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激突。

“あー、羅刹さん?”


「何だ?」


“こいつら、どうにかしてくれませんかね?”


 一晩経って、起きてみたら、オーガ・キング共に囲まれていた。

 え?どゆコト?と思いつつ、襲い掛かってくるオーガ・キングの攻撃を避けていく。


「そ奴らは一晩で復活する。まあ、適当に相手をしておったら良い。」


“いや、というかですね、敵意むき出しなんですけれども”


 ブォン!と音を立ててスレッジ・ハンマーが俺の横を通り過ぎる。オイオイ、当たったらマジでシャレにならんぞ。


“これ、掃除してしまって構いませんか?”


「好きにせよ。どのみち、我とお主が居れば、冒険者などモノの数ではあるまい。」


 はあ、それは俺の実力を若干買いかぶっているかと思いますけれども、まあ、そうおっしゃるなら。

『スリープ!』×5

 オーガ・キングに安眠を。安らかに眠るが良い。

 カラン、と大きめの魔石が落ちる。うむ、オーガ・キングの魔石が頂けるのは極めて有り難いね。とは言え、これから冒険者がのぼってくるまで毎日こいつらを相手にすることになるのだろうか…面倒だな。

 俺はボリボリと5個の魔石を金平糖の様に齧る。うむ、最近魔石が美味しく感じ始めた。この味は…氷砂糖に似てるよな。ステータスを一応チェック。


・ヒュプノス

【種族】バルロッグ LV.18(18/20)

HP  249/249

MP  245/260

攻撃:298(+25)

防御:144

魔力:161

知力:175

俊敏:146

スキル:ファイアブレス、フェザーショット

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル、ウインドカッター、クイック、ドレイン、アブソーブ

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、影縫い、ミミック、ステータス

装備:バスタードソード、カザックナイフ


 うむ、攻撃力がドンドン突き抜けていくな。オークといいオーガと言い、どうも攻撃ばかの魔石ばかり好んで食べていると、こうなってしまうのは仕方ないことか。だって倒すの楽なんだもん。


「相変わらず卑怯な戦いぶりよな。」


“ひ、卑怯!?…狡猾、と言ってください。”


「ふむ、まあ良かろう。それより、Bランクの冒険者は下のモンスターハウスを突破したようだ。いよいよ我々の所にやってくるぞ。」


 ギイイィ、と真っ白い牙を見せ、凶悪な笑みを見せる羅刹。


「このダンジョンが出来てからというもの、中々骨のある冒険者とぶつからなかったからな、ようやく我が手加減なく腕を振るえる相手が来たか!」


 うーん、これ、もう俺の存在要らないんじゃないかな。全部羅刹がやっちゃってくれるのではないだろうか。俺としてはそれで特に未練も文句も無いのだが。

 ま、冒険者の強さも良くわからんので、羅刹に前衛を任せて、俺は後衛でチクチク魔法でサポートするかな。





 20階層。漸くここまでたどり着いた。お目当てのバルロッグは未だに姿を見せない。本当に存在するのか?とっくに他のパーティが依頼を達成しているんじゃないのか?そうも思うが、バルロッグの生息域が10階~20階という事を考えると、ここを調べておかない手は無い。

 それにしても、このダンジョンは中々にハードだ。俺たち「草原の狩人」は成りたてとはいえBランクのパーティ。Cランク相当の依頼に苦労することなど無いだろうと思っていたのだが…いかんせん、このダンジョンのモンスターは強い。ダンジョンのトラップが殆ど存在しない代わりに、モンスターがやたらと強い。ウィトゲンシュタインのギルドは出来て日も浅いというからそのランク付けに多少問題があるんじゃないだろうか?俺たちの活動していたヘルフリート周辺には複数のダンジョンがあったけれど、Cランク相当の依頼でこんな強烈なモンスターの群れ、相手にしたこと無かったけどなぁ。

