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なに事かと思い、後ろの様子をうかがう。
どうやら騒ぎをおこしているのは、新たに入ってきた集団らしい。
視線に飛びこんできたのは、色っぽい美女三人を従えた男。
男の両手は、二人の女の腰にそれぞれ回されている。
どうやら、両脇のポジションを得られなかった女が、不満を述べているようだ。
その男一人と女三人は、一番後ろの、ちょうど私から見た反対側の席に腰を掛けた。
男の両手は、相変わらず女の腰に回されている。見るからに場違いな、そう、夜のクラブでよく見るような光景だった。
なんだ、あれ?
女三人を従えるなんて、どんな男だろうと思って顔を見ようとするが、男のカーリーな前髪がぎりぎり目を隠す長さまで伸ばされており、表情はうかがい知れない。女たちは今度は、だれが男の両隣に座るかでもめ始めた。
おいおい、ここは大学だよ。その女の子たち、厚化粧でとても学生には見えないんですけど!
「ねぇねぇ~、このあとどこに連れて行ってくれるの~? 座ってるだけじゃ、つまんない~」
「今夜も私のフラットに来てくれるんでしょう」
「え~、私と踊りに行くんじゃないの?」
女たちは、体を男に擦り付けるように男の気を引こうとしている。
なんの冗談だ、これは。
甘い香水の香りがここまで漂ってきて、不快感を覚えた。
文字通り“両手に花”状態の男は、口元に笑みを浮かべ、適当に相槌を打っているようだが、女たちをいさめる気は全くないようだった。
「どうしようかなぁ。そうだ、こうすればいい。踊りに行って、一番上手に踊った子のうちに行こう」
女たちから歓声があがる。
気づくと、その集団の周りに座っていた学生たちが顔をしかめながら席を移動し、まわりにドーナッツ状の空間ができていた。
その時、申し訳なさそうな顔をしたルークの姿が目に入った。
椅子には座らず、ホールの壁際に立っている。
ルークは私の方を見て、一瞬うなずき、すぐにまた視線をそらした。
えっ、今のって何かの合図よね。
ま、まさか、この周囲の迷惑顧みない男が、護衛対象の王子様ってこと!!
ショックで顔が凍り付く。
ウ、ウソでしょー!




