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史上最強の医療魔術師《ヒーラー》  作者: Eve
第一章 幼少編
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第七話《 特訓 》

あらすじ:シグルスティア・リーンハルトは《聖》属性の適正があった。

母のような医療魔術師を目指し、特訓の日々が始まるのであった。



僕、シグルスティア・リーンハルトが四歳の誕生日を向かえてから半年が経過しようとしていた。

あの日僕に《聖》属性の才能があることが解って父様も母さんも大袈裟なほど喜んでくれた。

ジェイナさんだって自分のことのように喜んでくれた。

霊水での実験は予想以上の結果だったけど、最悪の結果ではない、むしろ喜ぶべきことだった。

《聖》属性の才能は母さん以上だと言ってもらえた。

母さんからの折り紙付きだ、これは自信を持っていい事だと思う。


僕の壊した壺を片付けながら霊水について母さんはもう少し詳しく説明してくれた。


「ごめんなさいお母さん、こんなになるなんて思わなくて。」


「いいのよ、びっくりしただけだから。にしてもシグ、すごいわね。初めて見たわよあんなの。」


僕だってびっくりした。

実験段階では薄黄色止まりだったのに、魔力量で色が濃くなったりはしないはずなのに。

色は置いといて量が増えたりとか壺が割れるのはよくわからない、僕にそういう能力があったのかな。


「《聖》属性はね、補助がメインの属性なの。大きく分けて種類は二つ、傷や体力を回復する私みたいなタイプと、おそらくシグはもう一つの方。」


「身体能力等の強化補助ね、それが霊水で水量が増えた原因よ。それも凄い才能、なんて言ったって壺が割れちゃうぐらいの勢いなんだから。」



ということで僕には強化補助の才能があるらしい。

今までの時間をめいっぱい使って分厚い魔法教本は読み込んだ、基礎の基礎は頭に叩き込んだ。

魔法教本には案の定《闇》属性の魔法についての記述はなかった。

そういう属性が存在するという情報が書かれているだけ、少し残念。

今日からは実戦の時間だ、とりあえず基礎魔法からやってみよう。


初心者が魔法を使うには魔力を伝達させて発射させるのが一番難しいところらしい。

感覚としてそれがわかりづらいうえに、使う魔法によって感覚も変わる。

それを簡単に正確にするために皆が使っているのが杖。

魔力の伝達と集中、発射を代わりにやってくれる。

ただし、これに慣れてしまうと杖無しでの魔法発動が難しくなる。

母さんの持っていた注射器みたいなのが杖の一種だ。

母さんは杖なしでも魔法は使えるらしいけど安定感と正確さのために使っているらしい。

仕事だもんな、ミスは許されないし。


「よし、とりあえず強化魔法の初歩からやろう。『俊敏力強化アクセルブースト』か、よし!」


俊敏力強化アクセルブーストは足の速さ、反射神経の上昇効果のある魔法だ。

確かに上昇効果は強いし、自分の体力や肉体にかかわらず走れるのは体の弱い僕からしたらありがたい魔法だ。

問題は強化魔法は時間経過で魔力を使用していく事だ、ゴリゴリと減っていく。

だから使うときは相手の懐に飛び込む瞬間とか距離をとる瞬間とかに少し使うのが正しいんだろう。

とりあえず使ってみて、10秒くらい走ってみようかな。

僕は左手のグローブを外し胸に手を当て詠唱する。


「我が肉体よ、光のように速く風のようにヒラリと躱してみせよ『俊敏力強化アクセルブースト』!」


詠唱を済ませると僕は走る体勢に入った、なんだろう体が軽くなった気がする。

今ならどこまででも行けるような、そんな気がしてしまう。

10秒だ、僕は足を必死に動かす。

視界が加速する、風を切る音と冷たい感覚が肌に伝わる。

新幹線に乗って窓の景色を見ていた時みたいな、下手したらそれより早い。


「嘘、こんなにはや__」


集中力が乱れた瞬間、視界に大木が入ってきた。


(やばっ、この速度でぶつかったりしたら。)


