好きな人にフラれたい!! ~残念イケメンと卑屈に間違う勘違い女子~
「あんたってさ、見た目はアレだけど、性格はかなりヤバいよね」
駅前にあるファストフード店に居座ってお喋りを続ける中で、土屋 志保が俺に言った。彼女は幼馴染で、性別は違えど、俺のことを一番理解者してくれている存在だ。
「ヤバい……? なにがだ?」
俺のことを理解してくれてはいるが、どうやら、俺は幼馴染のことを良く分かっていないらしい。何が言いたいのかと首を傾げながら、ハンバーガーが包まれた包装紙を捲る。
ファストフードは手軽に速く食べれるとの意味らしいが、高校生真っ盛りの俺達に取ってそんなことはどうでもいい。
安い金額で空腹を満たせる。
更には、店が混雑していなければ、いつまで、喋っていようとも追い出されることはない――学生にとっては最高のたまり場だ。
俺が食べ始めたからか、同じテーブルに座る二人も、こそこそと俺を指差しながらハンバーガーを食べ始めた。
志保が食べているのは、このファストフード店で一番のボリュームを誇るハンバーガーで、しっかりとポテトと炭酸飲料も付けて注文していた。
女性らしいおっとりとした表情と綺麗に伸びた髪から感じる『大和撫子』の風貌には見合わないメニューだった。性格もかなり男っぽいし。
志保の大食いを見るたびに、俺は、その細い体のどこに入るのだろうと、毎度、疑問を抱くがその答えが出ることはなさそうだった。
俺を含めて3人でテーブルを囲う最後の一人は、そんな志保とは対照的に、アップルパイとSサイズのシェイクという、実に女の子らしいメニューを食べていた。
まあ、食べているのは男なんだけど。
「本当、勿体ないよね~! これだけの逸材なのにさ!」
リスのように小さな一口でアップルパイを齧りながら園田 理仁が言った。小さな体に可愛らしい中性的な表情。
ふんわりとしたマッシュヘアで、男子用の制服に可愛らしいピンクのバッジを付けていた。ピンクが似合う男子って羨ましいよな。
可愛らしい表情を裏切らない声で笑う。
理仁の笑い声を聞くと、なんとなく優しい気持ちになるのは何故だろう。理仁とは高校からの友人だ。彼の謎は解明できる日が来るかもしれない。
俺と理仁の相性はベストマッチなのだ。理仁が話しに乗ってきたことで、今日はこの話題で時間を潰すことが決定したようだ。
早くもハンバーガーを片づけた志保がポテトを摘まみながら(俺はまだ半分しか食べていない)肩を叩いてきた。
「そうそう。あんたが本気で声かければ、この店にいる女子の半分はお持ち帰りできるんじゃないの?」
「いや、半分どころか、全員イケるよ! 健真は、こんな地方に生まれてなかったら、絶対、アイドルとか俳優になってたもん!」
この話題になると二人は決まって似たようなことを言ってくる。
芸能人になれたとか、読モをやってみたらだとか。
確かに身長は平均よりも少しばかり高いし、体形も小さい時から剣道を習っているからか、そこそこの筋肉量をキープしてる。
でも、だからと言ってテレビに出てるような人間と同等かと言われれば、100%あり得ない。俺なんか足元にも及ばない。
友人たちの過度な表現に俺は肩を竦める。
二人はいつも過剰にモノを言う癖があるようだ。
俺の態度に納得しなかったのか、「へー、そうなんだ。じゃあ、今日、告白されたのは何かなー?」と志保が笑った。
「ああ。それは、俺がこないだ廊下で接触して、転ばしてしまったんだよ。。で、結構強く接触したから保健室に連れて行ったわけだ。そしたら、まあ、その……勘違いをしてしまったようで……」
「あーあ。それは間違いなく健真が悪いよ。健真みたいなのに優しくされたら、誰だって勘違いしたくなるもんだよ? だから、健真が悪い」
反省しなさいと理仁が「めッ!!」と俺を叱る。いや、俺なんかより絶対理仁の方が勘違いさせる行為を行っていると思う。
