魔王にさらわれた聖女の君は、僕の言葉で堕とされ『花嫁』となる【短編/なろうR15版】
魔王にさらわれた聖女が、大切に扱われます。
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(※SSではありません)
「……は、はなして」
「ふふ。聖女さまに抱きしめてもらえて、とても心地よかったよ。
どうしたんだ。
君から、僕の方に近づいてきて、抱きしめてくれたじゃないか。うら悲しげな表情で、目を潤ませないでくれ。もう一度、こっちにおいで、アリス。僕だけの聖女さま」
「いや……私は、エリオットとは……っ」
「ほら、もう僕の腕の中だ。座する僕に抱かれたいと、再び、アリスの方から手を伸ばして近づいてきてくれたじゃないか。
ははっ。
無駄だよ。
君は、もう、この魔王エリオット・ジールゲンの物。命じられるまま、その身を捧げるしかないんだ。諦めて、この手に頬をなでられる事に、喜びをおぼえるといい」
「そんなに強く抱きしめないで……やめて……私は、魔王を倒すの……」
「うんうん。
聖女さま、君以外のもの、瞳に映したくない。この魔王エリオット・ジールゲンに、そう思わせているんだ。アリスは聖女として、十分な働きをしたと思うがね。
王の間で二人きり。
愛しい君と過ごしたいが故に、僕は、人間どもの街を襲いに行く事ができないよ。ああ。強く抱きしめられて、楽しそうだね。僕の手に、髪をゆっくりとなでられたら、アリスは、どのような反応をするのだろうか――」
「も、もうやめて……私の髪をさわらないで……」
「驚いて、息が荒くなってしまったのかい?
その漆黒のドレスは、僕が与えたもの。ふふ。僕が与えた衣を纏う君が、告げられる事もなく、髪をなでられるなんて、至極当然なんだ。論を俟たない。肩が露わになるよう、意匠を凝らしたそのドレスだけでは、寒くないか?
抱きしめてやろう。
アリスは、この城の主にして、魔族の王である僕に抱かれる。君は、もう、聖女ではない。烏夜色のマントを纏う、魔王エリオット・ジールゲンに供された贄にすぎない」
「いや……私は、世界のみんなの為に、魔王を倒す力を持つ者……魔王の物にされるぐらいなら……生贄であると言うのなら、いのち……を……ひっ!」
「おやおや。
僕の尻尾が、頬にふれただけじゃないか。どうしたんだ。驚きの声をあげたりして。あははっ。ゆっくりと、しかしながら幾度となく、僕の尻尾でなでてやる」
「あ、やめて……エリオット……顔を近づけてこないで……頬や髪をなでないで……!」
「可愛らしい様、満足がいくほど見せてもらったので、褒美だ。
ふふ。
僕の方から、顔を近づけてやったんだ。ほら、魔王である僕に、感謝の念に堪えぬと伝える為、アリスの方から、強く抱きしめてきてくれないか。君は、僕のそばにいる事で、聖なる力を奪われ、すでに魔の者に近い存在。命に従え」
「か、身体が……お、おねがい……と、止まって、私のからだ……くっ」
「実に情熱的な様で、僕を抱きしめてくれたが、本意無いのか。
あはははっ。
表情を歪め、歯を食いしばっている。
アリス。
先ほど、自ら認めたじゃないか。
生贄であると。
そう、君は、人間どもを恐怖で支配する魔王エリオット・ジールゲンに捧げられた供物も同然。身の自由だけを奪われ、心はそのまま。想いを絶えず引き裂かれながら、これからもずっと、惨たらしい扱いを受ける。
魔王の宴の主菜として、卓に飾られるのは、アリス、君だ。さあ、もう一度、尻尾で頬をなでてやろう」
「は、はなして!」
「あははははっ。君の身体は、どこにも逃げ出せない。
くくっ。
魔族の頂点に君臨する者だけが座する事を許されるこの場所で、魔王の僕を楽しませる存在として、一緒にいるんだ。
聖女さま、もっと強く抱かせてくれ。
うんうん。君が、この僕を喜ばせ続ければ、人間どもを護れるのではないか。街を滅ぼしに行くなど、できる訳がない。愛しい君の可愛らしい姿を、ずっと、眺めていたいじゃないか」
「やめて……エリオット。あの時、優しくしてくれたのは、私を騙す為だったの……こうやって、私から聖女の力を奪って、魔王が滅され、世界に平和が戻る未来に辿り着かせない……そうする為に、私を騙したの!」
「おやおや。さすがは、聖女さま。気丈に振る舞ってくれるものだ。生贄の祭壇に、鎖で繋がれているにも等しいというのに」
「も、もう……やめて……命で償わせて……魔王だと気づかずに騙されてしまった事……命で……」
「君の身体は、今や、僕の操り人形も同然だが、涙を頬に伝わせた、その切ない顔を見ていたら、もっと抱きしめてやりたくなった。
不安の中に、悔しさをまぜる様を見せる君も、可愛らしく思うよ。だが、僕の腕の中で抗拒不能のまま、抱きしめられるというのは、どうかな? きっと、心が躍るような想いが残るのではないか。そう、追憶できる。
あははっはっ。
アリスのお望み通り、本当に贄になれるんだ。魔王の玉座の前で、抱きしめられ、我が身がこれからどう扱われるのか……ただ待つだけとなる! 君の身体の自由を奪っている『魔の力』から解放してやる。王の間から逃げ出せたら、人間どもの街に帰す事を約束しよう。さあ、僕が手を離したら、ゲーム開始だ」
「え……あっ!
はあ……はあ!
