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9階層のオーガ達。

 さあ、俺はレベル上げに戻って来た。今の状態を確認しよう。


・ヒュプノス

【種族】シトリー LV.6(6/15)

HP  160/160

MP  173/173

攻撃:161

防御:70

魔力:96

知力:107

俊敏:102

スキル:ファイアブレス、フェザーショット

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル、ウインドカッター、クイック

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、影縫い、ステータス


 5階、6階、7階のフロアでは敵が居なくなった。今日は8階を攻略する。

 俺はいつもの5階の部屋を出ると、なじみになった大部屋で何匹かモンスターをやっつける。最近はオーク・キングやホブ・ゴブリンもすっかり張り合いがない。完全に餌状態である。

 なんの危なげもなく6階に上がり、フロストやケルピーを片手間に倒しながら進む。フロストの魔石はこの前まで知力+3だったのに、今は+1に下方修正された。残念、だいぶ俺は強くなってきてしまっているらしい。痛し痒しだな。

 そして、7階はオーガ達がぞろぞろと出てくるフロアで、中々に張り合いがある。レベル上げ的に。戦闘的には、スリープ一発なので、何も張り合いがない。まあ、目的が戦うことじゃないからね。いいんじゃないでしょうか、こういう事があっても。オーガの魔石も、攻撃+1に下方修正されていた。


 それで、俺は今、8階の階段を上った最初の部屋に居るわけだが…ここに出てきたのが、サラマンダーと、シルフ。ここも妖精フロアの様だ。

 大部屋にはサラマンダー2匹、シルフ3匹がフワフワと漂い、こちらに突如攻撃を仕掛けてきた。頭上からファイアボールが放たれ、そこにシルフが風を合わせると、

 轟!と音を立ててファイアボールが巨大化!おいおい、魔法ってこんな合成が出来るのかよ!俺はそれを横に回避する。取りあえず、こいつらのステータスを見ておこう。


サラマンダー

HP 102/102

MP 71/74

攻撃:71

防御:70

魔力:90

知力:72

俊敏:50

スペル:ファイアボール、セルフバーニング、ブレイズウォール


シルフ

HP 90/90

MP 77/80

攻撃:50

防御:52

魔力:85

知力:92

俊敏:70

スペル:ウインドカッター、エアロプレス


 …なるほど、さっきのがエアロプレスとファイアボールの連携と。取りあえず俺はクイック。素早さを上げて、相手の攻撃を避けながら至近距離攻撃を仕掛ける。仕留めるのは…シルフが先だ。斬!と爪の一撃で1匹目を仕留める。防御が低いから、紙切れの様に叩き斬れる。スピードもクイックを使えば2倍近く出るから、追いつくのも楽だ。

 続いて残りの2匹も葬ると、サラマンダーに向き直る。奴らもファイアボールを撃ってくるが、何しろ遅い。全然当たらない。危なげなくこの2匹も仕留めると、魔石を頂くことにする。

 

 8階も、何だかあんまり張り合いがない。それに、会合で他の神の眷属と会った所為か、自分が随分せせこましいところに居る気がして、何だかやるせなくなってくる。もっと早く、もっと強くならなくちゃって、どうやら俺は結構焦ってるな。気持ちをしっかり持とうじゃないか、俺。





“それじゃ、ノクトルム下層階の会議を始めるよ。”


 ニッコリと笑みを浮かべながら話しかけるのはベネルフューゲル。円卓に座り、右手で頬杖を突きながら、グレーの輝く髪の毛を空いた手で弄ぶ。


“羅刹、最近の調子はどうだい?”


 その言葉に、嬉々として応えるのは羅刹。10階~20階を任されている階層主だ。見た目には、巨大な大角羊のような角を持った、悪魔のような形相。顎にはズラリと牙が並んでいる。両腕、体躯は筋肉ではちきれんばかりに覆われ、いかにも窮屈そうに腰掛けている。


「問題ありません。最近は冒険者の数が幾分増してきた気はします。階層主ルートとは別ルートで、21階層へと登る連中も少しずつ増えているようです。我がフロアに出入りしている冒険者は人間でいえばランクD~ランクCの階級に属しており、倒した冒険者のギルドカードから判明いたしました。」


