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史上最強の医療魔術師《ヒーラー》  作者: Eve
第一章 幼少編
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第九話《 事件と救出 》

あらすじ:シグルスティア・リーンハルトにお姉さんができました。




「ねえシグ、今日は何をしようかしら。」


「そうですね、そういえばエレナお姉ちゃんは強化魔法を使ってたけど適正属性なんですか?」


今日も僕はエレナ姉ちゃんと共に、エイントア村を走り回り遊んでいた。

昨日ビートのやつをボコボコにしたばかりなので何かしてくると思ったが、今のところ何もない。

僕の思い違いだったかな?


「適正?なにそれ?」


「人にはそれぞれ得意な魔法属性があるんですよ。強化魔法を使ってたからてっきり《聖》属性が適正なのかと思ってましたけど。」


「へぇ、シグは物知りなのね。私のはただおじいちゃ_師範を倒したくて調べただけだから、結局意味はなかったんだけどね。」


なるほど。

確かにエレナ姉ちゃんはどちらかというと魔法より剣技だもんな。

以前に一度だけエレナ姉ちゃんにどうしてもと言われて、剣技の指導を受けたことがあった。

もちろん僕は魔法なんて使わなかったけど、それでも思った以上に力の差があった。

エレナ姉ちゃんは張り切って剣技を教えてくれようとはしてくれた。

だけどエレナ姉ちゃんはどうにも感覚派っていうか、ズバッとかビシッとかの擬音が多いんだよなあ。

おそらく魔法も感覚で覚えたんだろう、感覚派の人間は杖無しでの魔法が得意なんだ。

かくゆう僕も努力で覚える派だから教えることはできないんだけどね。


「よお、エレナにクソガキ。」


お?この声はもしかして?


「なによ、また用なの?それと、シグには名前あるんだからその呼び方やめなさいよねビート。」


で、でた!ビートさんだ!

僕、見ただけでぶるっちまうぜ!

何しに来たんだコイツ、昨日の最後を見た感じまだ懲りてないみたいだけど。


「・・・ってすごい傷ね、どうしたの?」


まあ昨日傷までは癒してやらなかったからな、戒めのために。

にしても酷いな。

ここまでではなかった気がするんだが、なんか切り傷まであるし。


「そいつにやられたんだよ、そのガキはおめえの思ってるような奴じゃねえぜエレナ。」


ほほう!そうきたか!

ちょっとは頭を使ってきたようだ。

僕が本当は酷いやつってことを演出して嫌われさせようって作戦か。

自分で切り傷とか作ったのか?頑張るねえ、そういうやり方しかできないのが残念な所だが。


「刃物を持って俺にこんな怪我させやがった、流石悪魔の生まれ変わりは違うよな!白い髪は悪魔の髪だって母ちゃんが言ってたぜ?」


僕の髪のことを持ち出してきた、どうやらこの世界の人間は老いても白髪にはならないらしい。

そして白髪というのは昔話に出てくる悪魔や魔物の髪色だそうで、僕は綺麗だと思うんだけどなあ。

まあ、母さんと父様に貰った髪を馬鹿にされるのはちょっとムカつくな。


「お前だっていつか食べられちゃうかも知んねーぞ!幼馴染の俺がこんな目に合わされて黙ってるお前じゃないだろ!」


幼馴染!?それは初耳だ、そんなプラス効果を持っているのかこいつは。

侮りがたしビート!


「馬鹿みたい、何が悪魔よ。あんたもまだガキね。あ、それと次私のシグを酷く言ったらぶっ飛ばすわよ!いきましょ、シグ。」


おお哀れかなビート、自分で切り傷までつけてこの有様とは。

どうやらエレナ姉ちゃんの好感度はお前の幼馴染補正をもってしても僕の方が上のようだ。




-------------------------------------




次の日、ニコニコした顔のビートが僕の家の前にいた。


「はーっ、何の用ですか?貴方も懲りませんね。」


「そんな邪険にすんなよ、俺だって反省したんだぜ?仲良くしようぜ、な?」


どういう風の吹き回した?

