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第6話◆北京ダックを食べて自殺する◆

つい数時間前には樹海で自殺を決意した4人の自殺志願者達。今は4人仲良く某高級中華料理店で席を並べ座っている。

全てはブタ男の一言…


「死ぬ前に北京ダックが食べたいブゥ−」


この一言が4人の気持ちをひとつにしたと言ったら大袈裟か?どちらにしても自殺を踏みとどまりブタ男の夢を叶えるため一致団結した…っと言うのも大袈裟か?


4人は自然歩道の近くの樹海で自殺を計ろうとしていたので迷うことなく風岳駐車場に戻ることは容易だった。車はもともと清水がのってきた車を使った。目的地は横浜…亜紀の常連である某高級中華料理店だ。女子アナだけあって旨いものを食べ尽くした亜紀のお勧め店なら間違いないだろう…


亜紀をのぞく3人はこんな高級店来たことがないのでキャロキャロと落ち着きがない。

天井に輝くモダンなシャンデリア、高価そうなツボ、わけのわからないブロンズ像、さらにここはVIPとかかれた個室である。


「このとびはご利用ありがとうございます。私、料理長の岸部ともおします」


料理長みずから挨拶に来る。さすがはスーパー女子アナ亜紀である。亜紀はそっけなく注文をする


「今店にある北京ダック全て貰えるかしら?」


「は?す、すべてですか?」


「そうすべてよ」


「か、かしこまりました−!」


料理長の驚いた顔を見て亜紀はクスッと笑った。ま〜当然だろうこんな注文する客いないだろうから…ちなみにここの北京ダック1人前、25000円である。亜紀は胸ポケットからタバコを取り出し一服。


「あの〜トイレいきたいブゥー」


「あっ僕もアル…」


「右に同じ…」


3人は緊張の色を隠せない。そしてトイレでも驚きの声を上げることになる。黄金の便器、蛇口は竜の置物のような形…もちろん黄金!こういうのを無駄に高級と言う!

3人はトイレから戻ると既に料理が置かれていた…

フカヒレの姿煮、アワビのXOジャン炒め、ツバメの巣のサラダ、そして北京ダック…


「今日はブタちゃんにとって最後の晩餐よ…北京ダックだけじゃなくて中国高級食材を好きなだけ食べてね!他に食べたいのあったら好きなだけ注文してね!」


ブタ男は涙を流し喜んだ。亜紀がまるで神様のようにさえ見える。亜紀の手ほどきでまず北京ダックを食べる。北京ダックは豚の皮を水飴で固め、野菜を包んで食べる…


箸を持つ手が震える…これが夢にまで見た北京ダック!一生食べる事がないと思っていた北京ダック!口の中にほおる



パクリッ!


「………」


「………」


「う!うますぎだブゥー−!この肉の味を生かしたタレと野菜とのハーモニー口に入れた瞬間頭の中では…」


草原!


「そう草原が見えるブゥー!この豚をどれだけ愛情をもって育てられたか!料理じゃないもはや芸術の域に達してるブゥー−!!!」


ブタ男は数分天井を見上げあまりの旨さで直立不動になる。


「さっみんなも遠慮なく食べてね!お金はいくらでもあるから」


こんどはアルネ男がフカヒレの姿煮をとった。だがアルネ男は本番中国の人間…所詮日本の中華などたかがしれている…と思っている…


パクリッ!


「う、うますぎアル−!このとろけるような歯触り…僕が今まで食べてきたフカヒレはなんなんだアルカ!」


アルネ男も放心状態!


「おかわりブゥー!」


ブタ男は既に北京ダックを食べ終えた。ものの数分で!厨房は戦場のような忙しさになった!


「アワビもうまいブゥ!


北京ダックがくるまで他の料理に手をつけるブタ男。清水は高級食材を味わって食べているようだときどき頷いている。亜紀は食事をせずひとりタバコをふかし笑っている


「北京ダックおまちどおさまです!」


パクパクパク!


「おかわり!」


異常な速さでたいらげるブタ男…


死期を悟った動物は子孫を残すために必死になるという…今のブタ男はそれに近いのかもしれない…自分は死ぬ…死ぬ前に食べれるだけ食べる。


「おかわり!」


すでに北京ダック12人前食べている。さらにスープ、金華ブタのステーキ、アワビの姿煮…もろもろ食べている。この男に満腹中枢はないのか?


「おかわり!」


無いようである…


「北京ダック…こんなに食べれるなんて夢みたいブゥ!おかわり!」


そこなしの食欲3人は呆れたようにブタ男を見ている。もうブタ男以外お腹はいっぱいなのだ。


「おかわり!」


………


………


厨房の北京ダックが全て無くなったところで最後の晩餐は終わった。亜紀は会計をすませると4人は外にでる。時刻は5時を回っていた夕焼けが4人を包む。


「ブタちゃん満足した?


「満足ブゥー…もう思い残すことはないブゥー」

「………」


この時のブタ男の夕日に照らされた笑顔は一生忘れることがないだろう…4人は無言で車に乗り込み深夜まで横浜市内をブラブラと走った。そして深夜1時…4人の向かった場所は…


マックスバリュー


この時間のマックスバリューは数えるほどしか客はいない。4人は障害者トイレの中にいる。4人はいると少し圧迫感さえある…


「みんなありがとうブゥー…最後に僕の夢叶えてくれてありがとうブゥー…」


「………」


ブタ男は右手にロープを持っている。ロープの先端はわっか状だ…


「清水君…アルネ君…亜紀さん…君たちに最後にあえて良かった」


「………」


誰一人としてブタ男に声をかけるものはいない。みんな下を向いて黙っている…ブタ男は天井の金具にロープを結びつ便座に立つ。便座から降りれば彼の人生は終わる…


「みんなそんな悲しい顔しないでブゥー…僕はみんなにあえて良かった…みんな大好きブゥー」


「………」


そして…


………


………




死んだ…




ロープからブラブラと揺れるブタ男…


「ブタちゃんの顔…幸せそう…」


「そうアルネ…」


このとき亜紀は涙を見せながらも最高の笑顔だった。まるで何かをやり遂げたかのような…達成感といったらおかしいか?


「ブタ男の人生はこれで幸せだったのかな?死ぬ前に大好きな料理を食べて幸せだったのかな?」


「それはブタちゃんにしかわからないわ…」


亜紀がいう。3人は外にでて車に乗り込んだ。当たりはすでに真っ暗で街頭の光だけが3人を照らしていた。


「ブタちゃんは夢を現実のものにした…私は幸せだったと思いたい…」


「夢アルカ…」


このときアルネ男の表情が変わった。


「みんな聞いて欲しいアル、僕にはひとつやりたいことがある…」


清水と亜紀はアルネ男の顔を見た。


「僕は…僕は憎っくき日本人を殺したい!それもひとりやふたりじゃない!大量に殺したいアル」


「………」


3人は無言で車を走り始めるのだった。目指すは…


東京…

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