第三話 ー白猫ー
先に動いたのはホワイトキャッツだ。
ブラックラビッツの速度を上回るスピードでピストルを発砲する。廃棄工場内に銃声が響き渡る。
「遅い遅いよ、黒いウサギさん」
「く……」
工場内のあらゆる障害物に身を隠すも、ホワイトキャッツにすぐにすぐに見つかり徐々に追い込まれていく。
「これで、チェックメイト」
ついには、背後を取られてしまう始末。
ブラックラビッツは、とっさに2メートルもの高さがある足場にジャンプしてどうにか銃弾を逃れた。
「あら、ジャンプ力は優れてるのね」
ホワイトキャッツがパチンと指を鳴らすと猫仮面を被った部下たちがワラワラと出てきた。
「お前、一人じゃなかったのか?」
「うちの、ボスネコさんが、全力で黒いウサギさんをたおせってさ。私一人でも十分だって言ったのにね」
「面白い……」
ブラックラビッツは微笑した。そして足場から降りると回転しながらピストルを乱射する。
次々と倒れていくザコたち。それを見たホワイトキャッツは禁断の秘術を使うことにした。
「なるほど、ね。ボスネコさんが貴女を警戒するわけだ。体が痛くなるから使いたくなかったけど、使うしかなさそうね」
それは改造された、肉体強化である。ブラックラビッツはそれを過去に見ている。
「それだけはやめろ」
ブラックラビッツの制止も聞かずに、ホワイトキャッツは足を大きく膨れ上がらせ筋肉を増強させる。
「はあはあ……もう遅いよ?」
体にかかる負担は想像以上だ。その足で時速150キロは超えるスピードをだし、ブラックラビッツをほんろうする。
「あはは、ついてこる?」そしてピストルを乱射する。
「く……」
ブラックラビッツのコートはハチの巣だ。防弾チョッキを装備しているが、破られるのは時間の問題。
追い詰められていくブラックラビッツ。状況を打破するにはもはやこれしかなかった。
ラビッツ細胞の覚醒、だ。
しかし改造も施されていない状態で使うと100パーセント死に至る。
今のホワイトキャッツと互角、いやそれ以上に戦うにはそれしか方法はなかった。
右腕を天に向けて突きあげるとブラックラビッツは苦しみながら奇声を上げる。
「うう……うああああ」
共鳴、とでもいおうか?
その瞬時にホワイトキャッツとシンクロしたのだ。
「兄さん……」ホワイトキャッツはそういうと動きが一瞬止まった。
「お兄ちゃん……」ブラックラビッツもまた同じことをつぶやいた。
この二人のなかに一体何が秘められているのだろうか。今は謎である。
「うああ、頭が……」
二人は激しい頭痛に襲われた。
やはり、肉体強化は危険がともなうのだ。
「はあはあ、今日は見逃すわよ」ホワイトキャッツは限界を感じたのかその場からいなくなった。
「はあはあ、任務失敗……」ブラックラビッツは意識を失う。
翌朝、目が覚めると自宅のベッドの中にいた。
「あたしは一体? 昨日の記憶が無い」
ベッドから起き上がりテーブルを見てみるとまた一通の手紙があった。
内容を確認すると、ウサギ団に来い、とだけ書いてあった。バーニーは黒いコートを着るとバイクを走らせた。