8.勘違い
『海が見え、そこで寝泊りも出来る広い公園がある』
私はその噂を聞いて、この街にやって来た。 海の見える公園、一度でいいので描いてみたいのだ。この指で、この筆で。
この場所に来てからもう2日も経ってしまった だがその素敵な風景はまだ描けていない。あの綺麗な色がどうしても表現できないのだ。
だけど私は諦めない。何度も何度も挑戦して納得の行くまで描き続ける。 2日やそこらで完成してしまっては面白みが無い、今回のように難易度の高く、美しい景色を描いて行きたいのだ。自分はこの絵が完成するまではこの場所を離れない
そう何度も思いながら筆を進めて行く。
「ん〜っっ! んっ・・・」
一度筆を置き、大きく背伸びをする。ずっと描き続けているので少し疲れたのだ。
公園の時計を見ると午後2時を過ぎた頃だ、そういえばお昼を取ってなかったので、コンビニでてきとーに買ってきますかな
画材セットを一通り片付けて、自分のテントへ一旦帰る。荷物を置いて、昼食を買いに行く
お昼を食べた後はなるべく絵を描かないようにしている。それは気分なのだが休憩を置いて再開すると筆が思うように動かない。なので無理だと思った時は次の日までゆっくり休む事にしている
さて、お昼は何にしようかな?
サンドイッチか、それともおにぎりか。なるべく軽いものの方がいいし・・ いやどうしようかなぁ
何を買うか迷いながら、公園の外のコンビニへ向かう お腹が減っているので少し早歩きで移動する。悩むのはお店についてからでもいいしねっ
「んっ・・・? 何だろ、あれ」
歩いていると、公園の入り口前で何か白い大きな物が落ちていた、・・・なんだろう? 人形・・かな?
恐る恐るソレに近づいてみる......
「・・・えっ」
ソレは、綺麗な白色の髪の子供だった どう見ても気を失って倒れている 服は泥だらけ、腕や顔にも傷がある
「き・・ 君!? 大丈夫!? ねぇ!?ねぇ!!」
大きめな声で呼びかけるもその子からの返事は無い とにかく、この子をこんな場所に置いて行くわけには行かないので、とりあえず自分のテントに運び込む事にする
「大丈夫・・だよね」
その子を抱き上げるも、全くと言っていいほど動かない。何かの病気なのか?親御さんはどこに行ったのか?暴力を受けたのか?そんなことばかり頭をよぎる
急いでキャンプスペースに戻る。ここに滞在する事を前提で来ているので、風邪薬や救急箱など持って来ているのだ、何かは役に立つはずだ
「はぅ・・・ んぅぅ・・」
何だ?今自分の胸の辺りで可愛らしい声が聞こえた気がする
私は、この白髪の子をお姫様だっこなるもので運んでいる 必死になりすぎて気づかなかったがこの娘・・めちゃめちゃ可愛いじゃないかっ!
・・・今の声はこの娘の声なのだろうか? 返事が無かったので混乱してしまったが、ただ寝ていただけなのだろうか?あんな所で?
とにかくテントまで運ぼう、あんな所で寝ていては風邪を引いてしまう。寝かせて、毛布をかけてあげよう 無理に起こしても可哀想だし・・・ 起きるまではそっとしておいてあげよう
▽
自分の運んで来た女の子は自分の部屋ですやすやと眠っている。運んでる時には気づかなかったが、この娘はかなり重たい狐っぽいぬいぐるみを抱いていた、よほど大事な物なのだろう ・・・ぬいぐるみはかなり不細工だが....
どうしよう..... 自分の前には幼い少女 パッと見だが小学低学年くらいだろうか? とっても好みだ・・・
ぁいや何でもない
その・・寝顔がとても可愛い.... 何だろう?この顔を見ているといたずらしたくなって来る....
いやいやっ それは駄目だ。 耐えろ・・ 耐えるんだ私ぃぃぃ
ふぅ・・ 一応は邪心を封じ込める事が出来た・・ こんな小さな女の子にいたずらするとか......何考えちゃってんだろ
この子はどうしてあそこに居たのだろう・・・? 二日だけではあるが、3時を過ぎるとこの公園には沢山の子供達が遊びに来る 私はその子達を見て暇を潰したりもしたが、こんな白い髪をした子は居なかった
居なかった・・ と言うより見た事が無い。 こんなに綺麗なら、目立つ事は避けられないと思うのだが・・・
それに、この子は何故が泥だらけ、腕と額、手には擦り傷の跡がある。 どうしたのだろう?こけたにしては傷が酷いし・・・
とりあえず土を払って、泥や汚れを拭いて上げよう さすがに泥まみれは気持ち悪いだろうし
タオルで顔や足についている泥を拭いて行く、上着を脱がせ、付いてる土を叩いて落とす
袖を捲らして、腕に付いてる土も払ってあげる これで大体の土は取れたはずだ 服に付いてる土は結構擦ってて叩いただけでは落ちなかった どうせなら綺麗にしてあげたかったなぁ
寒いと可哀想なので叩いた上着をきせてあげようかな
「ん・・・ んひゃぁっ ぁれ? ここどこ?」
どうしよう・・・? この子が起きてしまった なんて言えばいいのだろうか?
