第1話 落ちたその先は地下道⁉︎
ピンポーン。
家のインターホンが鳴ったのは、朝の8時過ぎ。
ちょうど俺が朝ご飯を食べ終えた頃だった。
「はいは~い、今行くぅ。」
このタイミングでうちのインターホンを鳴らす奴は1人しか思い当たらない。
俺は窓越しにインターホンの相手に返事をして立ち上がる。
「母さん、ハルが来たみたいだから、学校行ってくるよ。」
「そうみたいね。ソラ、あなた真剣に考え事してる時は周りが見えなくなるところがあるんだから気をつけて行ってらっしゃい。後、ハルちゃんにもよろしく言っといてね。」
「あぁ、わかってるって。今日も部活あるから、帰りは7時くらいになると思う。んじゃ、行ってきま~す!」
俺はカバンを持って玄関まで走って行き、靴を乱暴にはいて家を出た。
「おはよ、ハル。待たせたな。」
「あ、ソラくん、おはよう。ん~ん、そんなに待ってないよ、えへへ~。」
はにかみながら幼馴染みのハルが言う。
家が隣で同じ高校だから毎日一緒に通ってるが、可愛らしいハルの笑顔を見て、俺はやっぱハルの笑顔が好きだなぁって改めて思う。
こっちが照れちまうよ。
俺顔赤くなってねぇかな?
そんな事をかんがえつつも平静を装う。
「んじゃ、ハル学校行こっか。」
「うん。えへへ~。」
ご機嫌な時のハルの語尾は、いつも「えへへ~。」だ。
いつもの通い慣れた川沿いの道をハルと並んで学校へ歩いていく。
道中ジョギングしてる人にすれ違ったり、2人乗りしてるチャリンコに追い抜かされたりしながら2人でトボトボ歩く。
「そういえばもうすぐ文化祭だねぇ、今年はどんな出し物がいいのかなぁ?」
ハルが今思い出しましたとばかり聞いてくる。
「そうだなぁ、毎年おんなじようなやつばっかだから、今年はちょっと変わったやつがいいかな?今年で最後だし。」
「そうだねぇ、ソラくん何か考えある?例えば?」
その切り返しに俺は腕を組んでちょっとだんまり。
いや、ネタが無いわけでもないんだがなぁ〜なんて立ち止まって考えてると1台のスポーツカーが川沿いの道を飛ばしてきた。
おい、この細い道をそんなスピードで突っ込んでくるなよって思った瞬間、ハルが俺にダイブしてきた。
「ソラくん、危ないっ!!」
「嘘だろ、おいっ!!」
そのまま川沿いの道から土手に2人で転がり始める。
俺はすぐにハルを抱き締める。
が、転がるスピードが早くて目が回るぅ〜〜〜。
「うわっ、うわっ、やべ、あ、痛っ!! 」
所々石ころが痛い。
「きゃっ、痛っ、あ、舌噛んだぁ〜(泣)」
ハルは舌を噛んだみたいだ。
しかしスピードは緩むことなく転がり続け、こんなに長かったか?と思った瞬間穴に落っこちた。
周りが一気に暗くなる。
ハルは目をつぶって俺に抱きついている。
俺はハルを抱きしめたまま穴を真っ逆さまに落ちていく。
怖ぇ〜、ヤベー、マジ下見えないッス。
この穴どこまで続いてんのぉぉぉ〜〜〜。
俺の心の叫び穴の中をがこだました気がする。
穴を落ちるスピードが徐々に遅くなってきたと思ったら、
ド派手にドサッと砂山の上に落っこちた。
下が砂の山で良かったぁ。
コンクリだったらきっと死んでるぞ、あの高さから落っこちたら。
そう思うとゾッとする。
とりあえず落ちるところまで落ちたので、ハルの安否を確認してみる。
「ハル、大丈夫か?」
「うん、ソラくんが抱きしめてくれてたからハルは怖くなかったよ、えへへ〜。」
「そうか、良かった。」
ハルはケガをしてないようで、ホッと一安心。
やや暗いが周りを見渡してみると、どうやら地下道のようだ。
「何かの工事でもしてたのかな、あんな所に穴掘ったままにしとくなんて危ねぇよな〜。」
「ごめんねぇ、ソラくん。車がすっごい速さでこっちに来たからビックリして押し倒しちゃって。」
「あぁ、アレはあの車が悪りぃよ。あの細い道をあんなに飛ばすなんてな。とりあえずケガもしてないし、ここからさっさと出よう。」
「うん、そうだね。」
2人で砂の山を立ち上がって降りる。
「う〜ん、ハルはどっちにいけばいいと思う?」
目をこらしてみるが地下道は暗くて出口がどこにあるのかわからない。
「そうだね〜、ハルはこっちだと思うよ〜。」
ハルは落ちてきた穴を指差した。
その穴は砂の山から5メートル程の高さにポッカリあいている。
そりゃあ落ちてきた穴が出口なのは俺だってわかってるが、高くて入れねぇんだからしょうがねぇだろ。
まさかの天然をこのタイミングで発揮するハルは恐るべし。
「却下だな。あの高さじゃあ無理だ。」
わかりきってる解答をハルに告げた。
「だよね〜(笑)」
やっぱわかってんじゃねぇかよ。
「んとね〜、じゃあこっちかな。」
ハルは地下道の一点を指差した。
「ん、何でだ?」
「えっとね〜、風がこっちから流れてきてるんだよ。多分こっちが外に通じてると思うの。」
なるほど、確かに僅かだがこっちから風が流れてるな。
「よし、じゃあそっちへ行ってみよう。」
「うん。」
俺たちは風の流れてくる方へ歩き出した。