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ありきたりだけど

作者: 海豚

初投稿なので分からないことも多いですが、是非最後まで見ていただけると嬉しいです!


 


 きもちわるい。


 馬鹿みたいにきーきー喚いてるクラスの男子


 それに媚びる頭の悪そうな女子


 くだらない噂話


 楽しくない授業


 全部きもちわるい。




なによりも、こんなやつらとは違うと思っている私も

きもちわるい。






 何も考えてなさそうな顔で私を呼ぶ。

「まいっ!早く!!」


「ちょっとまって〜」



 別に毎日が楽しくないわけではない。

 ただ同じことの繰り返しでつまらないだけ。


 自分の友達でさえ、きもちわるく思える私はどうすればよいのだろうか。


「どうかした??」


 友達のももか。

 賢いとは言い難いが悪い子ではない。


「お腹すいちゃった、、」

「わかる〜。4時間目つらいよね」


 とかくそつまらん会話してるだけの友達だけど

 私にとってはそのくらいでちょうど良い



 私の悩みや不満をぶつけて私の汚い部分を見てしまったらきっと側に居てくれなくなるだろうから。



「そういえばさっ、ももかの()()()()()()()()()()聞いてくれる?」

「なあに?」

「ももか、ついに彼氏ができましたっ!!」

「えっ誰?てゆうかおめでとう」


「ありがとう!」


 と顔を赤らめてももかは言う。

 ももかは顔もそこそこに可愛いし、男子にも優しいからモテる。めんどくさい所もあるけれど。


 ももかは耳打ちでももかの右斜め後ろの坂野だと教えてくれた。


 ももかは私に彼氏がいるか尋ねた。



「逆にいると思うの?」


「思わないけど〜。まい男子に興味ないもんね」


「ないというか、惹かれる人がいないというか…」


「まあまあ、ももか達も中3になったわけだし!

  勉強しなきゃ!」


「ももかテストどうだったの?」


「聞かないで〜!お願い!勉強教えて〜!」


「ジュースおごりね」


「まかせろ!いつにする?」


「次の日曜でいいんじゃない?」


「じゃあ日曜日の2時にももかの家ね!」


「りょうかーい」




日曜日、ももかの家のインターホンを押そうとした時


坂野と知らない男の子に声をかけられた。


「どしたの?押さないの?」


「えっと、、坂野はももかの家に用事?」


「勉強しに来たんだよ」


ガチャ



「あっ、みんないらっしゃい!入って〜」


「ももかっ!なんで坂野がいるの?」


「勉強すること言ったら来たいって言うから」


先に言えよ。しかも知らねーやついるし




「ももかの部屋!どう?片付けたんだよ〜」


ももかの部屋はピンクとか白とか女の子って感じ。

私は全く好みじゃない。


私は勉強しに来たのに、ももかと坂野はペンも握らず喋っている。


もう1人の男子は神田というらしい。


ももかと坂野のがジュースを買いに出たので神田と2人きりになってしまった。


「そういえばさ、神田って転入生だったりする?」


「あー、うん。2年の途中ぐらいから」


通りで3年生にもなって知らないはずだ。


そこから黙々と勉強をした。

ももか達は一向に帰って来ない。


「菅原さんって勉強得意?」


「まあまあかな」


「そういうこと言う人大体いいよね」


私の中学は公立なのになぜか周りより頭が悪い。


だからか、私は勉強がすごく得意なわけではないのに

周りからは頭良い人扱いされることが度々ある。


それが、というかそういうのが重なって私のプレッシャーとなる。


母親からは期待の目で見られる。おそらくそんなことはないのだろうが私のメンタルが弱いせいか勝手に感じてしまう。


メンタルが弱いといったが人に当たられることに関してより私自身の自己嫌悪が強い。


こんなことはももかに言えない。


ももかに言ってもどうにもならない。


親にも先生にもだ。


言ったらどうにかしてくれるのか。


きもちわるい私を変えてくれるのか。





「大丈夫?気分わるい?」


ハッとした。


「ごめん、ボーっとしてた。」


神田が笑った。



その瞬間神田のまっすぐ私を見る目に時間も心臓も止まった気がした。


私が勝手に自分の暗い世界にいたところから引きづり上げられた気がした。


神田の笑顔で。



ドアが開いた。


ももかと坂野が帰ってきた。


その日は勉強したり喋ったりして帰った。



1ヶ月ほど経ったが神田とはそれ以来話していない。


私は4組だけど彼は1組だから廊下ですれ違う時に少し意識してしまう。


自分でも好意を抱いていることには薄々気づいていた。


でも私は人を好きになってはいけない。


好きな人に現実を突きつけられた時の辛さは想像できないほどだと思うから。


私は将来の夢があった。


小説家になりたい。


私は才能ある人間ではないから、もちろんそんなの夢のまた夢だけど、私に希望を与えた本を書く人になりたい。


今すぐにでも。


まだ世間を知らない、無垢というのには汚れすぎかも知れないが、純粋であるうちに


文字に書き留めたい。


死にたくなる前に。


死ぬ前に。


そんなことを考えながら窓の外から聞こえる野球部やら陸上部やらの声を聞いていた。


1番前の窓側の席。


自然と涙がこぼれ落ちた。


‘叶うはずのない夢’


