第3話◆4人の自殺志願者◆
「死んじゃだめだ!今は辛くてもきっと楽しいこともある!」
「そうよ!そうよ!死んじゃだめよ!」
男はキョトンとしている。この2人は自分を助けようと必死になっていることはわかる。でも良く考えたらここは死の原生林…ここにいるって事はこの2人は自殺志願者じゃないのか?
「………」
間違いなさそうだ…2人の後ろに首吊りロープが仲良く二組並んでいるのが見える。そして男は不思議そうにたずねた?
「あなた達も首吊りするためにここに来たアルカ?」
「そうだ!」
「そうよ!」
「あなた達自分は自殺するけど他人の自殺は許せないアルカ?」
清水と女は固まってしまった。このやりとりは先程2人が行っていたものと同じだ…何故たすけた?わからない…本当にわからない…2人はキョトンとお互いの顔を見た。
「と・に・か・く!ボクは死ぬアル!お先アルネー!」
男が再び首にロープをかけた瞬間だった…
ドガッ!
清水は男の頬に鉄拳を入れた。
「死ぬな!」
「そうよ!死んじゃだめー!」
「………」
男は地面に這いつくばり口元を手でぬぐった。手が真っ赤に染まっているのがわかる。そして2人は鬼のような形相で男を見下ろしていた。そして清水は男の両肩に手を置き必死に呼び掛けるのだ…
「死ぬな!」
「死にたいアル…」
「死んじゃだめだ!」
「死・に・た・い・アルー!」
「死ぬんじゃない!」
「てかあなた達も自殺志願者じゃないアルカ?他人の自殺は何でだめアルカー?」
確かに!…っと清水は思った。自分はここに自殺しにきたのだ別に人がどおなろうと構いやしない…自分は何で自殺志願者を説得しているんだ?うーん…わからない…そもそも俺は本当に死ぬ気だったのか?
………
………
それは突然の出来事だった。
偶然にも出会ってしまった3人の自殺志願者の前に疾風のごとき強烈な風が吹いたのだ…空気は一直線に層を作り木々をなぎ倒す。それは偶然とは呼べないような奇跡の風…
そう奇跡の風だ…
その風の先にはある男の姿を写していた…その姿を見て真っ先に体が動いたのは誰あろう先程、死にたい…っとわめき清水に説得されていたあの男…
「………」
「………」
「し…死んだらだめアルネー!死んだら親が悲しむアルネー!」
「そうだ死んだらだめだー!」
「そうよ!死んじゃだめよ!」
アルネ男(分かりにくくなるので以下こう書きます)の目の前にはまるでブタのような男(以下ブタ男)が転がっていた…ブタ男は仕切りに胃液のような物を口から垂れ流しアルネ男を見る…その瞳には疑問と憎悪が満ち溢れていた…
「何するんだブゥー!お前たちも自殺しに来たんじゃないのかブゥー!どういうつもりだブゥー!」
「死んじゃだめよ!辛いことばかりじゃないわよ?死んだら終わりよ!」
女は必死に呼びかける…
「死んだほうがいいんだブゥー!生きてても何もいいことないんだブゥー!」
「辛いことあるなら話してみて!きっと楽になるから…」
女は優しくブタ男の手を握った。戸惑うブタ男…日頃から女性に優しくされたことがないのだろう…
「お・ね・が・い…」
「ブ、ブゥー…」
甘ったるい声を浴びせる女…ブタ男もだんだん落ち着きを取り戻してきたようだ。
「………」
「………」
「わかったブゥー…」
こうして偶然にも出会ってしまった4人の自殺志願者。これからどうなってしまうことやら…