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冒険者との死闘。

 なんか、一階があわただしいな。耳をそばだてて、様子を伺う。


「おい、このあたりだろう?」

「ああ、間違いない。外見はヘルハウンドらしいが、目くらましを使うってことだ、気を付けよう。」

「わーってるよ。懸賞金がこんな浅いとこでかかってるんだ。逃がしやしねえさ。」


 冒険者が来てるな。ヘルハウンドで目くらましって完全に俺のことだよな。どこで漏れたんだ?冒険者相手なんてあの三人にしか…あれ?俺、最初の膝関節潰した奴、止め刺したか?あいつが情報持って帰ったとしたら、こういう状況も納得いくな。

 それにしても、冒険者の数が多い。全員はとても相手にしてられないな。ステータスから見るとこの前の連中とあまり変わらないようだが…賞金欲しさにやって来たってわけか?


“あらあら、なんか面倒事を起こしたの?”


 あ、神様。冒険者パーティの一人を始末し損ねて、俺の情報が人間どもに流れてしまったらしい。ちょっと俺一人じゃ厳しいかも知れない人数が来ちまったわ。


“ここが踏ん張り何処だね。僕としては援護をしたいところだけど、生憎干渉出来る要素が少ないんだ。モンスターの数を少し増やすくらいなら出来るから、それで上手くやってね。”


 それだったら、オーク・ソルジャー多めでお願い!あいつらの魔石で即席で攻撃力上げっから!


“ん、ある程度はモンスターの種類もコントロールできるから、やっておくわ。オーク・ソルジャーでいいの?ヘルハウンドの仲間とかじゃなくて?”


 うーん、どうせ全員と戦うなら、全部経験値頂いちゃいたいからさ。状態異常と力押しで、冒険者は全員始末してしまおうかと。そしたら、多分この階層から移動できるくらいレベルも上がるでしょ?どうかな?


“結構ギリギリの策だけど、まあオーク・ソルジャーも冒険者と戦う訳だし、いいんじゃないかな。ちょっと心配だけど、頑張ってねー。”


 ぐん、とモンスターの気配が濃くなった。取りあえず俺はこの城塞砦2階の奥の廊下で、オーク・ソルジャーを食いまくることに。戦闘?しませんよ。スリープとハイディング全開で使います。奴らは頭良くないから、スリープもかかるし、ハイディングだけでも無傷で仕留められる。攻撃力も馬鹿みたいに上がったしね、人間の冒険者相手にはもう少し馬力が欲しいから、オーク・ソルジャーの魔石は一つでも多く食べておきたいところ。お、早速来たね、廊下の奥から5匹だ。ダーククラウドがもし冒険者の目に付いたらまずい。ハイディングで一気に近寄って、蹴散らすぞ!

 斬!と右足の爪で縦に頭を切り裂くと、一匹目のオーク・ソルジャーが絶命する。他の連中はブヒブヒ言って剣やら槍やらを振り回しているが、まだ見つかってないみたいだな。

 斬、斬!今度は足元を狙って2匹を攻撃する。片足を切断され、呆気なく崩れ落ちる。あれ、俺の攻撃力大分上がってるみたいだな?オーク・ソルジャー相手なら、ハイディング要らないかも。まあ、この後の闘いも控えてるから、その辺は無理せず行こう。

 ザク!ザク!ザク!残りのオークソルジャーの首を掻っ捌き、全員が霧に還ったら、手早く魔石を頂戴する。ボリボリ。うん、良い稼ぎだな。神様もいつもこうするわけにも行かないんだろうけど。ステータスはどんなかしら?


・ヒュプノス

【種族】ヘルハウンド LV.5 (5/10)

HP 54/54

MP  36/36

攻撃:60

防御:23

魔力:21

知力:24

俊敏:30

スキル:ファイアブレス

スペル:スリープ、セルフバーニング

加護:ハイディング、ダーククラウド、ステータス

 

 うん、攻撃が良い感じに伸びてきた。レベルは折り返しか。あとひとつくらい群れを潰せたら、いっちょ冒険者たちに当たりますか!