子供にもわかるように言わないといけないし・・
と・・ 私は真面目に考えていたが、何故かその子は怯えているように感じた ・・私 何かしたかな?
「自分・・・ 服をっ 脱がされ・・ ぇぇ・・」
なるほど、確かにこの子の上着は私が手に持っている。だけど違うんだ、私は汚れを落として君にもう一度着させようとしただけなんだ・・・
そんな事言っても恐らくこの子にはわからないだろう とにかくこの子を一旦落ち着かせなければ行けない
何か良い物はあったかな・・? え〜っと・・ これとか子供好きだよね?
「ぇっ と 飴ちゃんあげるから・・ お姉さんとお話しよっか?」
うん完璧だ。受け取ってくれれば少しは落ち着いてくれるだろう それから何があったかキチンと事情を話して・・ あれ?
その子は私の手を払い、後退りをしだした 何か間違ったか?
自分も聞きたい事はある、その子をこれ以上怯えさせないように少しづつ近づいて行く
「ゆ・・ ゅぅっ・・ うぅ・・」
その子は怯えながらも何かを言おうとしている。怯えさすような事はしてないのだけれど・・
ん? ゆぅ・・? ゆぅ、 ゆう・・ゆうか ぃ はっ!? まさかっ
◆◆◆
寒い
もの凄く寒い。
自分はあのモコモコのパーカーを着ていた、この季節なら外に居ても寒くは無いはずだ
さらに自分は白君をマフラー代わりに首にかけていた 普通なら寒いなんて言葉は出てこない・・・ はずだ
自分は何をしていたのだろう
........たしかご飯を食べ終わった後、お昼寝をしようとしたら、、、寝床に付く前に睡魔に襲われて寝ちゃったんだっけな
寒さで目が覚めるとか・・ 何か嫌な目覚め方だな
「ん・・・ んひゃぁぁ・・・」
大きなあくびをし、軽く背伸びをする。そして周りを見渡す
「・・・ぁれ? ここどこ?」
目に見えた物は橙色の壁、網で出来た窓、それに半分開いている出入り口、少し慌てながら何かを考え込んでいる女の人
恐らくここはキャンプスペース、自分が寝ているのを見てこの人が連れて来てくれたのだろう
この女の人、片目が髪で隠れている。結構カッコいいぞ・・ いやいやそれはどうでも良い
・・・この人 自分のパーカーを持っている
よく見ると、自分の服の袖は捲り上げられ、半ズボンは限界まで引き上げられている
シャツは胸の上あたりまで全部捲られている ・・ぇ?
「えっ!? 自分・・・ 服をっ 脱がされ・・ ぇぇ・・」
あぁ ぁぅえ お・・落ち着いて考えよう
この人は自分の服を脱がしている途中だったのだろう こんな小さな体に何をするつもりなのだろぅか・・
確かに小さな女の子が公園で倒れていたら心配して連れて来ると言うのはまだあり得るだろう だが何故服を脱がすのか?
何故だろう? 兄貴を思い出した
いや、理由なんて物は別にいい、とにかくここから逃げないといけない。どこか逃げ道はないのか・・?
っと あれ....? 何だろう、女の人がガサゴソとバックの中身を漁っている 何かを取り出したような・・
「ぇと........ 飴ちゃんあげるから・・ お姉さんとお話しよっか?」
・・・・・誘拐犯!?
女の人はニコニコと笑っている これで引っかかるとでも思ったのだろうか
っていうか古いっ 今更そんな物に釣られる子供なんていないだろっ!?
そして何で自分は飴を取り出している間に逃げなかったのか・・・ 今の間に逃げられたのに
そして女の人は女の人はじわじわと、少しづつ少しづつ近づいて来る 凄く危険な香りが・・
そっ そうだ・・声を出して助けを呼ぼう 早くっ 早く助けを・・ このままじゃ何をされるかわからないっ
「ゆ・・ ゅぅっ・・ うぅっ 」
声が・・ 出ないっ!? まだ・・ 早くっ大きな声で助けを・・っ
「ゆうかぃっ はぅんっ!?」
途中で気づいたのだろう その人は慌てて自分の口を塞ぐ そしてそのまま押し倒され腕を押さえつけられる
・・ヤバい これはヤバい。まさか兄以上の敵がいるとは思わなかった、自分は何をされるのだろう?こうなってしまってはもう何も出来ない。 さっきの声に誰か・・ 気づいてっ
だが、助けは来ない 来るはずがない。 今の声は恐怖からかかなり小さい物だった テントの外にすら届いていないだろう
もう駄目だ・・ 自分はそう感じ、きつく目を瞑った
あれ 何もされない?
