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「あなたのこの経験についてどうこう言うつもりはありません。ただ、あなたには人にはない力があることは事実で、われわれに協力して欲しいだけです」
優しい口調だが、内容は全然優しくないルークの言葉に現実に戻る。
ジェイクの言葉を聞いて、私は思ったより動揺しているようだ。
もう、乗り越えたと思ったのに。
私は、眼元をぬぐった。
この相手は、きちんと調査をしてから私のところに交渉しにきている。まあ、一国家なのだから当たり前か。
今更、この能力について否定しても無駄だろう。
しかし、その目的が、王子の警護とは。
冷静に考えると、そんな大事な仕事を、自分でいうのもなんだがこんな非科学的なものに頼るなんて、ちょっと滅茶苦茶なんじゃないのだろうか?
「そんなの無理です。そもそも、人の危険を察知するだなんて、やったこともないし……」
「それでもかまいません。そもそも完全な警備体制など、あの王子相手にひけるわけがない。あなたの存在はあくまで保険と思っていただいてかまいません」
「仕事だってあります」
「一年間休職して、留学するということにすればいい。さすがに警護のためとはいえませんからね。幸い、あなたの会社の社長と話はつけてあります。ロンドンで勉強したがっている優秀な社員がいるといったら、すぐに賛成してくれましたよ」
えっ。社長?
そ、そんなの、知らない。
ひょっとして、外堀が埋まっているってやつ?
ルークを見ると、このうえない笑顔である。心なしか、若干、黒い笑顔のような…?
「それから、ロンドンに滞在して頂く間の住居と食事は保証します。なあに、長い休暇を楽しむようなものですよ。それに、きちんと報酬もお支払いします。金額は―――」
そして、今私は機上の人である。それも、もう少しで終わるが。
ロンドン行きを承諾したのは、決して、報酬に目がくらんだのではない。
まあ、それも少しはあるが。
それから、いつの間にか会社に話が通っていて、人事が休職の手続きを始めていたからでもない。
結局、ルークたちは私にNoと言わせないだけの手まわしを、すでに済ませていたのだ。掌で踊らされているようで本当に悔しいが、さすが国家機関といわざるをえない。
でも、
初めて―――、
初めて、この力が人の役に立つかもしれない、という期待に、心が動いたのも事実だった。
ずっと、この能力のことを人から隠してきた。いけないもののように。
それを、どこか窮屈に感じていたのかもしれない。




