7.妖怪の体
「んっ ぐっ! はぁ~!」
背伸びをして、鍵置き場に手をのばす 変な声も出ているが、それでもまだ届かない
「ぁうぅ~・・ んっ あとちょっちぃぃぃ!!!」
少し前に出たとこで、鍵が指に当たる あと少しで鍵が取れそうだ
端から見れば、かなり可笑しな絵面に見えるだろう 想像したら少し可愛いと思ってしまったが
カチ、カチ と鍵が軽く当たる音がする 指先で何度かつついているが揺れるだけで落ちないし、取れもしないのだ
「うぅぅぅぅっ んっ! ん~!!! んんんーー!!!」
あとちょっと・・ あとちょっとなのだっ 鍵束の揺れも少しづつ大きくなっている
「んんん!!! んにゃぁぁぁぁっっ!!!」
カシャン
と鍵が床に落ちる ついに玄関の鍵を落としたのだ これでやっと外に出られる・・・
何故こんなしょーもない事に時間をかけなければいけないのだろうか、背が低いと色々困るなぁ
何はともあれっ 鍵は取れたのでさっさと公園へ出発~!!! わくわくするなぁぁっ
▽
妖怪の体・・ どんな秘密を秘めているのだろうか
人間には姿を見せる事がほとんどない そのためには見つからないように移動する必要がある
化ける その可能性もあるが、まだわからない そもそも妖怪がどんな物なのかすらあまり知らないのだ
妖怪にも種族とかの違いがあるのだろう 多分 うん
「・・・っし! やるか!」
声を出し、気合いを入れる
いつもと声が違うのであんまりその気になれないんだが・・ まぁそれは良いだろう いや、よくないけど
体を無理に疲れさせる、初めてする事だ いつもなら少し走っただけですぐに疲れる
というか、好んで無理に自分を疲れさせようなんて思う人はいないはずだ 多分
とりあえず公園のグラウンドを軽く走ってみよう。この時間は人は少ない、周りを気にする事も無いだろう
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
グラウンドの周りを軽くランニングする、わかってはいるがこのくらいで疲れるはずも無い
ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ
だが、グラウンドを5周したが疲れは一向に溜らない 逆に抜けている感じがする
ここのグラウンドはだいたい1周二百メートルくらいある 約一キロぶっ通しで走っているのだ 小さい女の子が。
なら走るスピードを上げてみようか 軽く走るだけじゃ疲れは出ないという事がわかったのだ いいとしよう
ザッ ザッ ザッザッザッ
どんどん足を速く動かして行く、それにつれて、どんどんスピードも上がって来る
ザッザッザッザッザッ
うん・・・? 足がどんどん動く スピードも、もの凄い事になっているきがする
ザッザッザッザッザッザッ
いや、気のせいじゃない グラウンドの1周が20秒もたたずに終わってしまう。何故コーナーを曲がれるのか不思議なくらいだ
いやっ! 落ち着いて考えてる場合じゃ無い これはヤバい 幼女があり得ないスピードで走っているのだ 誰かに見られるとヤバい どうにかして止めなければっ
少しづつ走るスピードを落として行く なるべく早く止めなければと思うのでかなりのスピードを一気に落としているのだが・・・ 少しづつなんて無かったんや
「あっ!?」
無理ににスピードを落としたのが駄目だったのか、足が絡まってしまった
そしてそのまま顔面から地面にダイブする
ガリガリと顔が擦り剥ける その拍子に手と膝も付き、同じように擦り傷が出来る そしてそのまま地面に倒れ込む
凄く痛い、顔と手と膝が焼けるように痛い 何故半ズボンを履いて来たんだ・・自分よ
痛いからと言って声を上げたりはしない 擦り傷程度で泣くような年では無いのだよ
だが、服もズボンも泥だらけになってしまった どうやって汚れを落とそうか?擦っているので跡は残るだろう くそう・・
いや、そんな事はホントどうでも良い 問題はこの体・・ 足は速いしまだ疲れは全然無い
もう一つ、今の走りは全然本気ではなかった 本気で走るとどのくらいのスピードが出るのだろうか? ・・試してみたくなる
というか、何なんだこの早さは 人間からしたらチートじゃないか 普通ならこんな小さな体でこんなスピード出るはずが無い・・・
全力で走ったらどのくらいのスピードになるのだろうか? 試してみたくなる・・・やめておこう
この体の足が速いのはわかったが普通に怪我をしているのだ これ以上派手な怪我をしたら動けなくなる可能性もある
まだ実験を続けていたいが・・・ さすがに不味いか、場所を変えよう ここでは人に見られる可能性がある
▽
「っ・・・ぃててて」
顔と手がひりひりする 何故か膝の方はあまり痛くない
自分が今来ている場所はキャンプスペースの裏っ側 秘密の広場だ
ココには人が来ない おそらくココの場所を知っているのは自分と兄貴、それとここの管理人さんくらいだろう・・・たぶん
実は管理人さんに許可を貰って秘密基地なんてものを作ってたりもする まぁソレは置いておこう
ここはグラウンドほどではないが結構広い、ココで走るのなら誰にも見られないし問題は無いだろう たぶん
疲れをためるだけなら別に走る必要は無い、今度はジャンプしたり木登りでしてみようか
・・まずはジャンプから行こうかなっ・・・と
少し軽めに走る、そこから膝を深く曲げ、一気に飛ぶ!!!