だいたい仲良くもなにも、お前が嫌がらせばっかりしてきたんじゃないか。


「仲良くですか。僕、昨日髪を馬鹿にされたこと忘れてませんよ。」


「すまなかった!俺はただエレナと仲良くしてたお前が妬ましかったっていうかさ、わかんだろ!?」


土下座だ、ジャパニーズ土下座。

まあ、それはなんとなくわかってたけどな。

なるほど、引き離そうとして無理だったから今度は自分も輪の中に入ろうって作戦か。

豆粒みたいな脳みそしかないのかと思ってたけど、どうやら違ったようだ。


「今までの無礼は全部謝る!だから俺とエレナがくっつける様に協力してくれよ!」


「嫌ですけど。」


「は!?なんでだよ!」


「いや、なんでも何も。貴方とエレナお姉ちゃんは釣り合わなさすぎる。」


「んだとコラ!!・・・ま、まあいいじゃねーか行こうぜ。」


む、持ち堪えたか。

あと少しで爆発してボロが出そうだったのにな。

僕はビートに肩を組まれたままエレナ姉ちゃんの家へと向かわされた。

コイツいると速く行けないからめんどくさいんだけどなあ。


「あらシグ、今日は遅かったのね。」


エレナ姉ちゃんは庭で猫と犬を足して2で割ったような奇妙な生き物と戯れあっていた。


「それで、なんであんたも居るのよ。」


まあ、そりゃそうなるだろうな。


「なんか無理やり付い__」


「そこで偶然会ったんだよ!な?いやあ、話してみるとわかったんだが良い奴だなコイツ。」


なんだこいつクソめんどくせえ、人の会話を遮断するなよ。

別に邪険にする気はないんだけど、なんだかこいつからはめんどくさい匂いがプンプンするんだよなあ。

思い違いじゃなきゃいいんだけど。


「そう。まあ仲良くなるのは構わないけ、ど!」


イヌネコをぽいっと何処かへ投げるとこちらに近づいて、肩を組まれてた僕とビートを引き離し僕を大事そうに抱きしめてきた。

おお可哀想なイヌネコ、でも僕の幸せのために犠牲になっておくれ。

エレナ姉ちゃんに抱きしめられると、母さんに抱きしめられている時と同じ感覚を感じる。

安心する、包容力があるのだ。


「シグは思いっきり嫌そうだったけど?私のシグとらないでよね。」


「いや、誰もとらねーよ!なあ、俺も混ぜてくれよ反省してるんだからさ。」


「ふーん、シグはどう?嫌なら断っていいのよ?」


エレナ姉ちゃんは疑惑の視線を送りながらも判断は僕に任せるようだ。

ここで「本当は怖かったんです!実はこの人に脅されて!」っとか言ってやってもいいんだけど。

別にそこまでする必要はないし、猫かぶってるみたいで嫌だしな。

あ!でもエレナ姉ちゃんを渡すわけじゃないぞ、お前には一万年早い。


「別にいいですよ僕は、ちゃんと謝ってもらえましたし。」


「そう?じゃあ三人で遊びましょうか!」


それから僕達は毎日ではないがたびたび三人で遊ぶようになった。

そして事件は起きてしまった。





-----------------------------------




事件が起きたのは僕が七歳の誕生日を迎えて少し経ってからのことだ。

エレナ姉ちゃんが急にこんなことを言いだしたのだ。


「ね、ねえシグ。よかったら今日、私の家に泊まらない?」


顔を赤らめながらそんなことを言ってきたのだ。

これは大事件だ!

どうするどうする、僕はまだ七歳だぞ?流石に早いんじゃないか?

いやでもエレナ姉ちゃんになら抱かれても、いいっ!


冗談はさておき僕は了承をしてエレナ姉ちゃんの家へ泊まることにした。

俊敏力強化アクセルブーストを使って診療所まで走りしっかりと母さんにも連絡はしておいた。

母さんも緊急の仕事が入ってしまって村を出るので助かったと言っていた。


エレナ姉ちゃんのおじいさんは普通の優しいおじいさんって感じの印象だ。

怖い感じもしないし、エレナ姉ちゃんと同じ真っ赤な髪の毛と髭のおじいさんだ。

ただ一つびっくりしたのは身長だ、今年で87歳と言っていたおじいさんは想像以上に大きかった。

190ぐらいはあるんじゃないか?