 ま、トラップが無い事がランクに影響してるのもあるんだろうけど…ちょっと今回は貧乏くじ引いたかもしれないな。だからと言ってCランクの依頼を俺たちが達成できないなんて有り得ないし、なんだかんだで最終階層までは登って来たのだし。


「おい、バーンズ、いつまで考え事してるんだ?」


 俺がボーっとしている間に声をかけていたのか、右の眉を上げて顔を顰めているのはコンラッド。パーティの盾役だ。


「ああ、コンラッド、悪い。19階のモンスター共が思いのほか位きつかったからな。ちょっとギルドの依頼のランクに愚痴が言いたくなっただけさ。」


 俺は思っていたことを口にする。それを聴いたアーチャーのビリーが、笑いながら話す。


「はは、ギルドのランクに物申したい、っつうのは違いない!それを通じて、受付嬢にアタックだな!」


 軽口をたたくビリー。少し疲労の色が見え始めたパーティを思っての事だろう。みんなの気持ちをリフレッシュするために、大げさに明るく振る舞っている。


「ねえ、みんな、そんな事より、正面見て。真直ぐな廊下に、デカい扉が一つ。あんまりいい予感しないわね。」


「ああ、マーガレット。見えてるよ。階層主、が出るのかもな。」


 俺たちは遥か前方を見やる。そこには蔦の絡まった巨大な木製の門が一つ。そして、その左右には細い抜け道のような通路が見える。


「左右の通路にお目当てのバルロッグが居る…ってことは、無いんだろうなぁ。」


「もし他のパーティが仕留めてないんなら、この扉の奥に控えてるでしょうね。」


 俺たちはその巨大な門の前で足を止める。まるで何百年とそこに佇んでいたかのような威容を誇る、巨大な木製の門扉。しばしその前に立ち止まり、見上げる。


「…本当に、出来て間もないダンジョンなのかよ。」


 ビリーが呟く。俺も、そう思う。このダンジョンは1年前に忽然とこの場所に現れたと言われている。それにしては、妙に古めかしく感じられた。


「みんな、準備は大丈夫か?装備品のチェック、体調は万全か?」


 俺はみんなに確認の声掛けをする。この扉の奥には明らかに今までの相手より格上の存在が控えている筈だ。中途半端な状態ではあっという間に命を奪われてしまいかねない。出来ることはやっておく、それに越したことは無い。

 皆の確認が終わると、俺たちは重そうな扉を4人がかりで押し開けていく。





 ギギギッ と扉が開かれ、4人の冒険者が姿を現す。

 対する俺たちは、何故か部屋の中央に俺で、羅刹は後方の玉座に収まって肘など付いていらっしゃる。あれ?これ、俺が一人で闘うパターン?


「フハハ!よくぞここまでたどり着いた!冒険者達よ。我はこの階層を治める主、羅刹!久々に骨のありそうな来客だ!手厚く持て成そうぞ!」


 王座から立ち上がり、諸手を拡げると、そのような口上をのたまう羅刹。ああ、言いたかっただけね…。何か、こういう儀式的なもの大事にしそうだし。騎士道精神?知らんがな。

 羅刹は言うが早いかその場から飛び上がり、俺の上を通り過ぎて土埃を巻き上げ、地面を盛大に揺らしながら着地した。うん、怖い。俺だったら真っ先に逃げる。冒険者諸君も、逃げたまへ。

 とか思いつつ、ステータスを確認する。


冒険者

HP  221/221

MP  180/180

攻撃:273(+30)

防御:205(+30)

魔力:142

知力:146

俊敏:157

装備:グラディウス、アイアンメイル


冒険者

HP  283/283

MP  142/142

攻撃:250(+25)

防御:265(+50)

魔力:132

知力:138

俊敏:115

装備:クレイモア、アイアンシールド、プロテクトスーツ


冒険者

HP  221/221

MP  180/180

攻撃:227(+30)

防御:178(+20)

魔力:152

知力:155

俊敏:187(+10)

スペル:ウインドカッター、クイック

装備:トネリコの弓、風の装束


冒険者

HP  201/201

MP  265/265

攻撃:132(+30)

