表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

第6章

君が作ったのは、銃じゃない。



僕は最初にそれを伝えた。



それは言うなら、銃よりたちの悪い代物。



君の作った「ソレ」は、人間の自己破壊衝動……すなわち僕らが「タナトス」とよぶ細胞を活性化させる電波を流すんだ。僕は「ソレ」を禁器だと知っている。



つまり、君は禁忌を犯したことになる。



君自身は何も知らなかったみたいだけど、きっとお姉さんは知ってたね。どこでそれを知ったか今となってはわからないけど、それは人間が足を踏み入れていいことじゃない。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



僕は、すべてを君に語った。




君が犯した罪のことも、僕が作った世界のことも全部…そして、1つの提案をした。




「一気に話しちゃったね。こんなんで、わかってもらえたかな…?」




君が小さく頷いた。




「僕の提案を受けるかは、君の自由だよ。でももし、君が『この世界を壊す』ことを望むなら、今日の夜12時に、あの場所で待ってる。」




僕はそのままその場を去った。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




夜、11時…僕は、あの場所で君を待った。




僕は、すべてを君に伝えた。



だから、君ならきっと来る。



その確信がどこかにあった。



11時50分...僕はやけに落ち着いていた。



(僕の作った世界を壊そうっていうのに、なんだろう…この穏やかな気持ちは。)



10分、20分……僕はじっと君を待つ。



そして、30分後…君が来た。




時計は12時20分を指していた。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




「簡単な話だ。君が作った『ソレ』を全世界に流す。つまり、自己破壊衝動を活性化させる電波を、全人類に流すんだ。この意味は、わかるよね?」



僕は丁寧に言葉をつないだ。



「残念ながら、この世界も失敗だ。いくら知能を与えても、いくら規制を与えても、いくら自由を与えても、人間は結局愚かだった。」



君は、俯いたまま動かない。



「僕は神様だ。だから、君だけはその電波を受けないようにすることももちろん可能だ。でもそれを、君は望まないだろ?」




君の顔が緩んだ。



「うん、望まない。」



そう言って笑った君は今までにないほど綺麗で、覚悟を決めた目をしていた。




「じゃあ、いくよ。」



僕は「ソレ」の引き金を引いた。






ーーーーーーーーーーーーーーーー







目の前が真っ暗になった。



どこかで声が聞こえる。



突然目の前に、「僕」が現れた。



「僕」が語り出した。



(どうして、終わらせちゃったの?どうして、また逃げたの?どうして…?)



僕は、答えた。



「君なら、わかるだろ?もう、疲れたんだ。願ったのは「君」だろう?『消えてしまいたい。』と。僕はそれを叶えただけだよ。僕が作った世界と一緒に僕も消えて、何が悪い?」




君が悲しそうな顔を見せた。その哀れむような表情僕は感情を抑えられなくなった。




「じゃあ、どうすればよかったんだよ!人間なんて、愚かで、弱いヤツらを…僕はどうすれば救ってやれた?…何をしても無駄だった。だったら最後くらい、僕に助けを求めた少女を、救ってやるくらい、許されたっていいじゃないか。」



…………。



「僕」が言った。



(うそつき。)



え………?



僕は、言葉を失った。




(君が望んでたのは、本当に人間の幸せかい?違うだろう。君は、いつの間にか「人間」である自分の幸せを望んでいたんじゃないのかな。だって、そうでしょ?君が最後に望んだのは、「あの子」の幸せ。……君は、「あの子」のために、人類を犠牲にしたんだ。しかも、タナトスなんてものに手を出して。)





図星…だったんだと思う。



僕はそれ以上の言葉を拒んだ。



目を覚ました時僕の目の前にあったのは、デカイ画面だった。







ーーーーーーーーーーーーーーーー







「はーい!お疲れ様でしたー!!!」




その声が無理やり僕の目を覚ました。




「いやあ、大奮闘でしたね〜。それでは、『ちきゅう』の実験を終えたアイクさんにインタビューと行きましょーう!!!」



僕は記憶が戻っていた。




そうだ、これは僕らのゲーム。



………。



……………………。



そうして、報告会がはじまった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー





「まず、アイクさんに質問です!途中、いきなりルールを変えたり、1人の「人間」に熱心になったり、こちらの世界ではハラハラドキドキだったのですが、実際その体験はどういったものだったのでしょうか!」




僕は、答えた。




「わからない。」と。




観衆がざわついた。



「わからない、とは?」




そうだ、僕たちの世界には「わからない」という概念は存在していない。




「僕は、初めて『答えが出ない』ことを経験をしました。人間とは、実に面白いものだった。服従を望むように脳を作ったのになぜか自由を望みだすし、かと言って自由を与えたら人間は誰かといることを選びました。でも僕は不思議とそれを疑問に思わなかった。それどころか僕まで、そんな感情に陥っていました。僕は自分の行動に理由をつけられない。だから、わからない…そう言ったんです。」




司会者は唖然としていた。




「なるほど。アイクさんは今回のゲームで、多くのことを学んだ。そういうことですね!」




司会者はよくわからないまとめ方をした。




「では、アイクさん!アイクさんはみごと2000年以上世界を維持することを成し遂げました。ということで、もう一度挑戦する権利が与えられますが、どうされますか?」



司会者は大袈裟に叫んだ。



「さあ、アイクさんはこの経験を活かして、さらなる高まへと突き進むか!!」




僕は言った。





「遠慮しとくよ。」




盛り上がっていた会場が固まった。




「もう、たくさんだ。」




僕は部屋をあとにした。画面に背を向けた僕の顔には笑顔が浮かんでいた。








ーーーーーーーーーーーーーーーー









僕は今でも夢を見る。





そこは、とても綺麗な世界。





みんな幸せそうに笑ってる。





そこには、君が立っていて





僕に静かに腕をふる。





なんて、優しい世界だろう。





僕には作れなかった美しい場所。




もしそんな世界を誰かが完成させたら




僕は神様をやめてそこに住みたい。





誰も傷つかない物語があるなら





僕は君に届けるよ。





でも、僕は思うんだ。




もし君ともう一度会えるなら




そんな真っ白な世界より




あの夜みたいな世界がいいなって。





暗闇の中で探す星ほど




美しいものを僕は知らないから…





自己破壊衝動(タナトス)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