「・・・ぇ」
自分の目に映るもの、それは真っ青な空のような物 いや、これは空だ 自分の足下には葉が落ちかけの木が何本もある
・・・少し予想はしていた もの凄いスピードで走るのだ 脚力は相当な物なのだろう さすが妖怪
ははは・・ はは はははは・・・・ どうやって着地すれば良いのだろうか
驚き、考えている間にも時間は過ぎて行く
「っぅあああああああ!!!!!!」
もの凄いスピードで背中から地面に落ちる ヤバい ヤバいヤバいヤバいヤバい
このまま地面に落ちたらどうなるのだろう 怪我じゃ済まないのはわかっている
足からなら怪我程度で済むのではないか? もしかしたら助かるかもしれない ・・・かもしれないっ!
早くっ 早く体を起こして・・ 早くっ 早くぅぅぅ っそぉぉぉぉ!!!
その瞬間、ギシッ と言う音と ビシビシッ! と音がした
▽
「っぁー!!!」
痛い 痛い 足が恐ろしいほどに痛い 痛みが引かない、先ほどからずっと膝を抱えている
着地には成功した、だが足を痛めてしまった 声にならない声を上げ、もう何分も経つ
痛める、と言うより壊してしまったと言うのが正しいのだろうか? それほど痛いのだ
歩けるには歩ける、だが1歩を踏み出すごとに強烈な痛みが襲って来る 痛いのは嫌いなのでなるべく動かないようにはしているが、動かなくても痛い 痛い 凄く痛い 痛みは引いて来てはいるが、まだ凄く痛い
着地した場所には小さなクレーターが出来ている 自分がどれくらい高い所まで飛んだのか、考えただけでも恐ろしい
だが少しだがわかった事はある
人間が妖怪を見ない理由、この足の速さとジャンプ力だろう
さっきは思いっきり飛んだからこんな結果になってしまったが・・・ 練習すれば飛ぶ高さを調整する事も出来るだろう
もの凄いスピードで人間に見つからないように移動・・・ あれ何か忍者みたいだな
でも妖怪だからって全部が見つからないように動くって言うのはどうなのだろう? 人がさっきのようにに飛んだり、高速で走ってたりしたらすぐ見つかりそうな物なのだが・・・ ぅぅ、妖怪の事はわからないなぁ
とりあえずこのジャンプを練習してみるかな 移動とかも楽になりそうだし、何より楽しそうじゃないか!