「あの〜・・ 勘違いしちゃ駄目だよ? お姉さん誘拐犯とかじゃないからね?」
女の人はそういいながらそっと手を解いてくれる あれ、もしかしてさっきの全部自分の勘違い・・・?
。。。なわけないよな 服、脱がされてたし・・・ 警戒はしといた方がいいだろう
「え〜っと 私の名前は 新倉らじ って言うの、君の名前を教えてくれるかな?」
らじ、か・・・ 何かすっごい珍しい名前だなぁ 誰かのHNにありそうな名前だな・・ うん
まあいいか
「自分は ・・ しら・ し・・ はぅぅ」
ぅ・・ 先ほどの恐怖が取れてないのか声が出ない・・まだ体が震えている
「ご・・ごめんね えっと・・ 飴ちゃん食べる? 少し落ち着こっか」
そういいながら、そーっと手を出して来る。気を使ってくれているようだが、、、何か逆に不安になる自分を狙っているようにしか見えないのだが・・
出してもらった飴を貰い、口に放り込む。 うん、普通の飴だ、味は・・・ハッカ? 子供とか苦手そうなイメージあるけどなぁ・・
自分は好きだけど
「大丈夫・・かな? お水いる?」
「大丈夫ですいらないです」
らじさんが水らしき物を渡そうとしてくる、だが受け取らない
自分は飲み物を持って来ているし・・・ 何が入ってるかわからん
白君からスポーツドリンクを取り出し1口飲む そしてやっと服を整える
恐らく、白君はがっちり掴んでいたから一緒に連れてこられていたのだろう そこらへんは少し覚えているような・・・?
「えと・・じゃあ 君の名前を教えてくれる?」
・・・大人しく答えておくか 逃げられそうにも無いし・・・
「鈴風しらっ・・・・ つゆです 厶癒って呼んで欲しいです」
一瞬 はくろ と言おうとしたが、、、先に言い切ってしまった ナンテコトダ
でも・・・まぁ嘘付くよりかはマシかな うん あだ名の方で呼んでもらう事にしようか
「しらつゆちゃん・・・かぁ じゃあ白露ちゃん、親御さんは何処かな? 何であそこで寝てたのかな?」
ってかまた質問か・・・ てきとーに返しておくかな
「お母さんは仕事で居ないし そぇと・・ 運動したら眠くなっちゃってあそこでダウンしてしまいました」
「あ・・そう じゃあ白露ちゃん」
「厶癒でお願いします!!」
何だろう ここ2日間 はくろ やら しゆ と呼ばれていたので しらつゆ で呼ばれると何故かビクッとなる
家族に呼ばれるのはまだ良いが知らない人から呼ばれると何か・・・気分が悪い?
「あ・・うん、ごめんね あと厶癒ちゃん?今度からはお母さんと一緒に公園に遊びにくるようにしようね 一人じゃ危ないからね」
あれ?
この体・・・一体何才に見えているのだろうか? 凄く不安になって来たぞ
っと言うか、危ないのは貴方みたいな人がいるからなわけで・・・ よし。
「一人が危ないのは新倉さん見たいな人が居るからだと自分は思います。 初対面の女の子を攫って服を脱がすとか・・ 」
「ちがうっ!それは誤解だよっ!?」
何故即答できるのか・・・
「それと、自分のこと何才に見えてますか? そんなに幼くないですよ」
「えっと・・・ なn、いや 9くらいかな〜? って!言い訳くらいはさせてよっ!」
今7って言いかけただろぉ いや・・言い直しても遠いっ まだ遠い・・・
いや、この体ならそれも仕方ないか な
「実は自分、じゅっ・・ ぁいや〜・・・ 15だけど」
実年齢を出して良かったのか? 一瞬迷ってしまった
少し考えたが、この見た目なら笑って流されるのが普通だろう うん
「あはははっ 面白いね君ぃっ こんなちっさいのに15って!」
ほらね この反応だ。知ってました、わかってました。
いや・・まず15ってのが無理があるけどさ・・
「では・・・話す事話したのでとっとと出て行っていいですか? これ以上ここに居る意味ないですし」
もうここに用は無い。何もされなかったし、運んでくれたのにお礼を言って早く戻ろう。 そうしよう
「何言ってんの! 15でその体はあり得ないって! だから何かの理由はあるんでしょ? それ教えてくれない・・かな? ねっ! ねっ!!」
・・・・・ん? この人マジで信じちゃってる??
いや、嘘はついてないのだけど・・・・まさか信じるとは っていうか・・もしかして話さないといけないっぽい?
らじさんは目をギラつかせてこっちを見ている
お話をしますか
はい ◀
Yes
最近投稿ペースが落ちてますが・・・
うん、ネタが尽きました^p^ 話はあるけどネタが・・・w