「羅刹はまだ戦闘はしてないのかい?」


 そう質問してきたのは、41階~50階に当たるフロアを任されている階層主、ぺルセポネ。真っ黒いローブを身にまとった女性のような外観で、右半身は真っ黒い闇に覆われ、左半身は赤髪の美女だ。


「いえ、すでに何度かは。それらの冒険者のカードから、ランクを割り出しました故。」


「そう、じゃあ私の所に冒険者が来るようになるのは、まだ先の事なのかな。」


“いや、そうとも言えないよ。このダンジョンから遠く離れた場所から、高レベルの冒険者がやってくる可能性もある。常に警戒は怠らないようにね。”


「承知いたしました。」


 ベネルフューゲルの言葉に一礼するぺルセポネ。


“クエレプレの所はどうだい?羅刹の階層から何人か抜けていったようだけど。”


 クエレプレは21階~30階相当のエリアを担当しているドラゴンだ。真緑色をしており、巨大な翼が特徴である。ちなみにこの会議会場は大きな神殿型をしており、体育館2個分ほどの広さがあるため、羅刹やクエレプレも入ることが出来ている。


「はい、Cランクの冒険者のようでした。暫く探索した後、すぐに何らかのアイテムで外に出て行った模様です。この階層の知識も、それなりに冒険者ギルドの方に伝わったものと考えていいのではないでしょうか。」


“なるほどね。少しずつ、僕のダンジョンも人間に知られるようになってきたわけだ。まあ、このダンジョンの恩恵に浴する人間が増えるほど、僕の力も回復していくわけだから、これは喜ばしいことだね。”


「誠に。」


“そうだ、みんなに伝えておくことがあるんだ。前に話した異世界からの眷属だけど、彼は今9階層辺りをぶらついている。次の進化が終わったら本格的に10階層へと突入する予定だ。そこからは勝手に階層を上がっていくことになると思うけど、みんなとも一度顔を合せておいた方が良いと思う。だから、次の進化が終わったら、全員この場所に招集かけるから、そのつもりでいてね。”


「ほう、異世界からの眷属、もうそこまで来ましたか。我々の同胞にたる実力を持つものか、一度手合わせしたいものですな。」


“基本、ダンジョン内で起こったことは不干渉で居るから、もしも羅刹の待っているフロアまで彼が上がって来たなら、闘っても構わないよ。顔合わせの時は、喧嘩しないでね。”


 ベネルフューゲルの言葉に、ニヤリと口角を上げる羅刹。


「承りました。楽しみですな。」





 9階層にのぼる階段。俺は8階層でもそれなりにレベルを上げ、このあたりでは敵無しを続けている。9階層も妖精とかが闊歩しているのかなぁ。

 ギギギ、と階段の扉を開くと、そこはぶち抜きのワンフロア。余りのデカさに面喰う。子供の頃行った国立競技場の芝生位の広さはあるんじゃないか?いや、それ以上に注意すべきは…この部屋の一番奥、祭壇のようなスペースに居る、あのデカい奴だ。周りにも有象無象が居るが、兎に角あのデカい奴をチェックする。


オーガ・バトラー

HP  200/200

MP  50/50

攻撃:200(+20)

防御:130

魔力:50

知力:52

俊敏:70

装備:アイアン・ハンマー


 おいおい、いきなりバカみてえに強い奴が出てきたな?門番ってか?その周りにも、4体の大剣を装備したオーガが居る。


オーガ・ソルジャー

HP 142/142

MP 30/30

攻撃:140(+20)

防御:90

魔力:20

知力:24

俊敏:61

装備:ブロードソード


 そして、フロアには、おびただしい数のオーガやケルピー、サラマンダーの群れ。これを超えなければ、次に進めないってわけか。良いだろ、俺の糧になってもらうぞ!

 クイックで俊敏を上げた俺は、周りに居る雑魚どもを引き裂いていく。斬、斬。敵とのスペースが出来たらすかさずブレイズウォールで焼き払う。轟轟!オーガ達が炎にまみれ、ケルピーが蒸発していく。サラマンダーは爪で切り裂き、突き進む。魔石は後だ、問題は…


「ゴギャア!」


 このオーガ・ソルジャーども!こいつらの攻撃は、恐らく2,3発貰えばアウトだろう。慎重に、大胆に。スピードは並だ。防御力も攻撃に比べれば大したことは無い!俺は正確に奴らに攻撃を加えていく。そこに、サラマンダーのファイアボールが放たれる。仲間に当たろうがお構いなしか!だが、避ければオーガ・ソルジャーの恰好の的だ。クソッ!

