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第3話 気が付いたら異世界でした?

どれくらい意識を失っていただろうか?


「頭痛ってぇ〜。」

俺は頭をブルブル左右に振った。

どうやら後頭部と背中を強打したようで、目が覚めた途端、背中にも痛みが押し寄せる。

痛みにうめきながら身体を起こし、はっと気付く。


「ハルは⁉︎(アイツ)は⁉︎」

起き上がると見知らぬ長い黒髪の女と話をしているハルの姿を見つけ、安堵する。

良かったぁ、とりあえず2人共生きてる。ここまで死を意識したのは初めてだった。


「おや、ハルの彼氏くんが目を覚ましたようだね。」

「ソラくん、大丈夫?ごめんね〜、私、その、重いから・・・。」

恥ずかしそうにハルが俯く。

「大丈夫、大丈夫。全然重くなんてなかったぞ。壁に激突した時に頭を打っただけだよ、気にすんな。んで、この女の人は?」

俺は見知らぬ女の方を向く。

「この人はね、シルヴェスタさんで、さっきの(ドラゴン)だよ。」

はっ?えっ?今ハルは何て言った?

「えっ、その人がさっきのドラゴン?冗談だろ?俺が気絶してる間に一体何が起こったんだ⁉︎」

何でドラゴンが人間になってんだよ、意味不明⁉︎


「いゃ〜、悪かったね、ソラくん。私は漆黒竜(カオスドラゴン)のシルヴェスタだ。君たちが私の眠っている間に巣へいきなり現れたものだから、てっきり卵を盗みにきたのかと思ったのだが、どうやら私の勘違いだったようだ。謝罪しよう。ハルから事情は聞いているよ。」


どうやら事の顛末はこういう事らしい。

やはりこのシルヴェスタという女はドラゴンで、グッスリ眠っているところへ、自分の巣にこっそり入ってきたから卵泥棒だと思って怒ったと。

信じられないが自分で言うのだから事実なのだろう。

とりあえずハルの隣まで行き腰を下ろした。

ふぅ〜、一息つく。


それと今まで気付かなかったがハルの膝の上に乗ってる小さいトカゲは何だろうか?

「ハル、その膝の上のやつは?」

「あ、この子はねぇ、さっき転がって来た卵から産まれたの、えへへ〜。」

何だと、さっき転がって来た石ころは卵だったのか。

「何でそいつに懐かれてんだ?」

「我々ドラゴンも卵から産まれる。鳥と同じで刷り込みというやつだ。この子は私の起こした風で君たちの方へ転がっていってしまってね。運悪く壁にぶつかった衝撃で孵化した時にはハルが目の前にいたということさ。」

いや、本当はアンタが起こした風が原因じゃなくて、この卵の方が先にこっちへ転がってきてアンタが目を覚ましたんだが、まぁ、グッスリ寝てたということでいっか。

「えっと、どうすんだ、それ?」

「すまないが、どうも私には懐かなくてね。ハルにも了承を得たのだが、君たちで育ててもらえないだろうか?ソラ。」

マジッスか?

「ハル、どうすんだよ?マジで育てるつもりなのか?」

ハルは、雛竜をあやしながら答えた。

「ソラくん、どうもね〜、ここは地球じゃないみたいなの。シルヴェスタさんが言うには、エルシオンっていう星らしいよ〜、えへへ〜。」

えっ、なんじゃそりゃ。どういうことなんだ?さっぱりわからん。穴から落ちたら異世界でしたっていうまさかありきたりなパターンか?

「そう、この星はパルフェシカ星系第三惑星、水星のエルシオンと呼ばれているよ。

君たちは穴から落ちてきたと言ったが、ここは私の巣で、この先の出口以外に出入り出来る所は無いんだ。ここは死火山の山頂付近でね。」


出た、出ました。

まさかのファンタジー小説によくあるパターン。

俺はエルシオンなんて星聞いたことないぞ!

どこだ、パルフェシカ星系って?


そうだ、これはきっと夢だ。

俺は今壮大な夢を見てるんだ、きっと。

そうそう、大体異世界の(シルヴェスタ)が俺たちと普通に話できんのも怪しいと思ってたんだよ。

都合が良過ぎるぜ。

さぁ、起きろ、俺。

頬っぺたをバシバシ叩いてみる。

痛い。


嘘だろ?