現に理仁は大人のお姉さまたちに可愛がられている訳だし。
「俺が悪いのか……?」
因みだが俺は良く人とぶつかる。考えごとをして歩くことが多いのだ。道端にゴミが落ちていると誰が捨てたんだろうと、いつのまにか妄想してしまっている。
結果、人とぶつかる。
男女問わずだ。
相手が男子だった場合は、時折絡まれたりもするが、幼い時からの剣道の経験が生きているのか、そこいらの男に簡単に負けるとは思っていない。
親がとある漫画の剣士が大好きで俺の名前を決定した。そんな両親が選んだ道場は厳しいと評判で、今も涙を流しながら通っていた。
相手が男性ならばまだいいのだが、女性だとぶつかり倒してしまう時がある。女の子に傷を残してはマズいと、俺はパニックになり、自分が何をしたのか記憶に残っていない。
だが、大抵の相手が「あんなにやさしくしてくれてありがとう。良かったら付き合って欲しいんだけど……」と後日、伝えてくるのだった。
怪我を負わせたことは申し訳ないし、好意は嬉しいんだけれど――今の俺には絶対に答えれない。
何故ならば――俺には好きな人がいるのだから。
02
俺が「ヤバい」という話題になったのも、最初は思い人に俺が告白したことが始まりだった。
何を隠そう。
俺は今日――好きな人に告白をしたのだ!!
このご時世において、俺はネットを介さずに、正面から相手の顔を見て告白した。ほんの数時間前のことだから鮮明に覚えている。思い出すだけで――胸の内側から、暖かな毛糸が、体を這いずり回る感覚に陥る。
「その顔は成功したんだねー。良かったよ」
顔には出していないつもりだったのだが、どうやら、俺の告白が成功したことが伝わってしまったらしい。
志保が小さく拍手をして称えてくれた。
やだなー。
照れるなー。
もう、恥ずかしくなってくるぜ!
「いいなー。で、どんな感じだったの?」
理仁がどんな風に告白したのかと聞いてくる。そうか、まだどうやって俺が告白したのかまでは話していなかったか。
称えられたことで浮かれているからか、スラスラと口から当時の状況が流れていく。
「えっと、今回は三度目となる恋文を使ってみたんだ」
「おお! 遂に三回目を! これはいい結果だったんじゃない? 私の幼馴染はやる男ね!」
「ああ。もう、最高だった!」
俺が恋する相手に手紙を書くのは三回目だった。
一回目は落とし物として教室の黒板に張り出された。
二回目は封が開けられることなくゴミ箱に捨てられていた。
そして、三度目の正直である今回は――、
「俺の目の前で、読むことなく破り捨てられた!! もう、その時の俺を見下すあの顔――最高だよ!」
グッと両腕を縮めてガッツポーズを取る俺を――二人は腹を抱えて笑った。その笑いぶりはこれまで堪えていた笑いが一気に噴き出したようだった。
こうして俺の告白を応援してくれる二人がいるからこそ、俺は挫けることなく――フラれ続けることが出来るのだった。
「いやー、降旗さんもやるねー。見た目に反して中々意思が強いじゃないの」
俺が恋する相手の名前を志保が言う。
降旗さん。
降旗 歩果さん。
眼鏡に洒落っ気のない素朴な彼女に俺は恋をしていた。
「んー。僕的には二人共お似合いだと思うよ!! 自分の理想の恋愛に向けてこの調子で頑張ってね!」
「サンキュー、理仁!!」
俺の理想の恋。
それは振られ続けて、最終的には結ばれるというシチュエーションだ。だが、しかし、理想はあくまでも理想。
俺が描く恋愛は今まで出来たことはなかった。
いいなと思う人がいると、何故か皆、自分から告白をしてくれた。
そうすると一気に熱は冷めていく。
そんな俺に志保と理仁は「贅沢だ」「恋に恋する乙女か」と言いながらも、笑顔で話しを聞いてくれるので感謝しかない。
時々、笑い過ぎだと感じることも有るが、こんな恋愛相談できる相手は二人しかいないので、聞いて貰えるだけでありがたい。
