第17話 目指すはレソト⁉︎
サイフォンの馬車に乗り込んだ俺たちは、御者に任せて車内でくつろぐ。
一応何かに出くわしたらすぐに呼んでくれとは言ってある。
「サイフォン、レソトまではどのくらいかかるんだ?」
「そうですね、順調に行きますと明日のお昼頃には着くかと思います。」
「そうか、結構かかるんだな。ということはどこかで夜営するわけか?」
「はい、馬の疲れ具合にもよります。それと夜はモンスターの動きが活発になりますので、あまり動かぬ方が接触が減ります。夜の戦闘はそれなりに危険ですので、余程実力のあるギルド員を雇わない限りは難しいでしょう。」
「なるほどな。」
「ソラ殿とハル殿がいれば夜間移動も可能かと。」
俺たちはお昼を食べてから村を出たので、すでに昼は回っている。
そういえばこの二日でシルヴィーが少し大きくなった気がするな。
「ハル、シルヴィーちょっと大きくなったよな?」
「うん、そうだね〜。ちょっと体格がしっかりしてきたよね〜、シルヴィー。」
「ギャアギャア〜。」
っていってもまだ体長30センチくらいだがな。
牙も少しずつだが出てきているみたいだ。もうすぐちゃんと肉を噛めるようになるだろう。今は飲み込むしかできないようだ。
歯が生え揃った時には人を噛むなって教えてやらねば。
「モンスターが、この先にモンスターが出ました!」
御者が叫ぶ。
「よし、ハル、久しぶりの戦闘だ。気を引き締めて行くぞ!」
「うん!」
「シルヴィーは中で待ってろ!」
「ギャア〜!」
俺とハルはすぐさま馬車から飛び降りて、敵を確認する。
「アレはハーピィとキメラの群れのようです!ハーピィの空中からの攻撃に気を付けて下さい。キメラは頭が二つあり、尻尾は蛇の頭のようになっています。手数が多いのでご注意を。」
「ああ、わかった。」
サイフォンにどんなモンスターかを聞き、俺はエトワールを抜いて駆ける。
「ハル、数が多いぞ。補助を頼む!」
「うん、ソラくん、頑張って〜。」
距離は約50メートル程先だ。
俺はその距離を一瞬にして詰める。
こりゃあオリンピックでメダル取れるな。
そんな事を考えつつ、俺がモンスターに接近する間際にハルの援助魔法が発動する。
「加速!」
俺の速さがさらに加速する。
途端に敵の動きがえらくのろく感じる。
俺は目の前のキメラに攻撃を仕掛けた。
「疾風斬り!」
ヒュンヒュン。
二連撃で左の翼とワニのような頭の方を斬る。
翼はスパンと簡単に切断できた。
ワニ顏も口元が無くなっている。
「ギョワ〜!」
キメラのライオンのような頭が俺に迫る。
しかし、遅い!
俺は斬撃を返してながら、素早く後ろに回り込み、エトワールを振り上げ、尻尾を根元から切断。
このまま押し切る。
気合を込めて上から下にエトワールを振り下ろした。
「行くぞ、大切断!」
シュパーン。
小気味いい音を立てて1体のキメラが胴の部分で縦に両断され崩れ落ちた。
まずは1体。
俺の動きに出遅れたモンスター共が一斉にしかけてくる。
ハーピィが鋭いかぎ爪で飛び混んできたが、軽くいなしてカウンターで一撃を見舞う。
ハーピィの羽か腕かわからない部分を切り落とし、返す刀で背中から一閃。
こいつは脆い。
これで2体目。
俺は次のモンスターに狙いを定めて駆ける。
まだ10体程居やがるな。
キメラが後4体にハーピィが後6体だ。
次のキメラに狙いを定めた瞬間、ハルの攻撃魔法が炸裂。
「焰の舞!」
空中に居た6体のハーピィ共が炎の嵐に包まれる。
「キュルルルルゥー。」
ハーピィ共は豪炎の嵐に薙ぎ払われ、断末魔の悲鳴を残して灰塵と化した。
「ハル、スゲ〜じゃん。かなりの広範囲を一掃だな。」
「うん、えへへ〜。」
俺も負けてられないな。
目の前のキメラに狙いを定め、渾身の横薙ぎ一閃。
「はぁ〜、真空斬りぃ!」
素早い横薙ぎにより圧縮された真空の刃がキメラを襲う。
ザシュッ。
キメラがあっけなく真っ二つに。
俺はそれを確認すると同時に次の獲物へ駆ける。
身体がまるで風のように軽い。
「す、すごい!」
サイフォンが改めてソラの闘いぶりに驚きの声をあげる。
俺はそのままの勢いで残りの3体のキメラも難なく蹴散らし、ふぅ〜っと一息ついた。
「やったね、ソラくん!凄いよ〜。」
「ソラ殿、やはり惚れ惚れする素晴らしい闘い振りですね。いゃ〜、間近で見ると凄いです。流れるような無駄の無い動きと剣さばき。お見事です。」
「おう、そんなに褒めても何も出やしないぞ。ハルの魔法も凄かったぞ。アレでハーピィは一掃だったしな。」
「てへへ〜。」
ハルは満面の笑みを浮かべる。
俺もまぁ嬉しくないわけではないが、サイフォンの奴は買い被り過ぎだ。
あくまで俺の力は竜の加護の影響だからな。
ホント、シルヴェスタに感謝だな。この加護の力が無ければ、恐らく最初の闘いで命を落としていただろう。
俺はキメラ共の残した翼や尻尾、毛皮をサイフォンからもらった袋に入れる。一応キメラは帝国クエストの討伐対象だからな。
ハーピィの残したものはハルに渡しておこう。
「では先へ進みましょう。」
「ああ。」
皆乗り込み、馬車はレソトへ向けて走り出した。