いってしまえばアニメのような動きが現実で出来る、と言う事だ 思いっきり動ければ気持ちがいいんだろうなぁ
足の痛みは引いて来た、普通なら骨がいくつか折れていてもおかしくはないだろう
まだかなり痛いが・・・歩いてもかなり痛い、と言うくらいにまでは回復した 激痛よりは全然マシだ ちなみに顔と手はまだ痛い 足の回復速度だけ異常なのだ・・ なんか気持ち悪い 早いに越したことは無いけど
さて、では足の回復を待ってこの体の練習しましょうかねっ・・・っと
▽
「はぁ はぁ はぁ はぁぁ」
自分は軽く走る、ジャンプするの繰り返しを何度も何度も繰り返している
思った以上に難しく、何度ジャンプしても狙った場所に足がつかない
とりあえず2メートルくらい上にある木の枝に飛び乗る事を目標に頑張っている
だが、いつも枝より低い場所に飛んで、木を蹴り返し、着地する事の繰り返しだ
「はぅぅ はぅ はぅ・・・ ふぅぅぅ」
低い場所に飛ぶからと、少し強めに地面を蹴ると 目標の枝よりかなり上に飛んでしまう
どうにかして地面に着地をするが、足が痺れて動けなくなるので、少し休憩する時間を入れなければならなくなる
休憩を入れてる物の、さすがに疲れて来た かなりの時間ずっと動き続けているのだ 疲れない方がおかしい。
「は・・ふぅ ふぅ ふぅぅぅぅ うぅぅ」
もうそろそろ限界だ 時間的にもそろそろな感じだろう 少し休憩してから帰るとしよう
広場から出て、公園の入り口まで戻る 入り口の横にあるベンチに少しの間横になる 枕はもちろん白君である
公園の時計を見る・・・10分ほど寝転んでいたようだ まだ全快ではないが疲れはかなり取れた
だるいなんてものも全くない 疲労の回復力も異常だ
ちなみに、今の時間は1時すぎ、お昼を超えてしまっている さっさと戻ってご飯を食べようかな
妖怪の体は強い もの凄く強い
かなりの高さから落ちても足が痺れる程度で済むのだ 初めのはヤバかったが・・
しかもこの体は幼・・少女なのだ こんな小さな体であれだけ耐えれるのだ 大人の妖怪はもっと凄いのだろう
こんな力を持っているのだ 本気で走ったら道がぼろぼろになると言うのもわかる 妖怪の中でトラブルなどがあったのだろう たぶん
・・・・自分が関わる事の無いように祈ろう
▽
「・・・っぷ」
どういう事なのだ・・・ カップ麺1つでお腹が膨れるなんてっ
自分は疲れ、お腹も空いていたので、簡単に早くできるカップ麺を食べる事にした
自分は固い方が好きなので3分のを半分の時間しか待たない 食べている間にも時間は経つしね
だが・・ まさかカップ○ードル1つでお腹が膨れるなんてぇぇぇ 昨日の晩から何も食べてないのにぃ ぅぇぷ
これはいきなり動くと危ないかもしれない リバースする恐れが・・・
だが家に居ても何も無い 外だと動きの練習も出来るし、昼寝も外の方が気持ちいい 神社に行くのも日課なのだ
それに、今は昼飯を食べる為だけに帰って来たのだ さっさと外に戻ろうな、久々に昼寝をしたい気分だ
「っぐ・・・ ふにぁ〜 ぁ」
寝たいと思うと眠くなって来る 早く公園の昼寝場所に行かなければならないっ
家を飛び出し、鍵を閉めて小走りで公園へ向かう もちろん白君は連れて行くのだ。枕変わりにもなるしっ
いつものお昼寝する場所はキャンプスペースの裏にある小さな丘だ あたたかい風が吹いて来て寝心地が良いのだ
もうすぐ冬なので、あそこで寝る事が出来なくなる 来年まで待たなければいけなくなる
冬になると寒いし・・雪が邪魔して寝床が無くなってしまうのだ。 それに冷たい風は好きではない だから今の内に寝るのだ、寝尽くすのだ! お昼寝だけど
「ぅぅ わふ・・・ ねむ・・・ぃ」
いつもはお昼寝する前に運動などしない 激しい運動をして、疲れが溜っていたので眠気が襲って来る いや、疲れは取れているけど・・・ そんな気分なのだ
お昼寝前にこんなに眠くなった事は無い 例えるならば徹夜した日のお昼ごろに襲って来る睡魔くらい強力だ
公園の入り口に着いた・・・ 昼寝の丘はキャンプスペースの裏にあるので、秘密の広場を通ると近道になる。普段は使わないのだが、ここまで眠いと急ぎたくもなるのだ
「・・ぁ ぅぇ?」
足がふらつく、まっすぐに歩けないのだ
さらに頭がぐらぐらする さらに目の前がぼやけて来る 何かを考えようとするが何も考えられない
そしてそのまま地面に倒れ込む 土の味が口の中に広がって来る
すごく瞼が重い 耐えようとはするが、だめだ 耐えれない 瞼が重過ぎるのだ
自分はそれに耐えれずに目を閉じてしまう
「・・・・・・すぅ」
人は言う 睡魔には勝てない、と
ラストの睡魔の話、 あれ実話だったりします^p^
小学生の体育祭の練習時、睡魔に襲われて保健室送りになった事が・・