第1話 Connection
携帯時計のスヌーズの音が空間に鳴り響く。うす暗い部屋の中にカーテンから除く一筋の光が見える。重い頭を上げて携帯時計に手を伸ばす。爆音で鳴り響く携帯時計を止めるとそこに時刻が表示される。今の時間は…ちょうど午前10時24分、火曜日だ。
「また寝坊か…」
つい先日遅刻して怒られたばかりだというのにまた遅刻してしまった。でも遅刻して怒られるくらいなら休んでいっか。もうひと眠りしようとしたが一度体を起こしたからか、眠気はどこかへ去っていた。
仕方なく体を起こすと机の上に置いてあるパソコンのスイッチを押した。すると瞬く間にモニターに光が宿り、いつものようにパソコンのアカウント、「須藤 明乃真」にログインする。
マウスポインタを『アーヴァウォッチ』に乗せダブルクリックすると、いつものように大好きなゲームの画面が出てきた。アーヴァウォッチは近未来型のFPSゲームで世界で最も人口のあるゲームだ。うちの学校でもやっていない人はほとんどいない。フレンド欄をチェックすると学校の友達はもちろん、ほとんどオンライン状態にはなっていなかった。まぁ当たり前だよな、平日だし。皆学校や仕事で忙しいのだ。
だが、下にスクロールしていくと一つだけ≪-ONLINE-≫と表記されたネームがあった。それはネットの友達「パスタ」だった。
「あいつも学校サボってんのか。パーティ招待おくっとこ。」
パーティ招待のアイコンをクリックすると、すぐにパスタはパーティに参加した。skypeの通話も同時に始めると俺たちは平日の午前中からゲームを始めた。
―――――――――もうどれほど続けていただろうか、気が付くと午後18時を回っていた。流石に朝から何も食べてないので腹が減った。何か冷蔵庫にないだろうか。
キッチンへと向かい、冷蔵庫を開ける。…ホウレンソウや卵、そのほか調味料といった特に目欲しいものは無かった。炊飯器の中身もカラだ。
飯くらい作っておけよ、と舌打ち交じりに呟くとテーブルにカップ麺と置手紙があるのに気が付いた。
「明乃真へ 今日も仕事遅くなるから一人でご飯食べてね、…か。」
俺の母親は朝早くから仕事に行き、帰ってくるのは真夜中だ。そのため日中は一人で過ごすことが多く普段から会話も少ないのだ。
ため息交じりにカップ麺にお湯を注ぐと窓から見える外の風景を眺めた。今日は雲一つない満点の星空で都会とは思えない程きれいな風景だった。
…今日もまたゲームしかしないで一日が終わったな。明日は先生になんていわれるだろうか。ますます
明日が不安になってきた。また明後日も明々後日も…。そう考えていると頭が痛くなりそうだ。
そう考えていた時だった。ふとパソコンに目をやるとアーヴァウォッチに見たことのない画面が表示されていた。なんだ?これは…。
表示されていたページは何やらプログラム言語のようだ。あいにく、俺はプログラム言語を学校で専攻しているのでそのページに何が表示されているかが分かった。
「アタラシイ、セカイヘ、ヨウコソ…?」
どういう意味だ?もしかしてこれは新たなウイルスか?と、考えているその時だった。
突然大きな光がパソコンから放たれる。なんだこの光は…ッ!?光が広がるにつれ俺の意識は遠のいていくのだった。