‘受かるはずのない志望校’


‘意味のない恋心’


無様だと思った。


自分が情けなかった。


こんな考え方しかできない。


誰も私を支えてくれない。


周りのせいにしたくないのに。



ガラガラガラ


私は固まった。


急いで涙を拭いて誰か確かめた。




神田だった。


「えっと、、どうかした?」


「花粉症でさ」


咄嗟に出た無理のある言い訳


「嘘だろ」


「嘘じゃないよ」


「ぜってー嘘だろ」


「本当だってば」


なんて言ってると神田は悲しそうな笑顔でこっちを見つめた。


またあの目だ。前より優しい目だ。


「なんでそんな目で見るの」


また私の制服のスカートに涙が落ちた。


「なんかあった?言って」


何かが途切れたみたいだった。


「言ったらどうにかなんの?


私の重いだけの話を誰が聞きたいの?


誰も気づいてくれないのに。


夢も高校も全部いらない。


誰もいらない。


1人いればそれでいいのにさ。


辛いよ。助けてよ。汚いけどさ。」


私は叫んだ。目からぼろぼろ涙流しながら。


矛盾と言うべきなのか。


神田は意味がわからなかっただろう。


戸惑ってどこかへ行くかと思っていた。


すると神田は


「俺は菅原とあんまり仲良くはないかも知れない。


菅原のこと何も知らない。


だから教えて。今の言葉はよく分からなかった。


けど分かりたい。菅原の努力とか不満とか聞きたい。


初めて俺が惹かれた人だから。」



「え、、()()()()()?」



「俺、菅原のこと好きなんだ」


私は言葉が出なかった。


こんな私の嫌なところ全てさらけ出したのに


クラスの男子は人をからかうことしか考えてなさそうなのに


それでも私を好きと言ってくれる人。


再び時間も心臓も止まるようなあの感覚。


この人かも知れない。


運命とかクソ喰らえとか思ってた私が。


「私、付き合ってすぐ別れるとかそういう中学生らしい恋愛したくない。


こんな私を好きって言ってくれる人中々いない。


しかもその人のことを私が好きになる事もそうそう無い。


メンタル弱いし、めんどくさいし、口悪いし、わがままだけど


でも、神田のことこれからもずっと好きだと思う。


わかんないけどさ。まだ。」



「うん。


うん。


俺さ、まだ子供だから一生を誓っても多分説得力ねえし、信じてもらえないだろうけど、これから証明するから」


優しい抱擁をする。私達は笑いあった。


初めて幸せを感じた気がした。


「私さ、小説家になりたいの」


「いいじゃん!」


「今すぐにでもなりたいの」


「将来じゃなくて?なんで?」


「大人になったら世間体を考えて個性が無くなってしまう気がするから。


やりたい事もやれないだろうから。


今のうちに出来ないであろうことをしたいの。」


「小説ねえ。


俺らの事書く?


神田李樹(りき)と菅原まいのラブストーリー、とか」


「それもいいけど、私は0からストーリーを作り上げたい。


けどセリフは参考にしようかな」


「俺責任重大じゃん!」


神田は今まで見たこと無いくらい笑顔で、無口だったのが嘘みたいだった。


ももこに神田と付き合ったというと泣いていた。


人の幸せに涙を流せる子が悪い子なわけがない。


私は前みたいに周りの人を馬鹿にすることはなくなった。


その半年後、志望校に見事受かり高校生になった。



ももこと神田とは学校こそ違うものの1ヶ月に2.3回は必ず会っていた。


ももこと坂野は卒業から1ヶ月ぐらいで別れたそうだ。


大学を卒業した後私たちは同棲し始めてもう半年が経つ頃だ。


私は小説家という夢を叶え、パソコンに向かっていた。


売れてはいないけれど、自分の好きな事をしているので幸せだ。


李樹は就職していた。


李樹が帰ってきて


「ただいま〜」


というので、振り返ると李樹は花束を持っていた。


「どうしたの?」


「俺たち付き合い出してもう9年ぐらい経つけど

ここまでまいと過ごせてすごく嬉しい。


これからも、ずっとまいと生きていきたいです。


結婚してください。」


私は言葉より涙の方が先に出るタイプなのかも知れない。


「はい。」


「まい、ありきたりだけど…


生まれてきてくれてありがとう。」



「暗くて、辛くて、死にたかった私をここまで


明るく、幸せに、生かしてくれたのは李樹だよ。


ありがとう。」


中学生3年生の時のことを思い出した。


李樹の幼くもまっすぐな目。


勇気をくれる笑顔。


時間も心臓も止まる魔法みたい。


今も昔も。








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― 新着の感想 ―
[良い点] 王子様は宇宙で、100年眠るしかなかったのですね。まあ恋愛とはそういうものでしょうけど。
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