 俺は2階の回廊を素早く移動していく。ハイディングは常にかけたままだ。遠くでオークの叫び声と、人間の剣戟が聴こえる。まだ1階を回ってるみたいだな。こっちに来るには暫くかかる筈だ。

 …居た、オークソルジャー、ここも5匹。入れ食いだな。俺はほくそ笑むと、群れに突っ込んでいく。攻撃力60は伊達ではなく、オーク・ソルジャーの鎧ごと切り裂くほどの威力を持ち始めた。これなら、心配いらないな。ザク!ザク!ザク!物凄い勢いでオーク・ソルジャーを始末すると、魔石をかじる。魔石って結構うまいよな。金平糖みたいというか。病みつきになって来た。ステータスは?


・ヒュプノス

【種族】ヘルハウンド LV.5 (5/10)

HP 54/54

MP  36/36

攻撃:70

防御:23

魔力:21

知力:24

俊敏:30

スキル:ファイアブレス

スペル:スリープ、セルフバーニング

加護:ハイディング、ダーククラウド、ステータス


 うん、レベルは上がらなかったか。でもこの攻撃力なら、ごり押しで行けるだろう。俺はロビー付近まで走って回っていく。と、ちょうど冒険者の第一陣が階段を上がって来た!ステータスをチェック!


冒険者

HP 40/54

MP  15/15

攻撃:35(+15)

防御:35(+10)

魔力:10

知力:15

俊敏:20


冒険者

HP 56/56

MP  20/20

攻撃:20(+5)

防御:20(+10)

魔力:20

知力:25

俊敏:15

スペル:アイス・アロー


 ふむ、魔術師と戦士の組み合わせの様だ。戦士はちょっとしたけがを負っているな。ダーククラウドは見せると他の冒険者も呼ばれそうだ。ハイディングで一気に仕留めるぞ!

 俺は前衛の戦士へと一気に詰め寄り、爪による斬撃をお見舞いする!戦士が空間から突然飛び出してきたように見える俺に面喰い、長剣をガードに構えようとするが…ガィン!それを弾いてそのまま足首に噛み付き、骨を砕く!ぼきぼきと強烈な音が鳴り響き具足ごと冒険者の右足が砕かれる。


「ぎゃああああ!」

「今助ける!」


 隣の魔術師がアイス・アローの詠唱を始めるが、遅い!俺は直ぐに肉薄し爪の一撃を袈裟懸けに振るう。その爪は魔術師のローブを簡単に引き裂き、強烈な深手を負わせる。


「ぐはっ」


 その場に倒れ込む魔術師。戦士の方も足首を折られ、身動きが出来ない。俺は確実に仕留めるため、瀕死の連中に爪をお見舞いした。斬!

 うん、やっぱり後味は良くないが、大分慣れてきた。命の奪い合いだからな。甘いことは言ってられない。さて、ロビーまで回り込むと、他の冒険者集団はまだ一階を回っているようだ。広いところでの戦闘は避けたい。俺は一階の回廊を回ってしらみつぶしに冒険者達を倒していくことにした。


「居たぞ!ヘルハウンドだ!」


 げ!ハイディングを使ってたのに普通にばれた!どうやら特殊な能力を持ってるやつが居るな?シーフか何かか?ともあれ相手は3人。ステータスは、さっきの連中と変わりなしだ。魔術が無い分楽かもな!

 俺は一気に距離を詰めながら、ダーククラウドの発散させる。が、奴らは何か対抗する道具を持ち込んできたらしい。俺の霧が一気に晴れていく。

 しゃあ無い、奥の手だ。スリープ!俺はまず俺の事が見えているシーフにスリープをかける。これを先日の戦闘で使わなかったのは良かったな。案の定睡眠の状態異常に対する対策は不十分だったみたいで、がっくりと膝を折ってその場で眠り始めるシーフ。

 そいつは放っておいて、俺はハイディングをかけながら残り2人に肉薄する。他の2人も若干俺のことを目で追えているらしく、一人目は初撃の爪にバトルアックスを合わせてきた。だが、その後の一撃を予測できず、お決まりになって来た足元への噛みつきで膝を砕かれると、その場で倒れ込んだ。続く最後の1人は棒術で俺の牙を防ごうとしてきたが、何しろ姿が見えない俺に手間取り、数合きり結ぶ間に全身に傷を受けて倒れ伏した。

 寝てる盗賊と、膝が折れた戦士に止めを刺し、次へ向かう。


 よし、これで2パーティを始末した。残っているのは後何人だ?いや、何人だろうと関係ない。全員、俺の血肉になってもらうぞ!