俺が降旗さんに恋したのは同じクラスになった今年の春。
高校二年生の春だった。
ゴールデンウィーク明けの5月。
俺達のクラスでは席替えが行われた。
まだ、名前を憶えていないクラスメイトも何人かいたし、正直、降旗さんもそんな中の一人だった。だが、席替えで隣の席になったその日に俺は恋に落ちたのだった。
隣の席になって最初の授業。俺は消しゴムを落としてしまった。それは運命の稲妻の如くジクザクに転がって降旗さんの元へと転がった。
今まで隣になった女子達は皆、俺の消しゴムを拾い、可愛らしい笑みと共に俺に手を添えて「はい」と渡してくるのだが、降旗さんは違った。
なんと、彼女は俺の消しゴムをスルーしたのだ。
それどころか、足元に転がった俺の消しゴムを遥か前方の教卓にまで蹴り飛ばしたのだ。
そんなことをされるのは、これまで生きてきた中で初めてだった。
消しゴムを蹴り飛ばされたことに呆然としていると、彼女は俺を見て意地悪く微笑んで見せたのだった。
そこから、俺は何度も告白を繰り返すが、返事どころか話も聞いて貰えない。
「でも、降旗さんも凄いよねー。健真の告白を拒否し続けるんだから。あんまり、こういう言い方は悪いんだろうけどさ、降旗さんってクラスじゃ浮いてるじゃない?」
「まー、確かにね。最初で失敗しちゃったからね。降旗さんも悪いとはいえさ……」
「まあ……。女子は色々あるからね……」
志保と理仁が言う。
降旗さんの失敗。
いや、周囲の人間達がそう思っているだけで、きっと本人は成功したと思っていることだろう。二年生になると、クラスの親睦を高めると言う理由で校外学習が行われる。
それには、班決めという行事が付いており、各々が各自をランク付けすると言う悪魔の選別に掛けられるのだ(俺は体調不良で休んでいたのだけれど)。
クラスの上位に行くために誰と組むべきか。
数少ない情報と一年生の時の噂を頼りに人を選んでいく。
そんな不穏な空気の中――降旗さんは、とあるトップガール――白井さんに声を掛けられたのだ。一年生の時から、三年生の先輩と付き合っていた彼女は、いうならば二年生の中ではトップクラスに知名度の高い女子だ。
当然、カーストも高い。
クラスで上位の立場を得たい女子達は、こぞって白井さんと組みたがったが、そんな中で白井さんは降旗さんを選んだのだ。
そう――白井さんは分かっていたのだ。
降旗さんが美しいと。
その証拠に俺は恋をしてから降旗さんのことが好きな人間をサーチしたところ、まあ、結構な人数に登った。
俺が急いで告白を重ねるのも彼女がモテるというのが一端だった。降旗さんが誰かと付き合ってしまったら、俺は告白できなくなってしまう。
俺の告白事情はともかくとして、降旗さんは、白井さんの誘いには載らなかった。
それどころか、「……見た目で判断する馬鹿だから」と誘いを一蹴したらしいのだ。
……見たかった。
そんな日に体調を崩すなんて、一生の不覚だ。
恐らく、人生で初めて学校を休んで後悔した唯一の日だった。
賑やかだった俺達のテーブルが静かになる。
俺は降旗さんと付き合うに向けて調べたのは、思いを寄せるライバルたちだけではなかった。中学生の頃や去年のこともありとあらゆる人脈を使って調べた(主に理仁と志保の二人が)。
そんな情報の中に俺が休みの件も入っていた。
当然、好きな人の白井さんたちを呼び出して「女の子に虐めは似合わない」と忠告しておいた。彼女たちもそこまで悪い人でなく、「健真くんが言うなら……」と一言で降旗さんに構うのをやめてくれた。
それどころか、白井さんたちのグループは俺が見てる前では降旗さんに構ってくれるようになったのだ。
彼女たちの仲を取り持った俺の好感度は、降旗さんの中でも上昇しているはずだ。
「次はどうやって告白しようかなー」
まだ、OKは貰えないかな? それとも俺の思いは伝わったのかな?
