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妖精のフロア。

 どうやら俺は丸くなって眠っていたらしい。むっくりと起き上がる。周囲はダンジョンの部屋のようで、タペストリーやら何やらが目につく。冒険者やモンスターの気配は無いな。

 俺の身体は、ヘルハウンドの時と同じ四足。背中には羽が生えている。ちょっと羽ばたいてみる。バサバサ。これ、翼だけじゃ飛べないみたいだが、すこし羽を動かしただけでフンワリと身体が浮き上がる。新感覚だなー。そのままフワフワと部屋の中を空中散策。うーん、快適。と、そうだ、ステータスチェックをせねば。


・ヒュプノス

【種族】シトリー LV.1(1/15)

HP  130/130

MP  152/152

攻撃:140

防御:64

魔力:80

知力:92

俊敏:90

スキル:ファイアブレス、フェザーショット

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル、ウインドカッター、クイック

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、影縫い、ステータス


 おお、クイック。ちょっと欲しいと思ってたんだよね。風魔法だったわけだ。で、影縫い。神様、影縫いって何ですか?…神様?


“あによー、私だってちょっとくらい飲みたい時があんのよー。”


 怒ってらっしゃる。と言うか酔っ払い。今はそっとしておくべき時の様だ。触らぬ神に祟りなし。


“ちょっとあんた、アタシを無視するなんてねぇ、100年早いのよお。いいじゃない、ちょっとくらい我儘聴いてくれたってぇ、みんな邪神とか言って虐めるしさぁ、アタシが何したっていうのよぉ、グスグス。”


 あ、泣き上戸だ、この神。えー、影縫いの解説はまた今度にしよう。ステータスの仕様変更も…間に合わなかったようだし。神様にしてみりゃずっと話し相手も居なかったんだし、ちょっと反応が淡泊に過ぎたかな。

 何か、話したいことがあるんですか?神様?愚痴だったら少しはお聞きしますよ…と。


“zzzzzZ”


 寝落ち。取りあえず、一件落着、か?

 ともあれ、このフロアの確認をしようかな。ギイイ、と、寝ていた部屋の扉を開ける。石造りの廊下は、前回と変わらないな。出た所の直ぐ左手、窓があり、そこから夜の都の街並みが見える。普通に城の上へあがって来たって感じかな。綺麗な街並みだなぁ。でも、俺一人で夜景を満喫したところで、面白いことなんて何もない。取りあえず進みますか。

 廊下を適当に飛んでいく。歩かなくていいって、イイね。足腰とか衰えないんだろうか。まあ、そういう常識的なこと言ってるとこの世界は楽しめ無さそうだけどね。足腰が衰える前に次の進化をしてしまえばいいだけの話。

 廊下の突き当りには大きな部屋があった。いや、正確には大きな門があるから、きっと大きな部屋なのだろう。ちょっと嫌な予感がしないでもないが、ひっそりと扉を押して、中をのぞき込む。


「ゲギャギャ!」

「グギャギャギャ!」


 ああ、これ、モンスターハウスとかそういう奴かな…なんか沢山溢れている。俺も普通に仲間みたいな顔して入れるだろうか?ダメだろうなぁ。と言うか、多分この部屋のボス的なやつが仕切ってるんだろうな?力技でいう事を聴かせることが出来るって、ベネルフューゲルも言ってたしな。

 ちょっと、モンスターの詳細見ていこうかな。オーク・キングはまだ居るのな…あとは、


ホブ・ゴブリン

HP 85/85

MP 20/20

攻撃:90(+20)

防御:45

魔力:23

知力:22

俊敏:35

スキル:なし

スペル:アースウォール

装備:こん棒


 うむ、オーク・キングとトントンな。っていうか、オーク・キングは少し強くなってたりするのかね?


オーク・キング

HP 95/95

MP 22/22

攻撃:98(+20)

防御:60

魔力:28

知力:27

俊敏:39

スキル:なし

スペル:アースウォール

装備:無名の大剣


 おお、少しパワーアップしている。まあレベルが高いって事なのかな。いずれにしても瞬殺コースだな。後は…オーガか。


オーガ

HP 120/120

MP 20/20

攻撃:120(+20)

防御:75

魔力:15

知力:16

俊敏:45

スキル:なし

装備:こん棒


 ああ、こりゃ結構相手にしづらいな。ガルムと同じくらいの攻撃力か。出来れば貰いたくないが…スリープ一直線コースだな。ブレイズウォールで即死も可能だな。この辺のモンスターに加えて、後は…居た!ジャックフロスト&ジャックランタン!


