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episode3、3

そして、替わって、出てきたのは知らない少女らしき声だった。

『それはあたしが明日良から、聞いたからです。この子ばっかり、イケメンのお兄さんと一緒にいるのが悔しかったからともいえますねけどね』

まくし立ててきた美加に和衛は面食らった。

『とにかく、早く、帰ってきてほしいって、明日良が言ってます。女の子一人で、留守番させるなんて、危ないですよ』 「わかったよ。初対面の子にそう言われたのは、初めてだ」

ため息をつきながら言うと、美加はそうですよと返してきた。

ぷつっと切れて、ツーツーと電子音が鳴る。

登場の仕方も唐突だが、切る時も唐突だなと思った。

―不思議な子でしょ?明日良の友達はあれくらい、元気がないとね―

おかしそうに笑いながら言う菊丸を放って、和衛は歩き出した。

すうっと、炎は消えて、菊丸は帰ったらしかった。

急いで、坂上宅を目指す。

経盛と勢津姫の関係と紅樹の正体。

調べれば、調べるほど、泥沼にはまる心地がしたのであった。


坂上家へ帰ると、ぱたぱたと足音が聞こえてきた。

玄関のドアを開けた途端、お帰りなさいと言う声をきいて、脱力しそうになった。

「わあ、本物のカズヒラさんだ。親に怒られるの承知の上で、待っておいてよかった!」

やけにはしゃぐ少女を見て、明日良ではないと思った。

もしかして、この少女が美加だろうかと予想してみる。

「…君が明日良ちゃんの友達?」

そう答えてみれば、少女はくりくりとした瞳で見つめてきた。

人なつっこい性格なのが口をきかずとも、伝わってくる。

「そうです。和衛さん、明日良のこと、どう思っています?!」単刀直入に言われて、和衛は混乱した。

一体、何を言ってるんだ、この子は。

菊丸、後で覚えていろと和衛は一人ごちた。

「別に、どうもこうも、思っていないよ。君が期待するような仲じゃない。まだ会って、一週間を過ぎた所だし」

きつめに言うと、少女こと美加はふうんと神妙な顔つきをしている。

そのまま、スニーカーを脱ぐと、家の中へ入った。

「…和衛さんって、もしかして、女嫌いなの?」

数秒おいて、問いかけられた。

けれど、その内容に和衛は、体が固まるのを感じた。

またもや、爆弾発言をされて、呆れ果ててしまった。

「俺は女嫌いじゃないよ。明日良ちゃんみたいに年下は好みじゃないけど。君も入るかな。もう、この話はいいだろう?」

仕方なく、答えてやれば、美加は肩をすくませながら、無言で奥へと戻っていった。

何で、あんなにミーハーなのだろう。

明日良の友人だというから、どんな子かと思いきや、かなり、予想外だった。

残念ながら、ああいうタイプは苦手だったりする。

高原は中学からの同級生だから、慣れてはいるが。

それでも、騒ぐ女子は苦手だと思ったのであった。


廊下を通り抜けて、リビングへ向かう。ソファに明日良が左手側に腰掛けて、先ほどの少女が右手側に座っている。

どうも、話をしていたらしく、飲み終わったのか、空のマグカップが二つ、机に向かい合う形で置かれている。

明日良がこちらに気づいたらしく、振り向いた。

「あ、和衛さん。お帰りなさい」

最初、会った時よりも柔和な笑顔で言ってきた。

「…ただいま。友達が遊びに来ていたんだな。最初は誰かと思ったけど」

驚きながらも、言ってみたが。

明日良はわけがわからないようで、きょとんとした表情をしている。

いずれは、自分がこちらへ来た理由、明日良を狙う奴のことを話さなければいけない。そして、夢の中で会う少年のことも。

そんなことを考えていたら、心配そうに二人ともこちらを見てくる。

「和衛さん。難しい顔して、どうしたんですか。眉間にしわができてますよ?」

少女こと美加がそう言えば、明日良も神妙な顔つきになっている。

それを交互に見ながら、和衛は軽く、ため息をついた。

「ちょっと、課題のことを考えていてさ。量が多いから、困ったなと思ったんだ」

嘘をついてみた。

すると、それには二人とも疑わずにふうんと言いながら、納得したようだった。 仕事上、仕方がないとはいえ、嘘をつくのは気分が良くない。

「確かにそうだよね。私たちの課題も量が多くて。二週間で片づけられるか、心配でさ」

明日良が口を開けば、美加も肯く。

和衛は邪魔になってはだめだと思って、廊下に出た。

―和衛。美加が帰ったら、明日良の側にいてあげて。あいつが来る―

唐突に、菊丸の声が和衛の頭に響いた。 「何だって?」

え、と唖然としていると、菊丸の声はしなくなった。

和衛は急いで、自分用の部屋へと急いだ。

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