかりじゃいけないけど付き合いを重視するのも良いかもね」


 それはイングリッド婆も言ってたな、ぶっちゃけ卒業できればいいとか。ん~、どうしよう。もう少し様子を見ておこうかな。


「ちょっと考えさせてください」


「まあ、まだ先の話だ。考えておいてくれ」


 他冒険者の心構えなどボーマンの話を聞き終え一階へ戻った。部屋の中を見渡し依頼書が貼ってある掲示板をみつけそれを見に行く。


「これが学生専用の無期限依頼か」


「そそ。ただしお父さんも言ってたけど無期限依頼は一つしか選べないから注意ね」


 いいことを思いついた。これを利用すれば誰にも怪しまれずにブックと会えるな。


「ヴァーンの森で赤泣きの実採集、これがいいかな。あ、一人で行ってくるよ」


「わかった、夕飯までには帰ってきてね」


 依頼を受けてヴァーンの森へ向かった。現場へ到着、森の中へ侵入。ある程度入ったところで口笛を鳴らす。

 草を踏み倒しながらこちらへ進んでくる者の気配を感じた。


『大将久しぶり! 元気だったか』


「元気だ。ブックも元気そうで何より」


『ハッハー! それしか取り柄がないからな。あっとそれより大将はこのへんで起こる魔獣大量発生ってのは知ってるか?』


「大狩猟祭の時に起きる現象のことだな、それがどうしたんだ?」


『どうやら今回はその時にヤベー奴が現れるらしくてよ。精霊の間じゃ大騒ぎだぜ』


「やべーやつ?」


『俺も500年前そこから生まれたんだ。多分似たようなヤツじゃねーかな。ただある精霊が言っていたけどお前なんかより危険! だってよ』


 暴れて危険なタイプなのかブックより強くて危険なのか。どちらにせよ大狩猟祭には出ないといけなくなったな。参加方法はいずれ考えよう。


 軽く雑談をした後ブックと別れる。

 少し嬉しくなった自分に気づいた。やっぱり俺は魔族なんだな、と感じていた。

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