えっ!」
「ふふふ。
駄目じゃないか、もっと素早く動かないと。
出口の前には、僕がいる。先ほどまで、希望の扉に見えていたのかな? だが、これ以上、扉に近づくというのは、この魔王エリオット・ジールゲンの胸の中に飛び込んでくるという事だ。
最後のチャンスをやろう。
僕に身体をつかまれなかったら、自由を与えてやる」
「エ、エリオット……ああっ……」
「ああ、残念。
アリスは、また、僕に抱かれる存在に戻ったようだ。必死に身体を揺らそうとして、僕の腕の中で、無意味な抵抗を続ける君の事、愛おしく感じるよ。そうだ。興として面白そうな事を思いついた。『魔の力』から解放したまま、抱きしめてやろう。己の存在を失いたくないと、最後の足掻きを見せる贄として、君は、魔王の腕に抱きしめられる」
「……いいの?
『聖なる力』を使うわよ……私の命と引き換えに、魔王エリオット・ジールゲンを倒す」
「へえ、聖女さま。そういった最後の足掻きを見せてくれるのか。やってみたまえ。力を使う事、邪魔するような野暮な真似はしないさ。
さあ、アリス」
「お願い……あの日、私に、本当の優しさをくれたエリオットも、あなたの一部だと言うのなら、二人で一緒に滅びましょう――オスブ・イツパー・カ」
「――本当に、残念だったな。
しかし、これで理解しただろ。君は、僕の滅びなど望んでいないんだ。抱きしめられるたび、僕と共にありたくなり、己が『聖なる力』を討滅させたのは、君だ。アリス」
「わ、私! 私っ!」
「おいで。ふふ。生贄となる者には、絶望の面持ちこそが調。その表情、僕に抱きしめられる事によって、さらに引き立てられるのではないかな。一段と美しい様、見せてもらおう」
「い、いや……もう、これ以上、惨めな様を晒したくない。抱きしめないで……お願い、やめて」
「駄目だ。
分からないのか?
供物が、己が扱いを選べる道理はない。ほら、身体をもっとよじって、しっかりとあがいてくれ。抗ってくれなくては、この興の意味がないだろ。逆らった挙句、敗北し、魔王の腕に抱きしめられるんだ。
すべてが無意味だった。
僕の腕の中から逃げようとしても、身が僅かに前に引っ張られるだけ。逃げ出す事かなわなくなったと実感してほしい。
――ああ。魔王の腕に、しっかりと抱かれてしまったようだ。もう、どこにも行けなくなったのではないかな、僕の聖女さま」
「……ううっ。世界のみんなの為に……お願い。『聖なる力』をもう一度……おねがい」
「もはや、仕留められるのを待つだけ。それなのに、人間どもを護りたいなどと。
あははっははっ。
やはり、そんな君を、我が花嫁に迎えたくなった。現の如何なるものにも護ってもらえぬ君を、妻として慈しみたい。これからも愛でる事を約束しよう。だが、今からは、石床の冷たさに心を凍らせてもらおう」
「ああ……や、やめて。
エリオット……抱きついてこないで!」
「だめだ。聖女さまの香りを直に感じながら、深い味わいを得たいじゃないか。もうしばらくの間、抱きしめていてやろう」
「も、もうやめて……エ……リオット……わたしのこころ……これ以上、奪わないで……」
「アリス。
焦らされて、苛立ってきているのか?
可哀そうに。
では、そろそろ、慈悲を与えてやろう。烏夜――闇夜烏と人間どもにたとえられる黒衣を纏う僕に愛されているのは、この世で君だけだ。
君が、魔族の身体を得られるよう、『魔の力』を注いでやる。狩られる側の獲物として、屈した事を、身体の動きを使って表現してくれ」
「……ああ!」
「あははっ。
抵抗しようとしたが、かなわなかったようだ。しっかりと、僕に抱きしめられている! 一切の抵抗を認められていないんだっ」
「……や、やめて……ま、魔族になりたくない……魔族の身体に……っ!」
「我が運命の花嫁アリス。さあ、永遠に共に生きる為、僕を受け入れて魔の者となるんだ。魔王に強く抱きしめられ、君は、『魔の力』を受け取り――」
「……あああ!」
「アリス。
もう少し、『魔の力』を注いでやる必要があるみたいだな。魔族の身体に徐々に変えられていく事、苦しくはないだろうが、ふふ、抵抗している間は、もがくように身体を動かしてしまう。身体を激しく揺らす様、しばらく楽しませてもらおう。
僕の聖女さま。
君は、最高の贄であり、理想の花嫁だ。後で、ソファに座って髪をなで、可愛がってやろう。君が望むと言うなら、人間に化けていた頃の僕で接してあげるよ。優しさで、包み込むように」
エッセイを書いた後に、実際にR18警告を受けた作品をいくつか見せていただきましたが、たとえば『ヒロインを鎖で縛ります』とあらすじに書き、『作品の売り』とし、『それがメイン展開である(他の要素が薄い)』と警告される場合があるようです(R18商品の実売がメジャーなシチュエーションだと警告されやすい)。
警告による削除の日が来るのは……その作品を知ってしまった一読者としては寂しいなと思いました。作品はどこかへ移転したりできますが、感想欄などは失われますし、読者たちが続きをワクワクしながらブクマした時の想いも、同時に削除されますから――。
(コノ抱きつきONLYでダメだったら……いちゃラブ書いた場合、キスなしでもR18指定しますわ……)
【※】
アルファポリス(https://www.alphapolis.co.jp/)投稿作品【魔王にさらわれた聖女の君は、僕の言葉で堕とされ『花嫁』となる】同一作者によるレーティングdownです。