少し足で大地を蹴ると次の瞬間には軽やかに大木を回避していた。

凄い、なんていうか気持ちいい。


「10秒っと。全然疲れを感じないな、体力を使わないって凄い。」


たった10秒で母さんの仕事場の近くまで来れた、大人ならまだしも四歳半の子供でこの速度だ。

これが魔法か。

次の瞬間視界がぐらりと揺れ、目眩がする。

あれ、おかしいな体に疲れはないのに力が入らな__。

脱力感を感じるとともに、その場に倒れて気絶してしまった。

魔力不足になってしまったらしい、魔力の使用量を少し甘く見すぎていたようだ。


この後母さんにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。

心配させたのだから当然だ、僕はおしかりをきっちりと聞いた。




さてと、昨日は失敗してしまったが今日は大丈夫だ。

俊敏力強化アクセルブーストの凄さは充分に分かったが魔力の消費が多すぎる。

次は攻撃力強化ブーストだ、名前の通り物理での攻撃力が増す魔法、攻撃魔法は対象外だ。

これならかけるのは一瞬で良さそうだから魔力切れも起こさないだろう。


「とりあえず、これくらいの石でいいかな。」


僕は拳サイズよりも少し大きめの石を選択した。

攻撃力が上がるって言ったって、そもそも僕の攻撃力が皆無に等しいのだからこれくらいが妥当だろう。


「よし!我にかの者を撃ち破る力を、『攻撃力強化ブースト』。 でええい!」


僕は全力で石に向かって拳を振り落とした。

バキバキと脆い音がして石は粉々になっていた、それだけじゃない地面が凹んだ。


「こ、こんなに?次はちょっと調子に乗ってみようかな。」


次の標的は庭から少し離れた場所に置いてある僕の身長の二倍くらいある大岩だ。

実際目の前にすると萎縮するなあ、なんせ自分の身長の倍以上あるのだから。

大丈夫、行ける。


「我に、かの者を打ち破る力を『攻撃力強化ブースト』。 せいっ!」


今度は横から蹴ってみた、物理攻撃の上昇なのだから蹴りも有効だろうと踏んだのだ。

僕の予想は見事的中した。

したのだが、大岩は粉々にはならずに吹き飛び、隣の大木にぶち当たるとその場で止まった。

蹴りを入れた箇所からはヒビが入り、あと一発ぶち込めば割れそうな感じだった。

大きな物音で村の皆が魔獣が入り込んだ!とか天災だ!とか言って慌てていた。

僕はその場をそそくさと早足で後にした。

ああ、もちろん俊敏力強化アクセルブーストは使わずにね。


一応全属性の初級魔法も使ってみたけど威力はそうでもなかった。

それにかなり手こずった、これが適正属性とそうでないものの違いなのか。


回復魔法の方も普通以上に使えた、おそらく回復の面でも僕には才能があるんじゃないかな。

僕が目指すのはあくまで医療魔術師だ、使えて損はしないができれば回復魔法をマスターしたい。

しかし回復魔法は初級こそ実験台は花や草なので良かったのだが、それ以上を練習しようとしたらもっと大きな大木か動物が必要だった。

大木の枝を折ってそれを元通りに回復させられるか、やってみたいとは思うがどうしたものか。

枝までは身長的に届かない。

俊敏力強化アクセルブーストは、足が早くなるだけで身体能力自体が上がっているわけじゃない。

おそらく跳躍力は上がらないだろうし、攻撃力強化ブーストで蹴りの威力をあげてジャンプとかできるかな?

お?いいかもしれないぞ、やってみよう。

何事も挑戦だ。


「我に、かの者を打ち破る力を『攻撃力強化ブースト』!」


思い切って地面を蹴り跳んでみた、全力で蹴った。

あっとゆう間に目標だった大木のてっぺん通り越し、その三倍ぐらいは跳んだ。


「う、うそおおおおおおおおおおおっ!!!」


高い高い高い!こんな高さから落ちたら死ぬ!


「我が肉体よ、光のように速く風のようにヒラリと躱してみせよ『俊敏力強化アクセルブースト』。」


なんとか詠唱を済ませて反射神経を上昇させる。

落ちる瞬間視界に映る景色がスローモーションみたいによく見えた。

よしっ、いま!

なんとかギリギリで枝を掴み、落下死は回避した。


「はーっ、はーっ。し、死ぬかと思った。」


ビキビキッ


おやおや?嫌な音が聞こえたぞい。

なるほど、人生そう上手くはできていないのだな。

痛いのは好きじゃないんだけどなあ。


「うわあああああああああああああああっ!」


このあと見事に落下した僕は折れた自分の右足で回復魔法の練習をする羽目になるのであった。






シグルスティア・リーンハルト 四歳半

適正魔法属性:《聖》属性 《闇》属性

他属性魔法:五大属性初級 《聖》属性 中級。《闇》属性 不明。


次回は初のヒロイン登場です!

9/23日19:00頃を予定中。




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