 次の角を曲がると、こちらに後ろを向けるようにして歩いている冒険者パーティが3人。ステータスは…並だ。先ほどと変わらない。後ろからがっつりスリープをお見舞いして、仕留める。楽勝!

 1階は回り終え、もしや全員倒したか?と思ってホールに戻った時、ゾクリとした感触で身の毛が逆立つのを感じる。反射的に左へと跳躍すると、俺が一瞬前まで居た場所に数本の矢が突き刺さる。アーチャーか!?辺りを見渡すと、ロビー2階で3人のアーチャーが矢を番え、俺を狙っているのが解る。ハイディングをしているのに見える辺り、かなり腕が立つな!走りながらステータスをチェックする。


冒険者

HP 50/50

MP  18/18

攻撃:42(+15)

防御:30(+10)

魔力:10

知力:15

俊敏:32


冒険者

HP 45/45

MP  15/15

攻撃:48(+15)

防御:30(+10)

魔力:15

知力:17

俊敏:30


冒険者

HP 50/50

MP  12/12

攻撃:45(+15)

防御:32(+10)

魔力:12

知力:20

俊敏:33


 おいおい、全員俊敏が俺と同じレベルか!しかもあの矢の威力!2,3発で死んでしまうぞ。アーチャーの位置は互いに等距離になるようにホールの吹き抜けをぐるりと囲む廊下に3点に散らばっている。一人が狙われても、その背後から俺を狙う算段だ。かなりの腕前があるからこそできる陣形ではあるな。ただ、最初の一撃で仕留められなかったのは誤算だっただろう。俺が2階まで上がってしまえば、奴らとしても同士撃ちしかねず、やりにくい筈だ。

 ハイディングが効かない以上、セルフバーニングを身体に施すと、先ずは一人目に向かって真直ぐに迫る。が、俺と同じ敏捷性を持つアーチャー達は、付かず離れずの距離を保ちながら、次々と矢を放ってくる。これは完全に奴らの手の内だ。まずいな、打開策を考えなければ。少なくとも、走っているうちは的にはなりづらい筈だ。動きながら考えろ。

 次々と飛来する殺人的な威力の矢。このスピードでは、ファイアブレスは避けられてしまうだろう。ダーククラウドは距離的に難しい。スリープは?動いている相手には厳しい。逡巡するが、妙案は思い浮かばない。ジリ貧。考えても仕方ない、か?


 ここは…捨て身の一点突破だ!


 俺は一番敏捷の低いアーチャーに狙いを定め、一直線に奴に迫る。当然、背後から2本の矢が斜めに放たれようとするが、そこでダーククラウドを展開。俺の身体を包むように煙幕が現れ、一瞬だけ奴らの視界から俺の姿が居なくなる。

 ここしか無い!俺は一人目のアーチャーの至近距離に漸く近づくと、セルフバーニングの炎をお見舞いしながら、爪で薙ぎ払う。ガキン、と言って爪と奴が咄嗟に持ち出したダガーがぶつかり相殺されたが、それでも炎のダメージはがっつりと奴に入っている。スピードが目に見えて鈍くなった相手に思い切り爪を突き立てて止めを刺す。斬! 

 俺が止めを刺すと同時に、俺の足に矢が突き刺さる!ぐう、痛ええ!だが、後二人。

 俺は最速で次の得物に狙いを定める。相手はロビーの回廊左に居る奴だ。そうと決まるや否や、走りながらファイアブレスを相手に向けて直線に放つ!轟!だが、敵の俊敏はそのスピードを超えている。素早くロビーの空中へと飛び出して、ファイアブレスを回避する。

 だが、そいつは悪手だ。こちらを向いていた相手は右手が壁だったのだから、俺はファイアブレスを放った瞬間に斜め右のロビー空間へと飛び出せば良かったわけだ。まさかファイアブレスの直撃は受けるまいと踏んだ俺の予測が勝って、相手は空中で俺の爪を受け止め、地面に叩きつけられた。

 俺はそいつが死んだかどうかも確かめず、すぐにその場を離脱する。と、俺の直ぐ背後に矢が突き刺さる。残りは一人!

