第11話 Delete
作者アメリカ留学にて執筆、翻訳作業を行っており、大変長らくお待たせいたしました。
豪風と共にそこに立つイグニス、今にも飛ばされそうな俺がいる。
だがどうする…、こんな状況で奴に勝てるわけがない。このままいけば間違いなく俺は粉々になるだろう。
考えろ。考えるんだ俺ッ…!
「どうした? お得意の技、『ブルートフォース』はよぉ!! ガハハハハッ!!」
「はいはい、どうせ技が出ないのは知ってるさ。 まぁそう運営に弱体化食らったからってカッカするなよ。なぁ、イグニス?」
その言葉が放たれた瞬間、愉快に笑っていた奴の表情が歪んだ。まるでこの世の思念を具現化したみたいだ。
なぜこんなにも奴がキレ始めたかって、そりゃ考えたらわかる。まぁ簡潔に言うなら強すぎて弱体化食らって、今じゃ「倉庫番」キャラだからだ。だがこの言葉を言ったのは挑発なんかじゃない。作戦があるんだ。
「だがな、そんな雑魚キャラのお前でもな、熊木は頑張ってお前を育ててたんだ。 必死に、ユーザーが減った今でも! 大切に一人だけロックかけて育ててきてたんだよ!」
一瞬だが奴が放つ豪風が弱まった。チャンスだ…!
「なぁ! 思い出してくれ、お前が本当に大切にしたかったものを! こんな風にフレンドを傷つける為じゃないだろ!」
「うるさい!!! 黙れ!!!!!」
突然、あたりに熱風が吹き荒れる。 しまった、刺激しすぎたか。とっさに防いだせいか、片目を負傷してしまった。片目を開けるだけでやっとだ。
ただ、一瞬。ほんの一瞬だった。開くはずのない片目からわずかに青い光が差し込んだ。 あれは…、熊木が持っているあれは、「小型サーバ」か…?いや、違う。 あれは「EMP」だ。 奴だけが技を使えて、俺が使えない。 なるほど、謎が見えてきた。
ずきずきと痛む左目を抑え、確かに光るその『宝具』を確かに眼中にとらえた。
「なんだ…、簡単なことじゃねえかよ…! こんなことにも気が付かなかったなんて、応用技術者失格だな。」
「フン、まだ懲りぬか。 貴様の力などゴミ同然。 どうあがこうが貴様の負けだ。」
「悪いな、俺は諦めが悪いんだ。」
俺は地面に転がっていた石の破片を光る宝具に投げた。 昔空手をやっていたせいか、肩には自信があるほうだった。
俺の投げた剛速球は見事命中し、その宝具は粉々に砕け落ち、光をみるみる失っていった。
それと同時に、どうやら俺の力も復活してきたらしい。
「お、なんか調子出てきたわ。 まぁ学校のサーバーが復活でもしたんだろ。この学校はサーバーを通して技を使ってるって、さっき'大親友'にに聞いたからな。」
「なっ、石の破片で破壊しただと!?」
「あー、悪い。 言い残すことあるか? 早く片付けて夜食にしたいんだ。」
宝具を破壊しただけで、奴の力が弱くなったわけじゃない。 最後の力を振り絞って奴は次々と教室内のものを投げつけてくる。 だが、力が戻った俺にとってはそれこそゴミ同然だった。
「あー…、無いってことでいいんだな? 悪く思わないでくれよ。」
そうして俺は久々に大きく息を吸い込み、呪文を詠唱した。
「ブルート・フォース。 破壊せよ!!」
奴の力とは比べ物にならない波動が轟音を立てて、奴を貫いた。 大丈夫だ。手加減はしてあるさ。そのままイグニスは倒れ、熊木の本当の姿へと戻っていった。
「イグニス、今のNOOBじゃね?」