 ボン、ボボン!

 ファイアボールが、オーガ・ソルジャーの顔に炸裂する。俺は、咄嗟にシャドウチェイサーで離脱、別のモンスターの陰から出てきて、攻撃を再開する。あ、危なかった…だけど、冷静に対処すればどうにかなるな。

 ファイアボールを顔面に当てられたオーガ・ソルジャーは怒り心頭だ。俺の方にズシンズシンと、音を立てて走ってくる。

 大部屋に標的が一人、というこの状況は、まさしく乱戦というに相応しい様相だ。俺がビュンビュン飛び回るのを、沢山のモンスターたちが追いかける。俺はそれを一匹一匹確実に始末していく。

 ダメージを貰えば命取り。とにかく、振り回し続ける。右へ、左へ。飛んだと思ってみれば、相手の陰に回り込む。斬、斬。斬り飛ばし続ける。


「ギャアアア!」


 ついにオーガ・ソルジャーが一人倒れる。それを見て、ボスが動き始めた。来たか。こいつは一撃で状況をひっくり返せる。スリープが使える状況ならそれが一番だが、こう動きながらだと対象者を上手く捉えられない。振り回し続けて、削り殺してやる!

 とはいえ、俺も無傷で済んでいる訳では無い。オーガ達の一撃は避けているが、ファイアボールやケルピーのウォーターウィップなど、いくばくかのダメージも受け、少しずつ確実にスタミナを消耗してきている。ステータスには現れない、疲れ。頭が数字に頼り切りだった所為で、そういう部分を見落としていたか!

 刹那、後方からオーガのこん棒、前方からオーガ・ソルジャーのブロードソードが重なる。2択――シャドウチェイサーでオーガの後ろに脱出すると…ガンッ!


「ガア!」


 思わず、声を出してしまう。見れば、ケルピーの後ろ足に脇腹を捉えられていた。俺は横に吹っ飛んでいく。ググ、脇腹に蹴りか…効くな。

 俺は起き上がりながら思考を走らせる。動きを読まれ始めている…?シャドウチェイサーは一度触れた影にしか移動できないから、どうしても自分の周りを囲むモンスターのどこかに出る形になりやすい。それを、どうやら読まれ始めている。仕方ない、どうにかパターンを変えるか…先ずは、『スリープ』!

 俺は真っ先にオーガ・バトラーを眠らせる。魔力・知力の低いこいつに、スリープは絶大な威力を発揮する。そのうえで、残った連中にフェザーショットを浴びせていく。自分の羽を使った、広範囲の弾丸攻撃だ。バス、バス、と音を立てながら、ダーツの様にケルビーやサラマンダーの皮膚を切り裂いていく。

 ケルピーに蹴飛ばされたのが不幸中の幸いだったか、かなり連中とは距離が開いたおかげで、フェザー・ショットが面白い様に決まり、小型のモンスターは粗方掃除することが出来た。残るはオーガの群れのみ。と、すればやることは、ウインドカッターによる殲滅戦のみだ。

 鬼ども、喰らえ!俺の周囲から放射状にウインドカッターが炸裂していく。魔法防御力の極めて低いオーガ達は、成す統べなく両断されていく。よし、いける!そう判断した瞬間、俺の視界の端に巨大な影が。オーガ・バトラー?馬鹿な!眠っていた筈。


「ゴギャアアアア!」


 ズズン!とアイアン・ハンマーが振り下ろされた床にクレーターが出来る。俺は咄嗟にバックステップで避けたが、これは間違いなく一撃であの世行きだ。だが、このスピードなら何とか勝負になる。先ずは…『ヒートグラップル』!

 炎の鞭がオーガ・バトラーを締め上げる。このまま炎で焼き殺してやる!