神様、俺が悪かった、許して下さい〜泣。もう悪い事はしませんから。


「ソラ、そろそろ落ち着いたらどうだ?」

俺が泣きの一手で打ちひしがれていたら、シルヴェスタが話しかけてきた。


やはり現実らしい。

なんでハルは異世界なのに呑気なんだ?

これって学校に遅刻するどころの話じゃないぞ。雛竜に懐かれてそんなに嬉しいもんなのか?


「すまない、とりあえず落ちついてきた。ここが異世界だとして、俺たちはすぐに元の地球に帰れるのか?」

「ハルの話しを聞くに君たちは、地球という星に住んでいたそうじゃないか。だが私は地球なんて星を聞いたことがないんだ。恐らく君たちは偶然できた次元の穴のようなものに飛び込んでしまったんじゃないかな?

悪いが、さすがの私にも次元を超える力は持ち合わせていないんだ。だが、こちらに来られたということは、この世界の何処かには戻る手段があるかもしれないよ。」

「そうなのか、とりあえず今すぐには戻れないということか。」

俺はうなだれた。

「ソラくん、だから当分の間は、この子と一緒にこの世界を廻って帰る手段を探すしかないと思うんだ〜、えへへ〜。」


全く簡単に言ってくれるぜ〜、ハルは。

いきなり知らない世界に来ちまって、帰る方法ないんですけどぉ。しかも自分たちで帰る方法探さないといけないんだぜ〜。


「はぁ〜、まぁ他に方法もなさそうだし、仕方ないか。でもドラゴンって人に変身できるんだな、やっぱスゲーな。」

「話しが纏まったようなので良かった。あのままの姿では恐がられるだけなのでね。精神干渉(テレパシー)で君たちを覗いたのだが、全く悪意は感じられなかった。だから話をしてみようと思ったんだ。それとその子もハルに懐いてしまっていたからね。」

「こいつとハルが助けてくれたみたいなものだな。ハル、こいつ名前は決めてやったのか?」

「うん、この子はね〜、女の子だから竜子って名前にしようと思うの、えへへ〜。」

「それはさすがに可哀想だからやめよう。別の名前を考えてやってくれ。」

俺は即座に言う。

何が悲しくて竜の子だから竜子なんだ。まんま過ぎんだろ。

「んとね〜、じゃあシルヴェスタさんをもじってシルヴィーっていうのは?」

「お、割といい名前じゃん。良し、今日からお前はシルヴィーに決定な。」とシルヴィーの頭をなでる。

「ギャフ〜。」

俺が言うとシルヴィーは返事をした。こっちの言ってる事がわかるのか?

俺はシルヴェスタに聞いてみた。

「こいつ話し理解してるのか?」

「あぁ、産まれたてだが、そうだね、人間の5才くらいの知能はあるはずだよ。」

そうか、意外に賢いんだなシルヴィー。

ハルがシルヴィーの頭を撫で撫でしている。

シルヴィーは喜んでいるようだ。

「シルヴィーもいつかはシルヴェスタみたいに喋れるようになるのか?」

「そうだね、早ければ半年くらいで言語を覚えると思うよ。」

そうか、やっぱりドラゴンは知能もスゲーんだな。

「んで、俺たちはこの先何処へ行けばいいんだ?何か当てはあるのか?」

「そうだね、まずはここから一番近い街、べオン帝国のティルトという村へ行くといいよ。そこには面白い伝説が残っているからね。」

「あれ、その言い方だとシルヴェスタは付いて来てくれないのか?」

「あぁ、私はこう見えても、もう年でね。もうあまり寿命は残されてはいないんだ。後半年程かな。さすがにドラゴンも老いには勝てないよ。力になってあげれなくてすまないね。」

ガーン、マジですか?

「ドラゴンはね、死ぬ少し前に卵を産むのさ。そうして記憶を引き継いで転生する。だから私が死んだら私の記憶はシルヴィーに引き継がれる。あくまで記憶としてだがね。」


俺とハルだけで知らない世界を旅するのかぁ、そこはかとなく不安だ。

俺だけならともかくハルは頭はいいが、運動音痴だからなぁ。

しかも今のところシルヴィーは役に立ちそうもない。

前途多難とはこの事だ。

全く先が思いやられる。


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