ジャックランタン

HP 75/75

MP 60/60

攻撃:80(+15)

防御:40

魔力:42

知力:45

俊敏:33

スペル:ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル

装備:グリムリーパー(攻撃+15)


ジャックフロスト

HP 80/80

MP 60/60

攻撃:75

防御:50

魔力:50

知力:52

俊敏:31

スペル:スノーボール、アイスランス、ブリザード


 え?弱くね?ジャックフロスト。マジでベネルフューゲルのいうこと聞いてたら死んでたかもしれん。良かったー。あいつは一体何考えてんだ。

 さて、フロアのボスらしき奴はどれか解らんが、ともかく殴り込みをかけても何とか掃除できそうだな。全部で10数匹という所か。先ずは、クイックを使って、と。キラキラと俺の身体が光を放つ。身体が軽い!でもって、ハイディングで隠れながら部屋に入る。で、頭の弱そうな連中はスリープ連射!ガクン、ガクン。おお、いい効き具合だ。

 じゃあ、行きましょうか!

 俺は上空から急降下しながら爪の嵐をお見舞いする。何しろ今はクイックでスピード+30だ。奴らからなんて見えやしないし、そもそも魔法も当たらない。おまけにハイディングまで効いている。保険でスリープをかけたけど、殆ど意味ない位の虐殺振り。

 斬!斬!斬!

 断末魔の声を上げて、モンスターの数が目に見えて減っていく。そんな中、キッチリ反撃してきたのは何と、というかやはり、というかジャックフロスト。『ブリザード』!詠唱は広範囲に効果のある攻撃呪文で、俺も少し足止めを食らう。ちなみにブリザードを受けてジャックランタンは凍死した。何やってんだよお前ら。

 うう、さっむい。だが、その程度。お返しにブレイズウォールをかけてやると、雪だるまのような外観のジャックフロストは霧散と言うより溶けて無くなった。何か色々思い入れがあるモンスターなんだろうな、あの神様。

 で、あらかた片付いて辺りを見回すと、部屋の隅にちょっといけ好かない雰囲気の樹木が。ああ、あれがこの部屋のボスってわけ?


スクーグクロウ

HP 120/120

MP 100/100

攻撃:80

防御:80

魔力:75

知力:85

俊敏:15

スキル:ヴェノムウィップ

スペル:トキシック、ポイズンガス


 ほお、強いな中々。だが、こういういけ好かない輩は、部屋の端っこからファイアボール。ドドン、ドドン。だって、動かない奴の近くまで行って、毒とか貰いたくないですし。

 数発のファイアボールを撃ち込むと、そもそも炎と相性が悪かったのだろう。いけ好かない樹木は音もなく崩れ落ち、魔石へと変わっていった。

 さあ、お待ちかねの魔石タイム!オーク・キングは…あれ、攻撃が1しか上がらんな。強くなり過ぎたってやつか。ホブ・ゴブリンは、HPが2、か。これもなんだかイマイチだな。オーガは、攻撃が3。うん、これは期待通り!ランタンは魔力が3、フロストは知力が3と。これも素晴らしいね。うむ。何より魔石をかじれるのが素晴らしい。目の穴に入れるのはやはり抵抗あるわ。


・ヒュプノス

【種族】シトリー LV.3(3/15)

HP  125/145

MP  114/161

攻撃:152

防御:67

魔力:88

知力:100

俊敏:96

スキル:ファイアブレス、フェザーショット

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル、ウインドカッター、クイック

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、影縫い、ステータス


 で、気になるスクーグクロウだが…。魔石をボリボリ。うん、どうやらMP+3みたいだな。これもまずまずか。流石にガルムみたいにはいかないな。っていうか弱かったしな。仕方ない。でも、この感じだと5階はいつもモンスターハウスなのかね?そうだとすると結構おいしいな。防御も上げていきたいとこなので、ウェンディゴがここに加わってくれると非常に助かるんだが、まあ他にもそれらしいモンスターが居るかも知れないからな。


 大部屋の出口から、さらにフワフワと漂う。クイックの効果は切れたようだ。でも、アレ早すぎて風情が無いから、今の方が良いかも。

 そのままフワフワと漂っているうちに、どうやら5階フロアを全て回ったのか、階段が見えてきた。6階にも行っておくかぁ。この調子だと、それなりに楽しめそうだしな。







「という訳で、会合は1週間後となった。おい、聴いているのか?ベネルフューゲル殿。」


「あー、聴いてるよ。ちょっと飲み過ぎて頭が痛いだけだ。」


 しかめっ面でソファのひじ掛けに右肘をつき、頭を抑える夜の神。昨日はちょっと痛飲し過ぎた。僕は何であんなに飲んでいたんだったか…。


「では、おたくの眷属もその日に相見えようではないか。よろしく頼むぞ。」


 二コリと笑い、言いたい事だけ並べ立てて、海の神アンティオキアは空間から出ていく。


「もう、そんな時期になったのか。他の神達に手の内は晒したくないな。まだまだヒュプノス君は弱いままだし、ここはやっぱり転生前の旧交を温めてもらいつつ、穏便に済ませよう。」


 はあ、と息を吐くベネルフューゲル。全く、お互いの手の内を探り合うのは、勇者を実際に倒すことが出来てからにして欲しいものだ。そもそも今信仰を集めているのはゼノンなんだぞ、僕らにはその力が無いからせせこましくダンジョンなぞ創っているというのに。