「ギャアアア!」


 しかし、オーガ・バトラーは炎の束縛を力ずくで振りほどくと、もう一度ハンマーを横凪に一閃。俺は寸での所で上に飛び上がり、事なきを得るが、ガシッ!オーガ・バトラーは空いていた左手で俺の右脚を掴んだ。マズい!思った瞬間にブンッと振り下ろされる。

 ガアン!と石畳の床がぶち抜ける音。オーガ・バトラーの左拳は確かに床を叩き割ったが、そこには何も握られていない。ギリギリでシャドウチェイサーが発動し、俺は何とかこいつの足元に移動してきたのだ。そして、ここで初めて「影縫い」の加護の力を知ることになる。

 「影縫い」は、対象の影を踏むことで相手をフリーズさせる能力。言ってみれば、俺がオーガ・バトラーの影に乗っている間は、こいつはどうやら動くことが出来ないらしいのだ。シトリーになってからというもの、シャドウチェイサーを使ったら即相手を爪で切り殺していたから、その効果に気付くことが出来なかったのだが、死線ギリギリのところで最高のポテンシャルを発揮してくれた。

 俺は動きの止まったオーガ・バトラーを爪で引き裂いて勝負を付けた。動けない相手は、断末魔も上げずに霧散していく。


ピロリン。


 お、レベルも規定値に達したようだし、後は雑魚の掃除だけだ。俺は全方位にウインドカッターをばらまいた。

 

 戦闘後、ボリボリと落ちている魔石を喰う。ステータスを上げてから次の段階へ進まないと、勿体ない気がして。俺のシトリーでのリザルトはこうなった。


・ヒュプノス

【種族】シトリー LV.15(15/15)

HP  86/187

MP  90/200

攻撃:197

防御:82

魔力:129

知力:121

俊敏:120

スキル:ファイアブレス、フェザーショット

スペル:スリープ、セルフバーニング、ファイアボール、ブレイズウォール、ヒートグラップル、ウインドカッター、クイック

加護:ハイディング、ダーククラウド、シャドウチェイサー、影縫い、ステータス

 


 ふう、最後は派手に頑張ったなぁ。俺。今までの人生で一番動いたかもしれない。いや、人間だったときは指先と目しか動いてなかったもんな。そりゃそうか。


“ヒュプノス君!レベルアップおめでとう!思ったよりずっと早かったねー、凄い凄い!”


 あ、有難うございます、神様。9階層は正直死ぬかもしれんと思いましたがね。


“まあ、あそこはそれなりに厚みを持たせてるからねぇ。それより、進化だね?一覧をチェックしてみてー。”


・妖狐(火)

・鎌鼬(風)

・ウンディーネ(水)

・羅刹(火・土・主)

・バルロッグ(闇)


・妖狐 

 炎を纏った狐。強力な火炎呪文を得意とする。水系統に弱い。


・鎌鼬

 強力な真空波などを操る風の魔獣。精霊に近い身体をしており、物理攻撃のダメージを半減させる。


・ウンディーネ

 水の精霊。女性のような形状をしているが、性別は無い。水魔法、回復魔法を操る。


・バルロッグ

 真っ黒な鱗を持つトカゲのデミ・ヒューマン。闇魔術で相手から生命力を吸い取ることが出来る。


・羅刹

 オーガを食らう伝説の魔獣。強力な物理攻撃と、火炎、そして土の魔法を扱うことが出来る。階層主。


 神様、階層主出てきました。これは選んじゃだめって話ですよね。


“そう、選んじゃダメだよ!現行の羅刹君と入れ替わりになって、進化も止まってしまう。羅刹君には進化した後会えるから、楽しみにしててね。”


 え、会えるんですか?階層主と?


“うん、進化が済んだら、下層域の階層主たちと顔合わせをしようと思ってるんだ。みんないい子たちだよ。”


 いい子、ですか。俺が果たして言える立場なのか…。ところで、神様。進化先ではどれがお勧めですか?


“うーん、そうだな、一番強いのは、鎌鼬かな。物理が効きにくくなるし。ただ、バルロッグも捨てがたい。生命を吸収して回復が出来るからね。”


 じゃあ、今回はバルロッグで行きます。防御力の上がりが弱いんで、ここいらでステータス上げとかないと後がきつそうだし。


“OK、じゃあ、僕の部屋で済ませてしまおう。その後は、階層主の皆に会ってもらうよ!”


 解りました、漸く階層主という言葉が出始める所まで来たかー。感慨深いぜ。


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