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史上最強の医療魔術師《ヒーラー》  作者: Eve
第一章 幼少編
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第一話《 僕と家族 》

あらすじ:トラックに轢かれそうになった少女を自分の命と引き換えに救ったヒキニート、カズヒサは目覚めると赤ん坊の姿で金髪の美少女に抱き抱えられていた。

驚くことに彼女はエルフだったのだ。




やあみんな、僕はシグルスティア・リーンハルト。

愛称はシグ、現在二歳の元気な元気な男の子だ!


急に誰かだって?引きこもりニートのカズヒサだよ。

つっても前世の話だ。

今の俺はこのリーンハルト家の長男シグルスティアなのだから。

まだ俺もよくわかっていないがどうやら異世界に転生してしまったらしい。

とりあえず俺が二年間この木造の家で過ごしてわかったことをまとめていこうか。

やっと一人で歩けるようにもなったしな。

因みに赤ん坊が一人歩きできるようになるのに二年間かかるのは遅い方らしい、俺の両親も心配してた。


「シグ? もう、またこんなところに登ったりして。」


この人は俺の母親、ライラ・リーンハルト。

美しい金髪と宝石のように綺麗な青い瞳が特徴の美人さんだ。

ああ、大事なことを忘れていた。

彼女はエルフだ、そうファンタジーゲームなんかに登場するエルフ。

あの長くとんがった耳が何よりの証拠だ。俺がこの世界が異世界であると確信した理由でもある。

彼女は困った表情で机の上に登っている俺に近づくとそっと俺を抱き抱えた。

その表情からは困惑以上に強い愛情を感じる、俺はこの二年間この人からたくさんの愛情を貰ってきた。


「もう駄目でしょ?落ちたりしたらどうするの。」



(ああ、せっかく苦労して登ったのに。)


抱き抱えた俺を優しく撫でると安心した表情を浮かべた。

気持ちいい、凄く安心する。

すると玄関のドアがノックされる。

ああもう来たのか、今日は少し早いな。

ドアがゆっくりと開けられると一人の女性が姿を現す。


「おはようございます奥様、シグルスティア様もお元気な様子で。」


にっこりと笑みを浮かべて母さんと俺に挨拶をしたのはジェイナさん。

俺の世話と家の家事をしてくれている人間のメイドさんだ、この家は両親とも共働きだからな。

どうせお世話されるなら母さんにして欲しいのだが言っても伝わらないし仕方のないことだ。

それにジェイナさんも母さんに負けず劣らずの美人さん。

赤みがかった茶髪の髪を一つに纏めて眼鏡をかけている、橙色の瞳は蝋燭に灯る暖かい火のようで母さんとはまた違った安心感を感じさせる。

最初出会った時は表情も固く気難しそうな人だと思ったがどうやら初めての出産の立会で緊張していただけのようだ。

この人の時たま見せる笑顔は最高だ。

前世での俺は眼鏡キャラ全否定の偏見家だったが、なるほどどうして美人には眼鏡がよく映える。

母さんには悪いが胸も大きいしな。

デュフフフ・・・。


「聞いてジェイナ、今日もこの子ったら机の上になんて登って。見つけたときは心臓が止まってしまうかと思ったわ。」


「シグルスティア様は高いところがお好きなようですね、一人歩きもなかなかできず身体の弱い子なのかと心配もしましたが元気でいいではありませんか。男の子なんですし、むしろこれくらいやんちゃな方が普通ですよ。」


「そうは言うけどね___」


(おいおい俺のために争わないでくれよ、やれやれ俺も罪深い男だぜ。)


母さんはジェイナさんに対しては砕けた喋り方をする、どうやら昔からの友人らしい。

そうそう俺を産んだ時はどうやら難産だったようで俺の体調もあまり良くはなかったようだ。

一人歩きも大分かかったしな、自分の身体じゃないみたいに両足が自分の体重を支えきれなかった。

身体が弱いってのもあながち間違いではないっぽいなぁ、まあ歩けるようになってからは自由に動かさせてもらってるがな。

高いところが好きなのも本当だ、なんか知らんがこの身体になってから高いところに登っても不思議と怖くはなかった。

椅子の上も、机の上も、本棚の上だって、わくわくするんだ。

本当に自分が自分じゃないみたいにこの衝動は抑えきれない。


「どうしたんだ?朝から騒がしいじゃねーか。ふぁーあ…」


「おはようあなた、起こしちゃったかしら?」


「おはようございます、旦那様。」


「ああ、おはよう二人共。」


この寝癖のついた茶髪を手櫛で整えながら大あくびをしているこの男はロイズ・リーンハルト。

俺の父親だ、彼は母さんと違い普通の人間ある。

そう、俺はハーフエルフなのだ!

