4月の魚に翻弄される馬鹿
本日はエイプリルフールということで、その話を一つ。
よく考えて見れば、訳が分からない風習です。このような風習が広まったのは、人々の普段は抑圧された「公然と嘘を吐きたい」という需要とマッチしたからでしょうけど、だからと言って滅茶苦茶な話です。
嘘は知能がある生物なら吐いて当たり前のものですが、それと同時に嫌がられるものですから。
嫌がられるようなことをしていいなんて大義名分を与えてしまうような風習――尤も、本当に嫌がられるような嘘吐いたら人間関係が拗れそうです――が起こったのには、それなりの偉い理由がある筈だろうと。若き日の……中学生ぐらいでしたね、私はそう考えたのです。
でまぁ、その当時から社会で幅を利かせ始めていたネットを駆使して色々な情報を当たったのですが……有力な情報がないんですよね、これが。
そう、エイプリルフールには様々な説がありますが、それらにはなんら確証性を付与する情報はなかったのです!
このときの私の脳裏には、攻殻機動隊1巻のコマ外に書いていた文章が浮かんでいました。
「重要な情報は電子化されない――」
中防の私「くそう、くそう。重要機密でもないのに電子化されてねぇぞ、くそう。あのSFオタクめくそうアホウ」
などと、全く無関係でド失礼なことを考えた私は、敬愛する士郎正宗氏の格言に従い、電子化されていない情報、つまりは紙媒体を当たることにしました。
しかし、無作為で資料を当たっても全くの無駄だろうと考えた私は、下記の推論を元に調査を開始するのです。
「未だに起源が明確ではないのは、もしかしたらエイプリルフールの原型は今のものとは全く異なるものだからなのかもしれない……。だとするなら、ヨーロッパ圏にある4月1日近辺に行われるもしくは行われていた風習を手当たり次第に探しまくれば、何か解るかも……」
この調査は一年半もの間続きました。ネットを巡回し図書館に通い、結果学校をサボりまくったのです。ですが、流石にこのままでは内申や出席日数がクレイジーとして二年の二学期からはまともに学校に通うようにしたのです(成績のことで親にブチ切れられたからってのもある)。
そして無事かどうかは知りませんが、高校に合格。ぐらぐらした生活を続けながらも、エイプリルフールに関する調査は再開され、常にそのことが頭の中にありました。
ですが、有力な手がかりがないまま無為に時間が過ぎるのを侘びしく思い始め、「もう、ゴールしてもいいかな」とか考え始めていた、そんなある日のこと。
……話は突拍子もない方向に飛ぶのですが、私の地元には「ちちんぷいぷい」という、ローカルお昼の帯番組があります。
この番組、お昼の帯を四時間もぶっ続け生放送という頭おかしいことをやってる今年で15年目になる人気番組なのですが、話が逸れるので詳細は省きます。
例の如くまともに学校に通っていなかったダメ人間まっしぐらの私は、本を読みながらかポケモンの孵化作業のどちらからをしながら、それをぼけーっと流し見していました。
その日は奇しくも4月1日。
春休みと通常の休日・祝日の感覚が麻痺していた私は、そのちちんぷいぷいのコーナーを見て、初めてその日が4月1日であることに気が付いたのです。
それによると、イタリア一部地域に伝わるエイプリルフールは、皆さんが普段から知っているものとは、かなり変わったものであると。
なんでも、子供が魚の紙を大人の背中に貼り付けまくるものであるとか。ときにはその魚のカードにメッセージを書いたりする悪戯でもあるのだと。
大人の背中でヒラヒラ泳ぐ魚……。
Pesce d'aprile
これがイタリア語で「四月の魚」を意味することは知っていました。
しかし、この日は魚の形をしたチョコレートやクッキーをプレゼントし合う風習だと思っており、「バレンタインと同じくお菓子会社の陰謀か何かだろ」と、軽く考えていたのです。
また魚についても、この時期が魚座の季節であることが理由であって、大した意味はないのだと。
けれどここにきて、「悪戯」という今までの調査では出て来なかったワード。この精神は、現在広く広まっているエイプリルフールの精神とも合致します。
自分は、何か思い違いをしていたのかもしれない。
四月「馬鹿」ではなく、「魚」であることに、何か意味が隠されているのでは。
では、この魚はなんなのか?
私は直ぐ様、思い付く限りのワードで検索をかけ、イタリアの地方に伝わる風習に関した書籍を探し、これは翻訳されている資料は皆無だろうと考えイタリア語の辞書をAmazonで購入しました。
しかし、魚の正体については、引き続き視聴していたちちんぷいぷい内で明かされることになります。
「この魚は鯖なんだよ。なんで鯖なのかは分からないけどね(取材に答える地元男性。二児の父)」
……鯖?
イタリアでも鯖が穫れる……?
一瞬呆気に取られましたが、こんなことは考えなくても解ること。イタリアの料理には鯖を用いたものは普通にあります。
むしろイタリア人も
「え? ジャポーネでもマッカレッロが穫れるの?」
と困惑するかもしれません。
などと考えている間に取材VTRは終了し、アナウンサーやコメンテーターたちが「不思議ですねぇ」「なんでこの地域だけ、他とは全く違う内容になってるんでしょうか?」「そこまでは取材しても分かりませんでした」と、大体こんな会話をして、いつものようにふわふわした雰囲気でコーナーは締めくくられます。
しかしこの時点の私には、既にとある推論がありました。
鯖で思い起こされる慣用句。日本人で知らない人はいないでしょう。
「鯖を読む」
これは鯖が傷みやすく漁獲量も多かった魚であることから、水揚げ時には大雑把に数えられたことが由来の言葉です。買い手側も「それは仕方がないこと」と、受け入れている風潮があったとかなんとか。
つまり、嘘を吐いている状態であるにも関わらず、それが已むを得ないものとして受け入れられていたのです。
こうした鯖における状況は昔のイタリアでも然程変わりなかったと思われます。
これはエイプリルフールとの共通点ではなかろうか?
イタリアの一部地域で4月1日に行われる鯖を模した紙を子供が大人の背中に貼り付ける風習。
これはもしかすると、大人のそうした欺瞞に抗議した、無垢な子供が始めたことなのかもしれません。
そしてそれが巡り巡って、今の形に落ち着いたのでは……?
なお、調査に疲れた私は、「もうこれが結論でいいや」と考えて調査を中止。結局、何故4月1日なのかは分からないままです。もう自分だけで調べるのは限界。
何か知ってる人いたら教えて下さい。特にイタリア人は歓迎します。イタリア語分かりませんけど。
っていうような内容のブログを書いたのが丁度10年前の今日。未だに何も解ってません。
もうそのブログはネット上から消失しているので重複投稿には当たらないはず……!
内容も違うし。
あとノンフィクションです。エイプリルフールだからって嘘吐いたわけじゃないです。
嘘っぽくなるかもしれませんが信じてください!!
嘘があるとしたら……独自調査と呼べる程のことは大してしていないってことですかね……?
中学生の悪童が余暇にやってたことなので。
そりゃ図書館には行きましたし、ネットには触れてましたけど、それって現状の生活とあまり変わry