顔は優しそうなのに無駄な肉のついてない体はすごいプレッシャーを放っている。


「君がシグルスティアか、孫がいつもお世話になっているね。君の様な子はいつでも歓迎だ、いつでも泊まりに来ていいからね。」


と申された。

見た目と体つきとは裏腹にすごく優しそうな声だ。

そんないつでもいいなんて言われたらすぐ来ちゃいますよ?いいんですか?後悔させますよ?

なんて言えなかった、それぐらい威圧感がある人だ。


「優しそうでしょ?でも稽古の時は鬼みたいに怖いんだから。シグが見学に来た時は猫被ってただけよ?」


「これこれ、エレナ。そんなこと吹き込むんじゃない、怖がられたりしたらどうするんだ。」


「いえ、怖がったりなんてしませんよ。優しさを感じる良いおじいさんですね。」


「ふぁっふぁっふぁ。エレナよ、お前よりシグの方がよくわかっているようじゃな! 」


すごい笑い方だな。

この人にはシグと呼ばれても悪い感じはない、ビートとは違うな。

あいつには未だにシグルスティアと呼ばせている。


「すまぬがわしは会合に出かけなくてはならなくてな、明後日まで帰らぬ。よければそれまでエレナの相手をしてやってくれぬか。」


「は、はい!任せてください!」


そう、つまりエレナ姉ちゃんと二人きりという事だ。

若い男女がひとつ屋根の下なのだ。

舞い上がってしまうぞ、僕は今日大人になるのか。


その日僕はエレナ姉ちゃんと同じ部屋で寝たわけだが、当然何も起きなかったわけだ。

神様チキンな僕を許してください。




---------------------------------




「おい!シグルスティア!エレナ!起きろよ大変だ!」


僕らは朝、やかましい声と共に目が覚めた。


「なに?うるさいわね、なんの用よビート。」


そう、僕らを起こしに来たのはビートだ。

珍しく焦った様子だった。

まあコイツはエレナ姉ちゃんの事になると毎回焦っているが。


「村に野党が攻め込んできたんだ!」


僕らはビートの連絡を受けると村の中央まで急いで走った。


「な、なんですか。これは・・・。」


言葉が出てこなかった。

村の門は完膚なきまで破壊されていた。

周囲の建物も破壊され、怪我をしている人たちもたくさん居た。

向こうに転がっている農兵なんてピクリとも動かない。

首元から血を流しているし、彼はおそらくもう・・・。

そして僕が一番に目を疑ったのは跡形もなく破壊された母さんの診療所だ、どの建物よりも酷い。

母さんの誇りに思っていた仕事場がこんな有様にされていたのだ。


僕はとりあえず一人一人怪我を負っていた人達を魔法で治していった。


「ありがとう、流石は先生の子供だな。心強いよ、だというのに俺たちときたら村を守れなかった。クソッ」


「・・・。」


何も言ってあげられなかった。

エレナ姉ちゃんもかなりショックだったのだろう、状況が飲み込めずに立ち尽くしている。

そんな時、一人の農兵が信じられないことを口にした。


「あいつに、誰か女を一人連れて行かれちまった。俺達は何もできなかった、不甲斐ないよ。」


本当に申し訳なさそうに呟いた一言だったが、僕は嫌な想像をしてしまう。

呆然としている二人と怪我をしていた他の農民達を放っておいて、僕は家へと全速力で走っていた。

そして見てはいけないものを見てしまった。

破壊された扉と見事に荒らされた家の中と、いつもなら家事をしているであろう人の存在がないこと気づいてしまった。


「俺さ、お前がエレナの家に泊まっていたの知らなくてお前の家の前まで来たんだよ。」


ビートだった。

僕の跡を着いてきていたのだろう、ビートはそのまま続ける。


「たぶん、攫われたのはお前の家の人だ。」


信じられないことを言われた。

いや、なんとなくわかっては居た。

この荒らされた家を見て僕は、考えたくなくて目をそらしたのだ。

同時に怒りもこみ上げてきた、この男はそれを見ていたんだ。