どちらにせよ、振られても嬉しいし、付き合うことになっても嬉しい。
俺にとっては勝利しかない告白だ。
振られても喜び次の策を練る俺に――友人たちの笑顔も戻ってきた。
降旗SIDE
「ああー。健真くんの告白が嫌がらせじゃなかったらいいのに!」
ぼふん。
私はベッドに飛び込んで枕に顔を埋めて叫ぶ。学校から帰ってきた私は制服を脱ぐよりも先に、どうしてもこの言葉を吐き出したかった。
学校で一番のイケメンと称される池綿 健真くんからラブレターを貰うなど――本当なら嬉しくて仕方がない。
だが、浮かれた妄想を吐き出すと、内側に潜んでいる悪意が意地の悪い笑みと共に浮かんでくる。池綿 健真くんの告白は私に対する嫌がらせなのだと。
「健真くんは、白井さんと付き合ってる。だから、絶対勘違いしちゃ駄目なんだってば。何度も告白してきてもそれは全部、嫌がらせなんだから……」
じんわりと枕が濡れていく。
元はと言えば自分が悪いんだ。校外学習の班決めで、余った班でいいやと読書していた私を誘ってくれた彼女に、「見た目で判断する馬鹿だから」なんて言ってしまったのだから。
いや、それは別に白井さんのことを言ったつもりはなかった。
綺麗でお洒落な白井さんみたいになりたいと密かに憧れていた相手だもん。だから、私の言葉は決して白井さんに言った訳じゃない。
自分に言ったんだ。
私は人を見かけで判断する人間だと。
彼女たちみたいに自分に自信をもって、確固たる自身の世界を私は歩めない。それは中学生の時に経験していた。
あの時は数学がきっかけだった。ある日の授業で自習の時間があった。
多分、宿題を早く終わらせようとしたのか、クラスで一番の可愛い子が私に解けない問題を聞きに来たのだ。そこから色々と勉強を教えたりするようになり、気付いたら私はクラスでトップの女子グループに入った。
そして今まで地味な女だった私は――分かりやすく調子に乗った。
態度が急に変わればどうなるのか、今となっては分かるけど中学時代の私は分かっていなかった。
地味な奴が急に傲慢な態度を取れば、人は離れていくと。
結果的に私はクラス全員から無視されることとなった。
「だから、また、同じ失敗をすると思って……」
白井さんの誘いを断ったつもりだったのだけれど、言葉が足りない発言は勘違いされてしまった。自分のことではなく、白井さんのことだと思われてしまった。
ただ、誘いを断るだけでなく、暴言まで吐いた私を嫌うのは仕方がないこと。
「でも、健真くんを使って、意地悪されるのは傷付くな……」
恐らくだけど、健真くんと白井さんはカップルだ。人気のないところで二人で相談しているのを私は聞き入ってしまったのだ。しかも、降旗が出ていたのも知っている。その時に、私に告白して揶揄うことを決めたのだろう。
じゃなかったら、健真くんみたいな格好良くて優しい人が告白なんてしてくるわけがない。
「私がぶつかったことなんて……覚えてないみたいだし」
去年の秋のことだった。
好きな作家さんの新作が数年ぶりに発売され、直ぐに読み終えたかった私は廊下を歩きながら読んでいた。
そんなことをすれば、前方の注意は疎かになり――人とぶつかる。
その相手が健真くんだったのだ。
私が本を読んでいたにも関わらず、「ごめん。俺ってよく人とぶつかるんだよね。怪我、無かった?」と心配し、保健室まで付き添ってくれた。
その後、何度かお礼を言いたかったけど、度胸がない私は話しかけることができなかった。多分、その時から私は池綿 健真くんのことが好きだ。
けど、彼女に言われたからと、冗談で告白してくるってことは、嫌われてるってことだよね……。やっぱり、隣の席になった時、消しゴム蹴っちゃったのがまずかったのかな?
