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竜の都で謳う姫  作者: 光太朗
第四章 竜の都
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 それは人から人へと語られて、親が子に、子が親になり、そしてまた親が子に──そうして引き継がれる伝承の域を超え、思えば意図的に広がっていったのだろうと、ニーノ・アマートは考える。

 物心がついたころ、子は不思議に思うだろう。なぜ良い天気なのに「あいにくの空で」といい、暗く淀んだ日なのに「良い天気で」といわなければならないのか。

 大人は決まって、こう答える。それは、竜は嘘がつけないからだと。こうやって挨拶をすることで、相手がちゃんと人間であることを確認しているのだと。

 子の疑問は続くだろう。

 どうして、竜がいたら、いけないの? 昔、この国の王様と竜のお姫様が、結婚したんでしょう? 竜とは、仲良しなんでしょう?

 当然の疑問のはずだ。

 そこに潜む矛盾に、おそらくだれもが気づいていながら、だれも言及しない。

「たったの八十年」 

 それはあっという間に、国中に広まった。

 幸せの物語。人の王と竜の姫、種族を超えた愛の物語。

 店に帰り着くと、ニーノはオプスの入った袋を無造作に放った。これこそが、矛盾の塊だった。

 竜はこの国を襲わないのに、この国の人間は竜を狩る。

 この八十年で、オプスを利用する技術はめざましく発展した。それが、何を意味するのか。

「そろそろ、つけが回ってくるってことか」

 店中をひっくり返すぐらいのことは、やる価値があるだろう。八十年前の当時も、アマート家は王城でのオプス管理を任されていた。推測ばかりを重ねてもどうにもならない。

 ニーノは一度目を閉じ、深く息を吐き出す。立ち上がると、ランタンに火を灯した。






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