第13話 魔王伝承は厄災の始まり⁉︎
俺がトイレで何して、静かに部屋に戻るとすでにハルとシルヴィーが起きていた。
「あ、ソラくん、おはよ〜、えへへ〜。」
ホッ、良かった。
ハルはいつも通りだ。
いやむしろいつもの5倍増し可愛いかもしれん。
何故か超ニコニコしてるが、何かいい事でもあったのか?
「ああ、おはよっ。ハル、シルヴィー。ハルはえらくご機嫌だな。」
「うん、いい夢見たの〜、えへへ〜。」
「そうか、そりゃあ良かったな。よく眠れたみたいだし。」
「うん、ソラくんは真っ先に寝てたよ。」
「ああ、そうみたいだな。気が付いたら朝だったわ。皆起きてるし朝飯食いに行くか?」
「うん、そうだね。」
俺たちが部屋から出ようとしたら、ちょうどサイフォンがやって来た。
「おはようございます。ソラ殿、ハル殿。今からお食事ですか?」
「ああ、ちょうど良かった。サイフォンも一緒に行くか?」
「はい、ご一緒します。」
どうやらこの村の宿にはルームサービスのようなものは無いらしく、皆でランカル亭へ赴く。
店に着くと昨日の可愛い店員さんがやってきたので、軽食を適当に注文するとサイフォンが話を切り出した。
「この村に残る伝承なのですが、こういう言葉があると聞きました。
天より遣わされし竜の使者現るとき、悪しき魂が解き放たれ、混沌の魔王がゲヘナより蘇り、世界を喰らうと。
世界各地で度々厄災にみまわれる事が多いのはご存知でしょうが、恐らくこれらの厄災のことを指しているのではと言われています。」
ほお、そんな伝承が・・・って、竜の遣い?
おい、それってもしかして俺たちのことなんじゃ?
まさかなぁ、ありえねぇか。
朝飯が運ばれてきた。
さすがに朝からステーキって感じではないので軽食にした。
いわゆるランカルサンドだ。
これも結構うまい!
「なぁ、サイフォン。それって竜の加護を持つやつってことか?」
「はて、竜の加護者ですか?聞いたことがないですね。そうかもしれませんが、あくまで伝承ですので信憑性は低いかと。」
「そうか、ちなみに他にどんな加護があるんだ?」
「そうですね、私が聞いた事のある加護者は火、風、水、土、雷の精霊加護者と悪魔の加護者ですね。太古の昔には光と闇の精霊加護者もいたようですが、今のところはこのべオン帝国内では確認されておりません。」
「そうか、魔王伝承の他には何かあるのか?」
「いえ、この村に伝わる伝承は他に無いようでした。」
「そうか、すまなかったな。サイフォン助かったよ。」
ハルはシルヴィーとサンドイッチを仲良く頬ばっている。
ドラゴンはサンドイッチもイケるのか。
サイフォンは信憑性は低いといっていたが、現に俺たちは竜の加護者だ。
伝承が唯のおとぎ話では無いように思える。
「さて、食べ終わったし、ハルこの後どうする?」
「う〜ん、服屋さんとか無いかな?着替えとか欲しいなぁ〜。」
特に替えの下着が欲しいんだけどねぇ〜。ソラくんのせいで・・・、えへへ〜。
「そういえばそうだな。風呂にも入ってねぇし、替えの服は必要だな。」
ハルがニコニコしてるのは何でだ?
まぁ、いつもニコニコしてるんだが。
「サイフォン、この村は服屋とかあるのか?」
「はい、ありますよ。この村はランカルの織物も有名な村ですので、特産品になっています。」
「へぇ〜、そうなのか。じゃあ案内してくれ。こっちの準備が整い次第村を出発しよう。」
「はい、ありがとうございます。では服屋に参りましょう。」
ランカル亭を出て歩くこと数分。
高床式では無い平屋の建物が見えてきた。
その建物の前には色とりどりの服が吊り下げられ、特に女性のお客さんで賑わっている。
「あれが服屋ランカールです。」
「サイフォンさん、案内ありがとうございますぅ。ソラくん、私ちょっと見てくるね。シルヴィーをお願い。」
「おう。」
そう言ってハルは早足で店に入っていく。
やっぱ女の子だねぇ〜。
俺もハルの後から服屋に入る。
へぇ〜、これがランカル織物か、なかなか綺麗だ。
色鮮やかなデザインのものや、質素なデザインのものもある。
おっ、迷彩柄のようなデザインを発見。これなら俺でも着れるな。
「あら〜、お兄さん、お目が高いわ〜。それはランカルの毛を編み込んだアーミージャケットよ。緑のローブにピッタリですわ。」
「そうか、ちなみ肌着や下着なんかもあるかな?」
「は〜い、もちろん置いております。こちらにございますわ。」
「ありがとさん。」
おぉ、こっちにはランカル皮で作られたボクサーパンツやトランクスがある。
「なかなか渋いデザインだな。」
「お兄さんのようなお若い方にはこちらが人気ですわ。」
と言って薦められたのはヒョウ柄のスパッツタイプだった。
ふむ、なかなかかっこいいな。
「じゃあこれとこれと〜、この3つで。」
「は〜い、ありがとうございま〜す。」
ところでハルはどこだろ?
俺は店の中をキョロキョロ見回した。
お、居た。
どうもハルは下着で悩んでいるみたいだ。
俺は品物を持ってハルの隣に移動し、
「ハル、いいのあったか?」
「あ、ソラくん。うん、これとこれで悩んでるの?ソラくんはどっちが可愛いと思う?」
と聞かれて下着を見ると、何ともまぁ、セクシーな下着だこと。
若い人向けのヒョウ柄Tバックのものと可愛いらしい花柄デザインのもので悩んでいた。
個人的にはヒョウ柄をオススメしたいが、俺はあえて花柄を推した。
「花柄の方が可愛らしくてハルのイメージに合ってると思うぞ。」
「やっぱりソラくんならそう言うと思った〜、えへへ〜。」
何だよ、分かってんなら悩む必要ないじゃないか。
「もしかして両方気に入ったのか?」
「うん。」
ニッコリと笑うハルに、
「じゃあ両方買ったら?」
「うん、そうする、えへへ〜。」
すでに手に持っていた下着2点と合わせて4点の下着を買う事に。
俺のもついでに渡す。
「この3つも頼む。」
「うん、あ、このヒョウ柄、ハルとお揃だね、えへへ〜。」
ニコニコで購入し、2人で店を出た。
「サイフォン、待たせたな。」
「いえいえ。」
律儀に店の前で待ってくれていたようだ。
「そういや、世界地図って無いのか?」
「世界地図ですか?そうですねぇ、この村にはべオン帝国図ならありますが、世界規模の地図は無いかと思います。帝都に行けばあるかと。」
「そうか、それじゃあとりあえずべオン帝国の地図を頼む。土地勘がねぇからよ、少しずつでも覚えたい。」
「ではギルドへお連れします。」
「ギルド?」
「えぇ、地図はギルドで購入できます。それと参考までにお伝えしますと、ギルドで登録を行えば刻印が支給され、それが身分証明になります。」
「そうか、それは助かるな。」
ということで俺たちはギルドへ赴く事になった。