母さんがハーフエルフの可能性もあるがその時はハーフハーフエルフになるのだろうか。

四分の一って英語でなんだったか?無い頭を捻っても意味はない。

話を戻そう、彼の職業はよくわからないが剣士か兵士かその辺だと思う。

よく庭で剣を振っている姿を見かけるし、仕事に出かけるときも剣を持っていってるしな。

厳しい威厳のある父親って感じでは無いがこの人からもたくさんの愛情を貰ってきた。

とても優しい人だ、俺は言葉を話せるようになったら敬意を込めて父様と呼ぼうと決めている。


「おお!シグ、おはよう。今日もかわいいでちゅねぇー。」


母さんに抱き抱えられている俺に気付くと、父様は母さんから俺を受け取り抱き抱えると頬ずりしてくる。

ああ母さんが離れていくっ。

まあ、いつもの事なので覚悟はしていたのだが・・・。


すりすりすり。


(いたいいたいっ!)


じょりじょりとしたヒゲが擦りつけられる。

別に泣き喚くほどではないが子供の肌は繊細なのだ、もっと優しくして欲しい。

俺の肌が繊細なだけかもしれないが。

そんな俺の一瞬の表情の歪みを感じとったのだろう。


「おっと、ごめんなシグ痛かったか。」


(ああ、やってしまった。)


