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王城の入り口フロア。

 俺はまた見慣れない場所で目覚めた。砦よりもかなり広いホールだな。天井にシャンデリアがぶら下がってる。3階か、4階くらいの高さまで吹き抜けになってるな。デカいホールだ。恐らくはノクトルム王城の入り口ってとこだろう。

 よっこらせっと、起き上がると案の定正面には巨大な門があり、ここが出入り口であることを思わせる。装飾何かも随分きらびやかだ。調度品の類は無いみたいだけどな。と言うかそんなのあったら冒険者が持って帰るわな。

 俺は立ち上がる。久しぶりの2足歩行、いや、身体浮いてね?これ。短い脚と短い手、ブルーのマントを羽織って、きっと顔はハロウィンのああいう感じなんだろうなぁ。それで、気付くと両手に鎌を持っている。

 ジャックランタンか。こんなモンスターも居るんだなぁ。歩く感覚が掴めないが、フワリと飛びながら前進するのは中々に楽しい。あ、そうだステータスチェックね。


・ヒュプノス

【種族】ジャックランタン LV.1(1/15)

HP 45/65

MP 60/80

攻撃:80(+15)

防御:35

魔力:40

知力:45

俊敏:33

スキル:ファイアブレス

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、ステータス

装備:グリムリーパー(攻撃+15)


 うん、凄い底上げされたな。攻撃と俊敏が若干下がったが、魔力・知力の上げ幅が凄い。MPも一気に伸びたなぁ。魔法で闘うっていうのがメインにはなりそうだが、近接も結構いける口だという話だし。その辺は魔石頼みかな。

 新しい魔法は、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル。加護は、シャドウチェイサーと。


“どうかな、説明必要?”


 うむ、是非お願いしたいね。何かそういう機能つけらんないの?


“僕が全部説明してあげたい!っていうのが最初あったんだけど、なんかめんどくなってきたから次あたり創るよ。”


 あ、なんか俺の扱いが一般モンスターに近づいて行ってる気がする。今後の待遇に恐ろしい出来事が起こったりしないだろうか。心配だ…。


“大丈夫だよ、こんな楽しいの、手放すわけにいかないでしょ?”


 はあ、それだと有り難いっす。楽しんでもらえて何よりです。


“あ、それでね、ファイアボールは割愛ね。ブレイズウォールは相手の周囲に炎の壁を創り出して、炎熱に閉じ込める魔法ね。燃費は悪いけど使い勝手はいいわよ。ヒートグラップルは炎の鞭で相手を拘束するの。結構な距離でも伸びる筈よ。シャドウチェイサーはね、触れた影どうしを繋いで、その影の場所に移動する加護ね。”


 ざっくりしてるが大体解るな。説明有難う神様。確かにこれが増えて行ったら面倒だから、ステータス画面作っておいてくださいな。


“ステータス画面いじるの結構面倒なんだよねぇ…”


 はっ、もしかして仕様変更!?頭痛が…。まだ前世の記憶が残っているみたいだな。神様も納期は気にせずのんびりとやって下さい…


“あは、そうするねー。じゃあまた何かあったら勝手に話しかけるからねー。”


 お疲れっす。

 さて、このフロアの創りに慣れて行かないとな。先ずこのホール。玄関を背にして、右、左、正面にドアがある。こういうのは、まあ正面切って行くのが良いかな。どうせ全部回るんだし。


 がばっと、開けた先は普通に廊下が伸びている。広い。こりゃ迷宮という感じだな。そういえばダンジョンなんだっけ。左右には無数の部屋が。ドアが付いていたり、付いていなかったり。とてもじゃないが暗記できないな。マッピングする力も無いしな。何となくメインストリートがどこに続くかだけ見ておこうか…。

 お、早速モンスター発見!向こうから来るのは、ヘルハウンドだな。ヘルハウンドが…2、3、4、…6匹か。ちょっと多いな。でも、この前の俺みたいな規格外は少ない筈だし、ざっくりやっちまうか!