見ていたのに何もしなかったのだ、助けようしなかったのだ。


「なんで何もしなかったんだ!その場に居て、何で何もしなかったんだ!!!」


「おいおい、俺に当たるのはお門違いだろうが!」


いつもならこんなことにはならなかった。

ビートに掴みかかった僕はいとも簡単に振りほどかれ、その場に叩きつけられた。

でもわかっている、コイツに当たるのが間違っているなんてこと。


「お前がエレナばかりに構っていたからじゃねーのか、お前は俺よりつええのによ。大事な時にお前が家族の傍に居なかったせいだろ。」


そうだ、その通りだ。

可愛いガールフレンドが出来たからって浮かれていたせいだ。

僕が傍に居れば守れたかもしれないのに。

もう二度と失わないために、大切な人は自分で守るって決めたのに。

僕のせいだ、何も成長しちゃいない。

そうだ、やらなくちゃ。

僕がやらなきゃ・・・。


「お、おい。どこに行くんだよ!」


「助けに行く、ジェイナさんを。」


そうだ、僕が助けるんだ。

守るって決めただろう。

男なら一度決めたことは貫き通せ。


「おい、待てよ!」


「止めないでください!僕は行きますよ。」


「ちげえよ。俺、アイツら尾行してたんだよ。そしたら村の外に出れる隠し通路を見つけた、アイツ等が向かったのはシプーナの森だ。案内してやるよ。」


こいつ、こんな良いやつだったのか?

どうやら僕はビートの事を少し勘違いしていたようだ。

この人は敬意を示すに値する、出会いこそ最悪だったけど悪い人じゃないんだな。

ここ最近一緒に遊んでてそんな気はしてたんだよ?

いやいや本当に?


僕はビートさんの案内のもと、シプーナの森を目指すことにした。

シプーナの森はエイントア村から徒歩で数時間程度で辿り着ける森だ。

シプーナという魔獣が居る森らしいが、そこまで強くはない。

農民なら脅威かもしれないが僕でも倒せる程度だ。

僕らは抜け道へと向かう途中で、おそらく一番出会ってはいけない人と遭遇してしまった。


「どこ行くのよ。」


そう、エレナ姉ちゃんだ。


「ちょっとお手洗いに・・・。」


「嘘ね、助けに行く気なんでしょう。やめなさい、危ないわよ。」


まあ当然こうなるよね。

でもだからって辞めるわけにはいかない、いくらエレナ姉ちゃんでもこの決定は絶対だ。


「って言ってもやめないんでしょう?わかってるわよ。ただし、私も行くわ。」


「できないよ、エレナおねえちゃんを巻き込む訳にはいかない。」


とんでもないことを言い出した。

確かに戦力としては心強い、でもだからってこんな危ない事に付き合わせる訳にはいかない。

でもなー、エレナ姉ちゃんだしなー、聞かないんだろうなあ。


「じゃあシグも行くのをやめなさい。シグが行くなら私も行くわ。」


ですよね。

でもどうするか、俊敏力強化アクセルブーストで置いていってしまうか。

いや、それじゃあビートに道案内をしてもらえなくなる。

時間はない、迷っている暇はないんだ。

それに、戦力としてはビートなんかより頼りになる。

よし、連れて行こう。


「わかったよ、じゃあ一緒に行こう。」


「は!?シグルスティア、お前正気か!?」


「正気ですよ、エレナお姉ちゃんは強いですし。ぶっちゃけビートさんより頼りになります。」


「じゃあ決定ね。さ、急ぎましょう。」


僕らは抜け道を使いひっそりと村を抜け出すと、シプーナの森へと急いだ。

森は暗くなってからの方が隠れやすいが、同時に敵も見え辛くなる。

明かりも持ってきてない僕らは不利だし、野党共がすっとシプーナの森に滞在するとも限らない。


急ごう、待っていてくださいジェイナさん。

すぐに助けに行きますから。





次回は戦闘回です。

シグやエレナ、そしてビートの戦闘も?


お楽しみに!

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