あの時も「信じられない」って顔で見られたし。
私が告白を断ると、健真くんは気持ちのいいくらいの笑顔を浮かべる。彼の笑顔の意味は分からないし――例え敵意の込めた笑顔でも、好きな人の笑顔が見れるのは嬉しい。
なんて考える私は変人なんだろうな。
だからこそ、好きな人の告白を受けて「お前なんかに告白するわけないじゃん、ばーか」と言われないためにも、私は拒否し続けなければならない。
少なくともそうすれば、彼の笑顔は見れるわけだし。
どんな方法で告白されても頷かない。
私は涙を拭いて誓うのだった。
健真SIDE
『あれから6年~』と画面が暗くなり、次に正面のモニターに映し出されたのは今の俺達の姿だった。黒いタキシード姿の俺と純白の花嫁姿の降旗さん。
映像を見終えた降旗さんが、
「あ、高校二年生、そんなこと考えてたの……?」
と、口に手を当てて驚いていた。
「俺、言ってなかったけ?」
振られ続けて降旗さんの思いを募らせていったことを話していなかったか。じゃあ、まさか、映像の通りに勘違いしたまま過ごしていたのか!?
結婚式という場面で新たな事実が判明した。
今思うと確かに「ヤバい」俺の恋愛思考を嫌わないでくれたらいいのだけど。そんな俺の願い虚しく、ツンと顔を背けて次のイベントに目を向ける。
映像の後は友人代表のスピーチだった。
マイクの前に並ぶ三人。
志保と理仁――それに白井さんだった。
白井さんがマイクを手にして「あのどきば、ごべんー」と大泣きをして俺達に向けて頭を下げていた。白井さんに、俺と降旗さんは顔を見合わせて笑う。
すっと降旗さんが白井さんに近づいて言う。
「彼女と一緒にいて、私は嫌なことよりも楽しい時間の方が多かったです。いいことだけじゃなく、互いに嫌なことも乗り越えたから――親友だと思ってるよ」
降旗さんも最後は号泣しながら抱き合う。
そんな彼女たちの横で、理仁と志保のバカップルが囃し立てながらも、「健真は降られて喜ぶマゾでしたー」と腹を抱えて笑う。
彼らの笑みが、応援ではなく馬鹿にして楽しんでいたと知ったのはつい最近のことだった。
全く。
でも、あの二人が俺の恋のために、裏で白井さんと降旗さんを仲直りさせてくれたのは知ってるから文句はないさ。
「あ、そーだ。折角だからさ、ここでもう一回、キスしちゃおーよ」
「それ、いいねー! じゃあ、健真もこっちおいでよ!」
二人が俺にもこっち来るようにと誘う。
おいおい。
誓いのキスはもう済ませたんだけどな……? 人前でのキスなんて恥ずかしいこと、そう何度もしたくないんだけど……。
それに、6年間、勘違いしたままの、俺の「ヤバい恋愛」が伝わったばかりだし。
それでも――会場の空気に流されるままに俺は降旗さんに近づく。
「健真くんって、振られるのが好きだったんだね」
涙のせいで感情が読みづらいが、彼女の視線は「最初に振ってくれるなら、私じゃなくても良かったの?」と問い詰めているようだった。
「ま、まあ。あの時はそういう恋愛に憧れてたんだよ」
言い訳にもならない俺の言葉に呆れたように視線を落とし――
「そっか」
降旗さんは両手で俺の顔を挟んだ。
なに!?
何されるんだ、俺は!?
すっと素早く顔を近づけて降旗さんは言う。
「大嫌い!」
その言葉と共に俺の唇と降旗さんの唇が重なった。
「――っ!?」
……やれやれ。
なんて可愛い彼女なのだろう。俺が喜ぶことを自然とやってくれるじゃないか。
唇を離して今度は俺がお返しをする。
「俺は、歩果のことが大好きだよ」
今度は俺から――キスを交わした。
フラれることで気持ちを満たす彼と、勘違いから告白を拒否し続ける彼女。
そんな二人は――最終的には報われる!
と、思いたいです……。