防御:173(+20)

魔力:192

知力:188

俊敏:123

スペル:ヒール、エリアヒール、ルミナス・レイ


 おおう、マジで強ええ。俺一人じゃどうにもならないレベルで強ええ。羅刹さん手伝ってくれて有難う。


 羅刹が着地すると同時、前衛の2人が動き出す。戦士風の男は剣を構えて直線に羅刹に向かい、もう一人の全身鎧はそのすぐ背後にスタンバイする。全身鎧の奴が守って、そこから戦士が切り込む、っていうスタイルの様だ。

 俺の初手は、『クイック』!先ずは自分に、そして、もういっちょ『クイック』!これは羅刹のおっさんに。これで筋肉ダルマなスピードキングの出来上がりだ!

 

「ほう、異世界の眷属よ、これは中々に面白いな!」


 口角を上げた羅刹が、戦士風の男の剣を硬質な腕の表皮ではじきながら喋る。剣は浅く羅刹の腕を傷つけるが、羅刹は角度を上手く付けながらまともに受けないようにその剣先をさばいていく。そして、お返しとばかりに丸太のような腕を振るう!

 ガギン、という硬質な音とともに、全身鎧の男が羅刹の拳を受け止める。流石、防御力がかなり高い様だし、闘い慣れている。戦士との息もバッチリ合っており、羅刹の拳をもってしても大きなダメージを与えるには至っていない。

 盾と拳がぶつかって一瞬硬直する羅刹に向かって、別の方向から矢が放たれる。アーチャーだ!その矢を後退しながら避ける羅刹。流石のスピードキングぶりだが、相手のスピードもかなりのものだ。

 このまま羅刹の体力を削られるのは得策では無い。闘いに動きを付けねば!『スリープ』!

 俺は盾役にスリープをかける。奴は魔力・知力とも低めの為、スリープにはかかりやすい。前衛の動きが乱れる。そこへ羅刹のストレートが炸裂!盾役は後方へとぶっ飛んでいく。


「コンラッド!」

「大丈夫よ!ヒール!」


 回復役の女が盾役のコンラッドをすかさず回復。クリーンヒットした羅刹の一撃が無かったことにされてしまう。回復役のMPはかなりのものだし、厄介だな。


 ヒュッ


 っと、俺は顔を逸らして矢を回避する。アーチャーがこっちにも目を付けてきたな。俺のスピードじゃ奴に追いつけない。近接戦に持ち込むのは難しそうだ。俺はアーチャーに牽制のファイアボールを撃ちこんでいく。それらはしかし、俊敏の高いアーチャーに簡単に交わされ、中々充てるに至らない。

 それに、アイツのあのキラキラした輝き。もうすでにクイックを使用してるな。これは捕まえるのは無理そうだ。

 俺は奴に近づくのは諦め、ファイアボールを視認しにくいウインドカッターへと切り替えて牽制をかけて行く。そして、奴の意識が逸れた所を見計らってヒーラーへと近接戦を仕掛けるために距離を詰めていく。


「させるかよ!」


 アーチャーはウインドカッターを回避し、体制を崩しながらも的確に弓を放ってくる。俺はその弓を両手の剣で撃ち落としていくが、そうしている間にもヒーラーは移動し、中々距離を詰めることが出来ない。

 手詰まりだ。ここはひとつ、アーチャーにブレイズウォールを使って足止めだ!

ゴォウ!と強烈な爆音を響かせ、アーチャーを中心に地面から炎の柱が幾本も生えていく。


「んなっ!?バルロッグがブレイズウォールだと!?しかもこの威力、普通じゃねぇ!」


 両腕をクロスして顔に押し当て、必死に炎熱から身を守るアーチャー、だが、動きが止まったな!