 ハイディングをしながら近寄るも、流石はハウンド、匂いで直ぐにばれたらしい。だが、機先を制したのは俺だぜ!

 「スリープ!!」

 がく、がく、がっくん。6匹のヘルハウンドどもはあっという間に眠りに落ちる。そりゃこんだけ魔力も知力も上がれば、スリープかけ放題でしょ?ナハト・コボルトで生まれてよかったよホント。さくさくと魔犬の首を刈って、魔石を頂く。あれ、齧れないな。かぼちゃなんだったか。そのまま顔の中の炎に溶かすことにする。魔石の上がりっぷりはどうかな?


・ヒュプノス

【種族】ジャックランタン LV.1(1/15)

HP 45/65

MP 57/80

攻撃:86(+15)

防御:35

魔力:40

知力:45

俊敏:39

スキル:ファイアブレス

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、ステータス

装備:グリムリーパー(攻撃+15)


 うむ、俊敏と攻撃がそれぞれ1ずつ上がる固定の魔石みたいだな。これは使いやすい。ヘルハウンドは最早同族では無いからな。ジャンジャン狩っていこう。


 探索に戻る。一番奥はT字路になっており、取りあえず右に進む。真直ぐの廊下に、部屋がいくつか。きっと宝箱とか、罠とかあるんだろう。だが、俺は道具を持つスペースも無いし、そもそも生活に何も必要ないのだから、別に部屋に入る理由は無い。待機場所としてどこか決めておいた方が良いかも知れないけどな。ホールでイチイチ冒険者と鉢合わせていては面倒だし。

 突き当りがまたT字路で、俺は左に進む。右は多分ロビーに続いてる感じだろう。そこで、左手の部屋からぬっと何かが顔を出す。すかさずステータスチェック!


オーク・キング

HP 80/80

MP 20/20

攻撃:90(+20)

防御:50

魔力:20

知力:20

俊敏:30

スキル:なし

スペル:アースウォール


 早速きたな、オーク・キング。っていうか強くね?オークソルジャーからの伸び率が凄いんですけど!魔力・知力は相変わらずみたいだが、なんか魔法も行けるみたいだし。油断ならねぇな。

「スリープ!」

 がっくん。膝を折るオーク・キング。うん、安定の睡眠。攻撃しているうちに目覚められるのもなんだから、手足の腱を鎌で切断。ブモッとか言って起きた所で首も切断。うむ、まともにやり合う必要などないのだ。今はまだ修行中の身なれば。オーク・キングの魔石は結構大きくてカボチャの口から入らないので、仕方なく目から入れる。行きつく場所は同じはずだ。でも、なんか変な感じだな。

 

・ヒュプノス

【種族】ジャックランタン LV.2(2/15)

HP 47/67

MP 54/85

攻撃:90(+15)

防御:36

魔力:42

知力:47

俊敏:40

スキル:ファイアブレス

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、ステータス

装備:グリムリーパー(攻撃+15)


 レベルアップしてしまったからイマイチ伸び率は解らないけど、どうやら攻撃力+3という所かな?これも美味しいな。今までの階層のモンスターより強いから、そりゃそうなんだろうけど、中々こう強くなっていくって嬉しいものがあるね。

 突き当りは左に折れる道が一本。そこでヘルハウンド2体を倒し、さらに奥へ進むと、いかにもな感じの扉が廊下の左手に現れた。

 これは、やっぱ開けて中を確かめとこうかね。

 俺はゆっくりとドアに手をかける。ギギギッとその扉を開くと、奥には階段。あれ?次の階層行けちゃってもいい感じ?ひとまとまりのフロアっていう認識なのだろうか。まあダンジョンの造りについては俺の知る範疇でもないか。どちらでも構わない。


 階段を出てから右に折れ、そのまま時計回りにフロアを一周して解ったことは、2階は1階のホールを除いたコの字型のような造りをしている、ということ。道順は割と単純で、1階と殆ど同じだ。あ、ホールが地上4階ほどの高さだったってことは、4階までは一体型のダンジョン・フロアなのかな。そんなことを考えつつ、3階への階段を探していく。と、1階ホールの右の扉の上あたりに、3階への階段があることが解った。解ったには解ったのだが、その階段の前の廊下には、いかにも強いです!という雰囲気のモンスターが床にゴロンと寝転がっている。

 あれは何かね?中ボスみたいなものかね?