「もう、嫌がってるじゃないの。」


「ごめんごめん、母さん。朝食食べたいな。」


「あ、そうね。いま用意するわ。」


「奥様、手伝います。」


父様は少し名残惜しそうに俺をおろすと椅子へと座った。

確かに頬ずりされるのは気持ちのいいものではないが嫌なものではなかった。

じょりじょりしてるのに不思議と安心するのだ。

母さんとジェイナさんは朝食の準備、父様はそんな二人とたわいもない話をしている。

さてと暇になってしまった、まとめの続きでもしようか。

またうろうろして母さん達を困らせるのも良くないだろう。


リーンハルト家はどうやら三人家族のようだ、俺と母さん父様の三人だな。

祖父や祖母も居るのだろうが話を聞いたことはない。

居るなら孫の顔ぐらい見に来るもんだとは思うが、年寄りは孫が大好きだしな。


俺達の住むこの家はどこかの田舎町に建っているらしい。

窓から軽く外を見たことがあるからな。

一面緑だった、畑がある程度であとは家がちらほらと聳えたる木々。

間違いなく都会ではないのはわかる。

言葉は普通に理解ができた、両親の喋る言葉もジェイナの言葉も普通にわかった。

だが理解できても喋れるのとはまた別らしい、言いたいことが口からうまく出ないのはとてももどかしい。

どうしても「あー」とか「うー」になってしまう。

不思議だ。


この村は主に普通の人間達が住んでいる。

最初は母さんがエルフだったし、The 森って感じの村だったからエルフの里とかそんなとこかとも思ったがどうやら違うようだ。

たまに夕飯の残りだったり採れた作物だったりのおすそわけを村の人達が持ってきてくれるのを見たことがあるがエルフは一人もいなかった。

みんな俺の両親を敬わっているようだ。


「じゃあ行ってきます。ジェイナ、シグをよろしくね。」


お、もう母さんはお仕事の時間か。いってらっしゃい母さん。


「奥様も少しくらい仕事をお休みになってシグルスティア様と過ごす時間をとってあげてください。」


少し呆れつつ言っても無駄なのはわかっている様子でジェイナさんは母さんを注意をする。

まだ幼い俺を心配してのことだろう、優しい人だ。

この注意は俺も何度も聞いた、そして何度も母さんが断ったのも聞いている。

無理なのも知っている。


「この村には医師が私しか居ないもの、シグは確かに大事だし一緒に居たいわ。でもみんなが私を必要としてくれてるし、私はそれに答えたいの。」


申し訳なさそうな表情で母さんは俺を見る、そんな顔をしないでくれ。

母さんはこの村でたった一人の医者なのだ、休んでばかりいられないのも俺にはわかる。

俺は見た目は赤ん坊でも中身は大人だからな我慢できる。

安心めされよ。


「そうは言いますけどね、シグルスティア様はまだ二歳なのですよ?親の愛情が必要な時なのです__」


(いいんだよジェイナさん。俺はもう充分に愛情をもらってる、もう充分幸せなんだ。)


今の幸せが続けばいい。

この家族は大切にしなきゃいけないんだ、ふと前世での記憶が蘇る。

もう家族をあんな目には合わせない、同じ過ちを二度繰り返すのは馬鹿のすることだ。


(この人たちは大切にしよう。)


前世のようにはしないと俺は一人誓う。




----------------------------------------------






どうもシグルスティアです。

半年が経ち二歳半になりました。

多少の言葉を話せるようになりました。

まだ自由に言葉にできるわけではないのでもどかしいままですがともあれ進歩です。

今日はこれで家族を驚かせようと思います。

なぜ敬語なのかって?気にすんなよ突っ込むのはお門違いだぜ。


「あらシグルスティア様。ここに居られたのですね」


ドアが開かれるとジェイナさんが姿を見せた。

どうやら勝手に歩き回った僕を探していたようだ。

今日は服を収納するタンスのような物の上に登っていた。


(よし、最初の犠牲者はジェイナさんだ!彼女の驚く顔が浮かぶぞ、楽しみだ)


ジェイナさんは俺を抱き上げてゆっくりとおろす。

俺もそこそこ重くなってきたはずなんだが軽々と持ち上げるなあ。

彼女は意外と力持ちだ。


(よし!今だ!)


「じ、じー・・・あー。」


「ふふふ…ジェイナですよ、シグルスティア様。ジェ・イ・ナ。可愛らしいですね。」


おっと失敗失敗・・・大丈夫、練習したのだからいけるはずだ。

ジェイナ・・・ジェイナ・・・よし、普通ならもう単語ぐらい話せてもいい時期だ。

安心させる意味でも頑張らねば。


「じぇー・・・な。じぇーな!」


よしっ!言えた!言えた・・・よな?

ん?なんでそんなポカーンって擬音がなりそうな顔してるんだ。

あれ、もしかして間違えた?


「シグルスティア様・・・そ、そうです!ジェイナですよ!」


「ああ!どうしてお二人は居ないのでしょう!この幸せ私一人で味わっていいのでしょうか!」


ジェイナさんは想像以上に喜んだ。

僕を持ち上げてくるくる回るレベルで喜んでいる。

やめてっ目が回るぅ。

こんなに喜ぶか?ちょっとびっくりだ、我が子のように喜んでいる。

ほら、今まさに飛び跳ねている。

まあそうか、最初こそ母さんや父様はつきっきりでお世話をしてくれていたが、最近はジェイナさんの方が一緒に過ごす時間は長いくらいだもんな。


「シグルスティア様!もう一度!ジェイナですよー?」


「じぇ・・・じぇーな。」


「キャーッ!」


(やばい・・・どうしよう。こんな人だったっけ?)


この後僕は、母さん達が帰るまで何度もジェイナさんの名前を呼び続け僕の一番得意な言葉になった。

また、一番最初に名前を呼んでくれたのは私だとジェイナさんが本当に嬉しそうに自慢するので、嫉妬した母さんと喧嘩になったのは言うまでもない。


おいおい、勘弁してくれ。










・登場人物

シグルスティア・リーンハルト:主人公。愛称シグ 現在2歳

ライラ・リーンハルト:金髪エルフ シグの母親

ロイズ・リーンハルト:茶髪じょりヒゲ シグの父親

ジェイナ:リーンハルト家のメイド ライラの旧友

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