 俺は一階から三角飛びの容量で素早く2階の回廊へ駆け上る。同時に、ダーククラウドを発現。目くらましに使う。その暗黒を抜けた先、眼前には矢を番えた最後の1人。奴が矢を放つが…遅い!俺はギリギリ矢の軌道の下を掻い潜り、そのまま右腕の爪を下から振り上げる。ザクッ 子気味良い感触がして、アーチャーが縦に真っ二つに切り裂かれる。おいおい、いつの間にかまた攻撃力上がったな?戦闘の途中でレベルが上がったか。


ピロリン!


 最後の1人を倒すと、ベルが鳴った。よしよし、最高レベル到達だな。


・ヒュプノス

【種族】ヘルハウンド LV.10(10/10)

HP 19/60

MP 20/40

攻撃:77

防御:27

魔力:25

知力:30

俊敏:35

スキル:ファイアブレス

スペル:スリープ、セルフバーニング

加護:ハイディング、ダーククラウド、ステータス



 これでこの砦から次のステージへ移れるぞ。ここに冒険者がまたぞろ集まっても問題ないってわけだ。それにしても、レベルアップ早いな。これなら、すぐに階層主とかなれんじゃね?どうよ?


“だんだんモンスターのレベルも上がってくるけど、階層主はまだまだ難しいよー。それと、ヒュプノス君には最深部の階層主を目指してもらってるからぁ、間違っても途中で階層主選んじゃだめだからね!”


 おう、神様聞いてたのか。所で、それはどういう意味だ?


“進化先に階層主が出ることがあるけど、まだまだ選んじゃダメってこと!階層主に一度なると進化が止まっちゃうから、気を付けてねー。”


 へぇ、それは、楽しみ半減だな。注意しとこう。それで、次の進化リストはっと。ステータスをスライド。


・ジャックランタン(火)

・スチュパリデス(風)

・オーク・キング(土)

・ウェンディゴ(水)


 おいおい、ジャコランタン、戦えるのかよ?スチュパリデス?発音ムズイな。そしてオークはしつこいな。キングまで来たら、お役御免まであと少しかな。ウェンディゴ、これも解らんな。結局イメージが全然つかないんだが。


“ジャックランタンは、君の知ってるやつだよ。デフォルトで鎌を装備してるから、近接戦闘もそれなりに行けるし、空も飛んでるから割かし強いんだぞー。スチュパリデスは、青銅の翼・爪・胴体を持った鳥だね。攻守にバランスがいい。オーク・キングは…まあいいとして、ウェンディゴは冬の巨人。角の生えたシロクマみたいなやつだね。攻撃力は随一。スピードは落ちるかな。”


 これ、ファイアブレスとか、セルフバーニングとかは、ウェンディゴは使えないのかな?


“一応使えるけど、あんまり威力は出ないよ。属性が逆だとどうしてもね。”


 うーむ、攻撃力ごり押しでウェンディゴで行こうかと思ったが、炎系スキルが使えなくなるのは、ちょっと勿体ないな。せっかく俊敏も上げたし…ここはスチュパリデスかな?


“ジャックランタンじゃなくてイイの?”


 いや、スチュパリデス、かな?


“ジャックランタンじゃなくて、いいの?”


 …なんだ、ベネルフューゲル、粘るな。わかったよ、ジャックランタンにするよ。鎌もちゃんとつけてくれよな。


“やったね!あれはデザインが可愛くてさぁ、僕のお気に入りなんだよ!でも本当に強いから、安心してねー。今からこっち呼ぶから、ちゃっちゃと進化しちゃいましょう!”


 はあ、完全に神様に押し切られたな。今後は気を付けよう。俺も可愛いキャラで突き進むつもり無いし。


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