俺はアーチャーの事はまず放置して、ヒーラーへと肉薄する。そこへ、身体を入れてきたのが戦士。


「バーンズ!」

「そう簡単にやらせるかよ!」


 俺が袈裟懸けにバスタードソードを振るうと、それを両手持ちのグラディウスで受けながら、弾いてくる。そして巻き付けるように俺の剣を弾くと首目掛け鋭い刺突を放ってくる。

 ヒヤリ、と冷たいモノが首筋を伝う。ギリギリのところで頭を横に振り、直撃を躱す。奴が返す刀で首筋を狙う。迫りくる白刃!俺はそこで至近距離からファイアブレスをお見舞いする!


ドゴオオオン!


 巨大な火柱が放たれ、バーンズという戦士が後方へ吹き飛んでいく。かなりのダメージを与えた筈だ。とは言え俺も無傷じゃない。首筋から肩にかけて、ざっくりと切られてしまっている。すかさず回復をしようとして、


 ドズッ


 背後からアーチャーの弓が刺さる。

 ぐ、しまった。意識を戦士の方へ向け過ぎた。ブレイズウォールが切れてたか。

 俺は回避動作をしながら、矢じりを無理やり引っこ抜き、自分のHPを確認する。痛ってええええ!ついこの前までバリバリのインドアだった俺に、矢じりが刺さるとかどんなカオスだよ!

 それにしても、HP、何とかつないだか。残り100前後だが…『ドレイン』!

 羅刹の拳で防戦一方になっている盾役にドレインをかけ、体力を回復する。こいつは魔法防御が低い。吸い放題だ。


“羅刹の旦那、流石に俺1人で3人相手はきつい。早いとこそいつをどうにかしてくれ!”


「うん?なんだ、我は今楽しいところなのだ、邪魔するでない!」


 …だめだ、旦那は中々壊れない玩具に夢中だ。


「二人とも、酷いやけどだわ。一度一か所に集まるわよ。」


 ヒーラーが戦士とアーチャーの2人に師事を出してる。アーチャーが俺に牽制をかけながら、ヒーラーの下へと駆け寄る。戦士はファイアブレスの直撃でかなり動きが鈍っているようだが、HPを見るところあと2,3発ぶち込まなければ倒せないだろう。

 

「エリアヒール!」


 ヒーラーが呪文を唱えると、キラキラと地面が放射状に輝き始める。その中に待機していた二人の仲間は見る見るうちに火傷が塞がり、外傷が回復していく。

 おいおい、本気であのヒーラー厄介だな。


「ヒール!」


 続いて、前衛のコンラッドにもヒールをかける。まずい、振り出しに戻っちまった。俺の傷もドレインでかなり回復しているが、敵さんも同じような状況。

 だが、さっきより勝機は見えてきてる。俺の手札が増えたからだ。


 アーチャーと戦士は再び散開、戦士は羅刹に向かい、アーチャーは俺へ射掛けてくる。

 俺はその矢を回避しながら、アーチャーにウインドカッターを放っていく。のらりくらり、のらりくらり、相手の術中にはまっているかのように。

 戦士が盾役と合流し、羅刹へと攻撃を仕掛ける、羅刹と切り結び、一瞬距離を取る。

そうだ!その瞬間を待っていた!俺は影の中へと潜りこんだ。




 …埒が明かんな。

 この我の前に経つナイト、こやつの盾は中々我の拳をもってしても砕くことが出来ん。それに、ダメージが蓄積してきたところで後衛のヒール。全く持って忌々しい連携だ。

 正々堂々と身一つで勝負せんか、全く。

 そこへ、先ほどまで異世界の眷属が惹きつけていた戦士が戻ってきた。2対1か、盾役1人では流石に退屈しておったのだ!我をもっと楽しませよ!

 眷属のお蔭でスピードの上がった右の拳を戦士に向かって叩きつける。その間に割って入るナイト。ガツン、という衝撃とともに、奴の足が地にめり込む。そのナイトの頭上に躍り出た戦士は、唐竹に剣を振るってくる。空いている左の腕でその軌道を逸らす。そのまま、右腕を叩きつける。戦士はそこで前転、我の懐まで潜りこむと、強烈な突きを放ってきた。

 それを腹に受けながら、バックステップで回避。直後、左わき腹から火傷のような痛み。見れば腹を深々と切り裂かれていた。ぬう、我を後退させるとは、中々やりおるな!

