表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

第2話◆矛盾◆

俺の名は清水和也、年齢25歳…

俺の人生は暗黒に満ち溢れていた…


父はいない…俺が小さいとき女を作って出ていったらしい…父の顔を覚えてはいないしあいたいとも思わない。俺は母、女手一つで育てられた…でもそんな母ももうこの世にはいない…


俺の人生は敗北の連続だった…


小、中学校の時に父がいないことでイジメられたりもした。その頃のあだ名がCO2…いてもいなくても一緒と言う意味らしい…笑えるだろ?


俺は俺をイジメた奴らを許さない…俺が死んだら奴らを呪い殺してやろうと思う。


3流高校を出て3流企業に入る…

こんなできそこないな人間が出来ることといったら流れ作業しかなかった…流れ作業だぜ!トイレに行く前にボタンを押す流れ作業だぜ!誰でも出来る仕事流れ作業…でもね…こんな流れ作業さえも出来ないどーしようもない人間だっているんだぜ…俺だよ!俺のラインだけネジが入ってないんだよ…左藤と言う上司が言ってたっけなぁ…


「お前はうちの粗大ゴミだ!」…てなぁ


俺が死んだら左藤も呪い殺してやろうと思う。


……


……


でもね…こんな俺でも向上心はあるんだ…俺はねこのままじゃいけないと思った。俺は死にもの狂いで勉強した。人生で最初で最後の努力だ。俺はね資格を取ることにしたんだ。


3年がたち、5年がたち何度も何度もテストに落ち…

そして6年め…ようやく念願の資格NCマシニングセンターを取ることに成功したんだ。


NCマシニングセンター…NCの中でも最も高度の技術を必要とされる。これで機械加工が出来るもう粗大ゴミなんて呼ばせない。


俺は生まれ変わった。俺の人生は光り輝いている…


……


……



浮かれてたんだな…俺は結局粗大ゴミだった。入社2ヶ月で俺はあんなミスをしてしまった…もう会社に居たたまれなくなった…



わかったよ…


もうわかった…


俺は生まれながらにゴミなんだ。どんな努力も意味がないんだ…いるんだなこういう人間も…俺は死んだほうがいい…


俺の人生は暗黒に満ち溢れている…




樹海…


お似合いだ…


俺にはお似合いだ…俺は人々の記憶から忘れ去られる…清水和也の存在自体が消され…


これで暗黒の時代ともおさらばさ…




さよなら…









疾風…


それは疾風のようだった。清水和也が死を覚悟し首に縄をかけた瞬間強烈な風をあび辺りの木々が有り得ない方向へと曲がり太陽が頭を覗かせる。太陽の光の先にある光景を見た瞬間無意識に体が動いた。


皮膚に突き刺さる木々を押しのけただがむしゃらに走る…


何度も転び起き上がった…

そして気がついたときには体中擦り傷にまみれ、額には土の感触そして両手にはふくよかな感触があった。この時でもまだ清水は自分がしたことを理解できないでいた…本当に無意識からの行動だったのだ。


清水が見たもの…それは今にも首を吊ろうとするひとりの女性だったのだ…

押し倒した様な形で横たわる二人、数分時が止まったように見つめあう二人…すると女性の口元が歪んだ。


「君はここにいるって事は自殺しにきたの?」


「………」


清水は女性の声で我にかえり、サッと女性の体から離れる。とても美しい女性だった…そしてどこか懐かしい…


「そうでしょ?ここにいるって事は死にに来たんでしょ?へー君は自分は自殺するけど他人は自殺しちゃいけないんだ…」


「そ…それは…」


清水自身なぜ助けたのかもわからない…

ただ自然と体が動いた。自分はここに自殺しにきたのだ。これは確かなこと。だがまさか自分と同じ自殺志願者に会うなんて夢にも思わなかった…何で助けたのだろう?自分自身に問いかけても答えは出ない…

女性は呆れたように清水を見下ろしまたロープに手をかけた。そして投げ掛けるようにこう言ったのだ。


「私は死ぬわ…お先」


女性は飛び上がるように首をロープに押し当てた



ガッ!


「………」


「………」


「喧嘩売ってんのー!君も首吊りに来たんでしょー!何でも止めんのよー!」


「うう…」


清水はまた体が自然と動き女性を押し倒してしまった…女性は鬼のような形相をしている…


「ちょっと何か言いなさいよ!自分の目の前で首吊られるのが嫌なわけ!


「そー言う訳じゃないけど…」


「………」


「………」


「…わかったわ…君から首吊りなさい…私見ててあげるから…君が死んでから私首吊るわ…邪魔されたくないもの…ほら、わかったらサッサと首吊りなさいよぉ!」


女性の出した提案それは先に清水が首を吊れ!…と言うものだった。女性はとにかく自分の首吊りを邪魔されたくない一心だ。清水は渋々マイロープに手をかける。


「………」


「………」


何故かそれ以上体が動かない。さっきはあんなに死ぬき満々だったのに…ちらりと女性に視線を送る。女性は腕を組み呆れたような表情をしている。


「………」


「………」


さらに視線を送る。女性は眉間にシワを寄せ。舌打ちを始める。


「………」


「………」


さらに視線を送る…


「男でしょ!ウジウジしない!死ぬときは死ぬ!早くしなさい!」


清水は女性の怒鳴り声でようやく力を込めることが出来た。


ああ…これで暗黒の時代ともおさらばさ…



今度はホントにホントだ…






さようなら…







清水が死を決意した瞬間だった…



「みんな皆殺しアルネー!ボク死んでみんな呪い殺してやるアルネー!」


清水の後ろから男の怒鳴り声が聞こえてきたのだ!その声は清水より太く怒りに殺意にも満ちた怒鳴り声だった…


そして清水は自然と体が動いた…あの女性もその声の元に走り寄る。




ガッ!







「………」


「………き」


「君達、何アルカー!死なせてくれアルネー!」

清水は声の主に怒鳴った


「死んじゃだめだ!死んじゃだめだ!生きてればきっと良いことあるさ」


「そうよそうよ!死んじゃだめ!」


女性も必死で叫ぶのだった…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