“ああ、ああいう奴が、この先のフロアでは出てくるようになってるよ。何か冒険者に簡単に先に進まれるのは癪でしょー?倒しても満月が上がる時には補充されるように出来てるから、結構助かるんだよ。”


 あれは、階層主では無いの?


“うん、階層主はね、もっと大分派手だよ。あんなジーミーな感じじゃ無いんだから!”


 ふーん、結構アレで派手だと思うけどな。俺の目の前に寝そべっているのは、ガルムという魔獣らしい。真っ青の毛並みに所々白が混ざっていて、なんとも美しい。だがそのステータスは今の俺にはかなり厳しい。


ガルム

HP 150/150

MP 110/110

攻撃:120

防御:75

魔力:50

知力:52

俊敏:70

スキル:ファイアブレス

スペル:ブレイズウォール、クイック


 取りあえず2階まででレベルアップに励め、という事かな。ガルムに挑んでる冒険者を後ろからチクチクやるのもいいかもしれない。この2階の階段前はかなり広いしな。

 そんなわけで、階段前ホールから一度廊下に戻ると、バサバサと奥から羽音が。みれば、鳥のようなモンスターがこちらへ飛んでくる。

 が、見た目がちょっと、何というか、全裸の女だ。黒髪を腰まで伸ばした全裸の女、の手が翼になっている。顔は、結構カワイイ。うう、目のやり場が…取りあえずステータスを見る振り。


コカクチョウ

HP 50/50

MP 30/30

攻撃:55

防御:40

魔力:31

知力:29

俊敏:62

スキル:ウィンドブラスト

スペル:ウィンドアロー


 うわ、俊敏が割と半端ない。今の俺では追い付けん。スリープは、この高速移動には不向きか…と思っていたらもうこちらまで飛んできていた。全裸の女の足に思い切り蹴られる。ゴンッ!俺のカボチャ頭が揺れている。

 うぐぐ、こういう狭い場所では…そういえば新しい魔法使って無かったな。

「ブレイズウォール!」

 瞬間、赤い障壁が廊下全体を包み込む。敵の居る位置を補足して起こる魔法だから、廊下全体が効果範囲になったわけだな!

 「ぎゃあああ!」

 ってまるっきり人間の叫び声だな。ホントにやりにくい。ある意味冒険者よりやりにくい。いや、冒険者の女とか出てきたらやっぱりやりにくいんだろうなぁ…女の子には手を上げちゃいかんって、前世からずっと思ってきたからなぁ…

 コカクチョウが炎から落ちてきたところで、一思いに鎌でざっくりやる。悪く思うなよ。俺も今はただのカボチャに過ぎん。人間型だから容赦するわけにはいかんのだ。

 なんつって、コカクチョウの魔石はしっかりと頂く。


・ヒュプノス

【種族】ジャックランタン LV.2(2/15)

HP 35/67

MP 44/85

攻撃:90(+15)

防御:36

魔力:42

知力:47

俊敏:42

スキル:ファイアブレス

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、ステータス

装備:グリムリーパー(攻撃+15)

 

 うむ、これは俊敏+2のようだな。俺の上がりにくいステータスを抑えてもらって、大助かり。もしかしてベネルフューゲルはこのことも知ってて俺にジャックランタンを勧めてきたのでは?だとするとやっぱり神様だね。

 さて、何気にHPが注意喚起レベルだな。どこかの部屋でゆっくりして、少し回復を待つとしよう。






「ところで、海の神アンティオキア。またどうして僕のところに来たんだい?この前もカルカベキアが来たばかりだけど、君たちはどうも腰を落ち着けるってことが出来ないみたいだねぇ?」