 傷の事など気にも留めず、相手へと踏み出す。左腕を大きく振りかぶり、拳を叩きつけに行く。

 だが、直後、相手の様子がおかしい。我の拳をまえにして、全く反応しない。否、微動だにしない。

構わぬ。そのまま拳を振り抜く。


 ドグシャ、という猛烈な破裂音とともに、戦士の上半身が潰れ、内臓が飛散する。鮮血と真っ黒い血が入り混じって空気中をキラキラと光を反射しながら飛び散っていく。そして、その背後には、バルロッグ。異世界の眷属が立っていた。

 何だ、貴様の差し金か。興ざめだな。




 戦士の背後、シャドウチェイサーによって影から出た俺は、同時に影縫いの効果で戦士の行動を停止する。そして、背中から盛大に切り付けてやった。

 俺の一撃だけじゃ致命傷は取れないだろうが…今奴の眼前では羅刹の旦那が猛スピードで拳を振り下ろさんと迫って来ている。こいつは受けきれまい!

 刹那、羅刹が拳を振り抜き、戦士の身体が爆ぜる。よし、先ずは一人!


「きゃあああ!バーンズうううう!」


 ヒーラーがたまらず叫び声を上げる。だが、俺たちがそれで止まるわけでも無い。次の標的は盾役。


“羅刹の旦那、アーチャーを抑えてくれないか!俺はナイトの方が相性がいい。旦那はアーチャーの方が相性がいいみたいだからな!”


「ふん、我の楽しみを奪いおって、後でその代償はたっぷりいただくぞ!」


 羅刹は軽口をたたくと、クイックが効いたままの身体でアーチャーへと迫っていく。アーチャーをスピードで上回る重戦車、なんて、考えただけでゾッとする。

 さあ、俺は目の前のナイトへと集中しよう。こいつは魔法防御がなってない。俺にとっては尤もやりやすい相手だ。だが、俺は狡猾なバルロッグ。先ずは自分を盤石にしてから闘おう。


「うおおお!」

 

 ナイトが俺に詰めてくるが、足が遅い。『ドレイン』!『アブソーブ』!

 出来ることは先にやっておく。HP、MPを奪ったら次にやることは『ヒートグラップル』!

 足の遅いやつは炎に捉えておくのが一番だ。俺は鞭で縛り付けたナイトを引きずりながら、物凄い勢いでヒーラーへと肉薄する。


「くっ、ルミナス・レイ!」


 ヒーラーが光の攻撃魔法を放ってくる。く、これは早すぎる、避けられない。

 ドシュウ!

 俺のどてっぱらに命中した光の矢は、盛大に焦げ目を創るが、致命傷には至らない。構わず接近する。

 女の子には手を上げたくないんだけど、な!

 バスタードソードの袈裟懸けが、ヒーラーの女の左肩から胴体、骨盤へと抜けていく。流石に防御力の高いローブを纏っているのか、一撃では仕留められないが、足は止めた。構わず、横掛けに剣を振るう。

 一瞬にして十字に切られた女冒険者は、その場でドチャリ、と倒れたまま絶命した。

 俺は左腕のヒートグラップルにさらに魔力を込めていく。


「ぐおおおアアアア!」


 ナイトが苦悶の悲鳴を上げるが、お構いなしだ。

 そのまま消し炭になるまで、魔術をかけ続ける。

 羅刹の方は、と見やれば、すでに片付いた様だ。足の速さで劣るアーチャーには出来ることが何もなく、羅刹に頭を掴まれて持ち上げられ、手足は力なく地面へと垂れている。武器は全て地面に取り落としてしまっているようだ。

 

「他愛も無い。」


 グシャリ、という音と共に、アーチャーの身体は首という支えを失い、地面へと落ちた。

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