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第16話 ベオン帝国に忍び寄る影⁉︎

ここはべオン帝国帝都、ベオルーン。

堅牢な城壁で囲まれた夜のベオルーン市街。まるでコロシアムをそのまま大きくしたかのような作りの白い城壁が囲う。

その城壁の見張り台に2人の人物がいた。

白銀のプレートメイルを纏った30才くらいの巨漢の男は雷斧(バリアクス)のガラハイ。

ブロンドの長髪に黒ぶち眼鏡、20才そこそこの黒のローブの女性は禁呪(フォビダーナ)メビウスその人である。


「あ〜、あ〜、あ〜。こんな夜中にあんなにモンスター引き連れてきてくれちゃってよ〜。うっとおしいったらありゃしねぇぜ。なぁ、メビちゃん、よぉ。」

「ガラハイ、いい加減その呼び方はやめてって言ってるでしょ。ブラックホールで異次元にぶっ飛ばすわよ!」

「なんだよ、呼びたいように呼ばせてくれたっていいじゃねぇかよ。そんなに怒んなよ。んじゃあよ、お嬢あのモンスターの大群をブラックホールで蹴散らしちゃってくれよ。」

「簡単に言うわね。あんな魔法使ったら、この辺一帯の地形が変わっちゃうでしょ!」

おいおい、そんな魔法を俺一人に使おうとしてたのどこのドイツだよ。

「しゃあねぇ、いっちょ暴れてくるか。お嬢がお怒りなんでな。」

「お嬢ってのもやめて!

普通にメビウスと呼んでちょうだい。アンタみたいな脳足りん(ノータリン)は勝手にしゃしゃり出てやられてくればいいのよ。」

「相変わらず手厳しいねぇ、メビ嬢は。」

ガラハイはニヤニヤしながら20メートルから30メートルはあろう城壁を一人飛び降りて行った。


「はぁ〜、ホント、ガラハイって究極の戦闘バカだわね。話通じないからこっちがイライラしてきちゃう。黙っていればちょっとはいい男なのに。」


そんな風に言われているとは知らず、当の本人はご自慢の雷斧バーティカルエンドを振り回し、雄叫びをあげてモンスターを薙ぎ払っていく。

「はぁ〜、

死にさらせデッドリースピーン!

冥府へ落ちろフォールダウン!

地獄へ帰れヘルクラッシャー!

滅びろそして逝ね滅殺崩襲撃!

死ぬまで泣き叫べ獅孔咆哮波!

天地雷鳴よ轟け崩雷冥嶽陣!

これで終わりだ斧顎翔雷斬!!」


一瞬にしてガラハイの周りに大量のモンスターの死骸の山が築き上げられる。


「ふい〜、いい汗かいたぜ〜。ま、こんだけ暴れりゃちょっとは減ったかな。とぉっ。」


ガラハイは垂直に飛び上がり、一気に城壁の天辺に移動する。


「嬢ちゃん、はい、タッチ交代。」

「なんでよ〜、めんどくさい。」

「お前もちょっと暴れりゃストレス発散できるぜ。」

「アンタと一緒にしないで!」


何者かの気配を感じて目をやると、黒のマントを羽織り、胸元を強調した髪の紅い女がフワリとくうに浮いていた。


「よくもやってくれましたわね、私の可愛い使い魔ちゃん達を。あなた達、泣いて謝っても許してあげませんことよ。オーホッホッホッ〜。」


その紅髪の女は手の甲を頬に当てて高らかに笑う。


「何だぁ、アイツは?

空中に浮いてんぞ⁉︎

おい、嬢ちゃん?あんな下品な笑い方をする女、早くやっつけてくれ。不気味だ。」


ガラハイがいかにも気持ち悪ぅという顔でメビウスに言う。


「アンタ何者?浮遊する術を使うということは古の魔術師(ロストマジシャン)ね。」

「今から死ぬ人に語る名前などありませんわ。オーホッホッホッ〜。」

さすがのメビウスも弄っと来たらしい。

こめかみに青筋が立っている。


ガラハイといい、この高飛車な女といい、どうして私の周りには馬鹿しか寄って来ないのかしら?


「では参りますわよ、あの世で後悔して下さいまし。

淫靡な夢(オーグルターム)。」


女がそう唱えた瞬間、二人に黒い闇が襲いかかる。


ブワッ。


「ありゃあヤベー雰囲気だな、とおっ。」

「ちっ、いきなり本気、

無効防壁バリイェスアングルティー!」

ガラハイは勢いよく後方に飛びすさり、メビウスは周囲に協力な防御壁を張る。


黒い闇はしばらく獲物を探すように漂っていたが獲物を捉えることができずに霧散し、消え去った。


「あら、あなた方そこそこやりますのね。その魔法も古の魔術(ロストマジック)ですわね。

いいでしょう、名前くらいはお教えして差し上げますわ。

私の名は、悪魔王ルシファー様の眷族が一人。魔族長淫魔のサチュリーヤですわ。以後お見知り置きを。」


「私はべオン帝国軍四騎聖が一人、禁呪(フォビダーナ)メビウス。あっちのデカいのは雷斧(バリアクス)のガラハイよ。」


メビウスは言いながら、原初の杖エンシェントケーンを油断無く構える。


だがサチュリーヤからは、先程までのビシビシと痛い程の殺気がすっかり消えていた。


「あなた方とは長いお付き合いになりそうですわ。お友達の方もいらっしゃったようですので、今日はこの辺で失礼致しますわ。またの逢瀬を楽しみにしております、では。」


言うや否やサチュリーヤの気配が完全に消え去る。


「ふぅ〜、どうやら一旦引いてくれたみたいね。」

「ああ、みたいだな。ほれ、シュヴァリエとソリューズが後ろから睨み利かしてくれてるからじゃね?」


いつの間にか、シュヴァリエとソリューズが後方で待機していた。

魔族のただならぬ殺気を感じて駆けつけたようだ。


「メビウス、先程の魔族はなかなか手強そうなやつなのか?」

「えぇ、そうね。あいつはロストマジックを使うわ。かなり手強いと思う。しかもいきなり高度な精神干渉系の魔術を使ってきたわ、ほぼ無詠唱でね。」

シュヴァリエに言いながら、杖を握っていた手のひらに汗をかいていたことを自覚する。


「ガラハイはどう見る?」

「あ〜、確かに気配無しでいきなり現れたり、消えたりされたんじゃあ倒すのは面倒そうだな。乳はかなりデカかったぞ。」

「そんな情報はいらん。ソリューズ、直ちに戻って軍議を開くぞ。ガラハイ、メビウス、そのまま警戒を頼む。」

「ああ、分かった。」

「えぇ、了解よ。」


返事を聞くとすぐ様きびすを返して王城の方へ戻って行くシュヴァリエとソリューズ。


かくして、べオン帝国と魔族との抗争の火蓋が切って落とされたのであった。


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