 まあいい、状況が見えてそうな神を探して、彼らと近況を報告し合えばそれなりの成果はあるだろう。

 うっ、頭痛い。水。






 6階に上がって来て思ったのは、なんか妖精が多いな、ということ。この辺は妖精を飼ってるフロアらしい。今正面に現れたのは水で出来た馬。


ケルピー

HP 100/100

MP 64/64

攻撃:62

防御:65

魔力:82

知力:80

俊敏:52

スペル:ウォーターウィップ、生命の水


 妖精系の生き物って基本魔力が強めの様だ。1階から4階はわりに物理攻撃寄りだった気がするから、そういう割り振りなのかも解らん。

 だが、攻撃力がオーク・キングのお蔭で一段突き抜けてしまってる俺としては、この辺の相手は割とやりやすい。と思っていたのだが…

 ケルピーがウォーターウィップを放ってくる。速度が速く、先端が見えない。ビシィっと俺の後ろ足にそれが直撃する。


「グガア!」


 思わず声が漏れるほど痛い。そういえば鞭の痛みって、ショック死するほどらしいな。ようやくその意味が分かったぜ。

 なんて解りたくも無い事実を悟らされた俺は、お返しとばかりにファイアボールを見舞う。ケルピー目掛け降り注ぐ火球。元が水で、火との相性はそれなりに良い様だが、数が多ければ逆に水は蒸発してしまう。

ジュウジュウと音を立てるケルピーはドンドン小さくなり、最後は蒸発して無くなった。

 チャリーン、と魔石が地面に落ちる音が響く。ごちそうさん。


 俺はケルピーの魔石をオヤツ代わりにしながら、ふと、俺は今何やってんだっけか?と我に返って考える。ベネルフューゲルに言われた通り階層主?を目指して頑張ってるわけだけど、階層主ってそもそも何をやるやつなんだ?


“おー、ついにヒュプノス君もそのことに興味を持ち始めたね?”


 あ、神様。お酒はもう十分なので?


“あはは、僕がワインごときで二日酔いで苦しんだ挙句海の神の来訪も気づかないなんてことがあるわけが無いじゃないか!君は何を言っているんだ?”


 …何も言ってませんが。ええと、質問があったのだけど、階層主って何をやってるのかな?


“ああ、そうだった。階層主はね、僕と一緒になって各セクションの管理とモンスターへの指示を出したりしているんだよ。月に一回顔合わせをして、現況報告会なんてやったりするんだ。”


 へえ、多胡部屋に閉じ込められて引き籠ってるだけなのかと思ってたからすごく安心しました。


“いやいや、解らなくも無いけど、流石に僕は自分の眷属にそんなひどいことしないからね?モンスターたちはまあ、仕方ないとして。”


 そこについては、言及しない事にします…自分の立場を考えると。


“それからね、階層主は自分の部下数名を伴って、僕の許可を得て外に出ることが出来る。”


 マジですか!?それは楽しそうだなぁ!ですが、その時の姿はどうなるので?まさかドラゴンがドドーンと人間界に攻め込むとか、そんな感じなんでしょうか?


“それをやると僕のダンジョンが人間から集中攻撃されて大変だから、みんなにはなるべく人間に見えるアバターみたいのを使ってもらうようにしてる。ノクトルム城でも上層に住んでいる子たちは人間型が多かったり人化が出来たりするから、その辺りの心配もいらないんだけどね。後は性格の問題だけど、性格に難ありの子はそもそも外出許可出さないし。まあ、例外的に暴れる必要がある件については、そういう子を送り出したりするわけだけど、まあ、あんまりないね。”


 へぇ。色々あるんですね。人化の術って、使ってみたいな。この世界のことについては、何も知らんもんな。前世が人間だけに、人間とも話がしたいなぁ。


“あ、この前の女冒険者の事を考えているでしょ?ダメだからね、そんな理由で外出許可出さないんだからね!”


 そんなこと考えてませんー!言いがかりですぅ!ああ、でも階層主を目指すモチベーションにはなりました。有り難う、ベネルフューゲル。


“どういたしましてー。それとね、大事な事を言い忘れた。後6日で例の神様と眷属の会合があるから、その時までに少しレベルを上げておくように!一応荒事は無いように釘を刺してあるけど、どんな言いがかりを付けられるか解ったもんじゃないからね。後は、他の眷属達と異世界トークで盛り上がって、友達を増やしておいてくれればいいよ。”


 まあ、毎日闘ってばかりでもあれだからな。偶にはそういう事があってもいいだろう。

 ベネルフューゲルからの念話が途切れると、俺は取りあえず今日はここまでにして切り上げ、5階の初めの部屋へ戻ることにする。シトリーは妖精という話だが、見た目が豹だからなのか、眠気は結構ある。ゆっくり眠って、起きたらまた探索を再開しよう。

 

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