 ベネルフューゲルはワインを片手でくゆらせながら、足を組んでそのようなことを言う。何もない空間には、いつの間にかソファセットが用意されたり、薄暗がりに明かりがセットされて良い雰囲気が演出されたりしている。


「いや、これが急ぎでな。実は我々の連れている異世界の眷属同士を一堂に会して、親睦を深めよう、という運びになって来てな。」


 その言葉に顔を顰める夜の神。


「運び、じゃなくてあんたが言い出したんでしょうが。人の所為にばかりしていると、いい加減信頼を失うわよ?」


 いつものふざけた口調を一変させ、本来の顔を見せるベネルフューゲルだが、海の神はどこ吹く風だ。


「まあそう言うな。どのみち異世界から招いた眷属たちは今後、あ奴が召喚した異世界の勇者共と闘うことになるのだ。場合によっては、共闘などもあろう?その時のための顔合わせだよ。なに、別に闘ってどうこうしようというのではない。別に良かろう?」


「だがな、僕のところのヒュプノスはまだまだこちらの世界に来たばかりだ。はっきり言って、この世界の置かれている状況など何も解らないのだぞ。」


 にやり、と笑うアンティオキア。


「それは、我等とて同じこと。お互いの名が知れてさえいれば、今後の本格的な戦争も乗り越えられよう。どうだ?」


「ふん、提案自体は気に食わないが、同じ異世界人同士話が合うやも解らない。参加はしよう。ただし、お互いの戦闘は無しだ。僕としても、カワイイ眷属が無闇に傷つけられるところは見たくない。」


「よかろう、ただし、その場の余興で他の神から申し出があった場合は、私も止められるか解らないから、そのつもりでな。」


 ニヤニヤと笑うアンティオキアに、ウンザリとした様子のベネルフューゲル。

(まだ勇者が生まれたかどうかという時期から、ゼノンを追い落とした後の工作か。お互いの手の内の探り合いをこんな時期から始めるとは、このタヌキも大概、隅に置けないわね。)

 取りあえず、勇者との戦いになったとしても、アンティオキアとの共闘は様子見だ。こんな輩、いつ背中から刺されるか解ったものでは無い。そう決めるベネルフューゲル。


「それで、会場はどうするつもり?」


 夜の神は話を切り替える。


「参加する神々がフィールドを形成して、そこに集まろうと思う。ゼノンの出入りは出来ないし、感知されたところで今更であろう?」


「勇者が思ったより早く仕上がっていたらどうするんだい?」


「心配には及ばぬ。その時は風の神の使いが全員に知らせてくれる手筈になっておる。」


 嘘をつけ。今から風の神の説得に頭を垂れに行くんだろうが。全く下衆な神だ。これで慈悲深く鷹揚な海の神、というのだから笑わせる。

 古い付き合いのベネルフューゲルは、この神と話したことで溜まった鬱憤を解消するかのように、ワインを一気に飲み干すと、


「良くわかりました、それでは御機嫌よう。」


 というと、空間ごと海の神にお帰り頂くのだった。







 今日も今日とて、ヘルハウンドの魔石狩り、と。最近はレベルアップは緩やかだけど、魔石が優秀でかなりいい感じだな。ガルムには届かないけど、まずまずの仕上がりだろ。


・ヒュプノス

【種族】ジャックランタン LV.5(5/15)

HP 72/72

MP 100/100

攻撃:106(+15)

防御:39

魔力:48

知力:57

俊敏:59

スキル:ファイアブレス

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、ステータス

装備:グリムリーパー(攻撃+15)


 防御力をどうにかしたいんだけどなぁ…この身体じゃ、後この辺のモンスターの魔石じゃこれが限界か。

 ん?お客さんか?

 俺は自分の根城にしている1階の左奥の部屋から外を伺う。カボチャの顔から火が出ていて目立つだけに、ハイディングは必須だ。

 そうすると…げっ、出た。女冒険者3人組。マジで困るんだよなーこういうの。何とかしてお帰り頂きたい。女性殺すのはちょっと俺にはつらいよー。

 マジでどうすっかな。俺は無駄に窮地に立たされた。

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