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セイバー   作者: 黒海
1/3

最後の龍を受け継ぐもの

3ヶ月前

「なんでだよ・・・なんでだ!!」

家に帰るとそこには焼き払われた家と血まみれで倒れる家族がいた

「・・・」

そして、その屍の中心に最もよく知る男が立っていた

「どうして・・・どうしてこんな事を・・・・・・兄さん!」

「・・・いつになっても泣き叫ぶだけか・・・」

兄は俺の視線から目を逸らす

「あら、知り合い?」

「・・・黒兎」

どこからともなく現れた黒いローブの人影は兄に近づいて会話を続ける

「他のところは終わった

指定人物以外も襲い掛かってきたからまとめてやったけどね」

「他・・・って」

今日は年に4回の分家の当主が集まる日で目の前にはその当主たる人物達が倒れている

「そうか・・・、では戻ろう」

「いいの?

あの子は始末しなくて」

兄は背を向けた

「・・・構わん、どうせ出来損ないだ」


・・・・・・ブチッ


体中の冷え切った血が沸騰し、怒りがこみ上げる

その怒りが体に眠る力を呼び起こす

「この右腕は龍人の腕」

右腕の筋肉が隆起し、熱を帯びていく

ビキビキビキ!!

その腕はまさに龍が如し

「あああああああああ!!!」

絶叫のもと屍を超えて、拳を振りぬく


ぱすんっ・・・


岩を砕き、地面を割る力をもつ拳が生身の手によって受け止められていた

「・・・散れ」

フッ・・・

兄に放り投げられ体が宙を舞う

「我に宿りし血龍よ、汝が牙は天を撃ち地を裂かん」

拳に力が凝縮される

その光景から俺は兄の姿を巨大な龍と誤認してしまうほどだった

ブンッ・・・

落下と同時に振りぬかれた拳は俺を捕らえた

「がふっ・・・」


フッッッッッッ!!!!!!


腹部に打ち込まれた打撃によって俺の体は自由を失い、100mほど飛ばされ森へと落ちた


俺が気付くと家の裏にある滝の近くで仰向けになっていた

動けない・・・

兄は100年に1人の天才と呼ばれていた男

その兄がどうしてこのような行動をとったのかわからなかった


現在

「では、これより龍堂家の管理は我々『院』が行わせていただきます」

龍堂家

代々『龍神法』を伝承する異能の血脈であり、その分野において頂点に君臨する

龍堂家を本家とし、分家に雷堂家、火堂家、水堂家、風堂家、地堂家の5つの分家がいたが、今回の事件で全滅していた

生き残ったのは、俺と行方不明の兄だけだ

「それに伴い、龍堂真弥(りゅうどうしんや)様につきましては院に所属していただきたいと考えております」

異能者、契約者の集団であり、日本最大の規模と実力を誇る

院に所属していると異能に関する仕事が与えられ、報酬と院内での地位が与えられる

龍堂家も院と提携しており、院からの仕事も請けていたようだ

「申し訳ないのですが、私は出来損ないでして・・・院に入れるほどの実力を持ってはおりません」

「ですが、異能者、契約者はどこかしらの結社に属していないと最悪の場合、討伐される可能性もあります

自分の身を護ると考えて・・・」

「申し訳ありません」

強い言葉で担当者の言葉を遮った

「・・・申し訳ありません」

言葉には出来ない思いだった

「・・・わかりました

でしたら、気が向いたらこの事務所を訪ねてみてください」

担当者は、1枚の名刺を取り出し裏に何か書き込んでこちらに渡した

「これは?」

「とある探偵事務所です

あなたの悩みの解消・・・とはいきませんが、探したいものがあるならそこへいくといい」

担当者はそういい残し、帰っていった


「はぁ・・・」

俺は最も被害が少なかった風堂家の家に荷物を移して生活している

というのは他の家は焼き払われたり、残っていてもあまりにも大きすぎて生活しづらいというのが理由だ

死体の処理や葬儀の手続きは院の担当者が行ってくれた

最も密葬という形で済ませたのだが・・・

ピンポーン

「はぁい、どちら様ですか?」

扉を開けるとそこには白いスーツの男が立っていた

「夜分に大変申し訳ない

こちらは龍堂家の方の屋敷で間違いないでしょうか?」

「はい・・・どちら様でしょう?」

「私はかつて当主様にお世話になったものです

もし、よろしければ仏壇で手を合わさせてほしいのですが」

俺はその人を仏壇まで案内した

「・・・」

その人は手を合わせ、しばらくの間黙っていた

しばらくすると彼は懐から分厚い封筒を取り出し、仏壇の脇に置いた

「あの・・・」

「しばらくの生活費にでも使ってください

御当主と火堂家の親父さんには大変お世話になりましてね・・・よく、3人で酒を飲んだものです

家の管理は院が?」

「あっ、はい・・・先程お願いしました」

「左様ですか

私は個人的な面識で今日お邪魔させてもらっています

本来は、私の肩書き上よろしくはないのでしょうが・・・」

スッ・・・

男は名刺を差し出した

「私は協会代表をしています

赤倉秦(あかくらしん)と申します

表の世界では赤倉組代表取締役をしておりますので、どうぞお見知りおきを」

「はぁ・・・」

「もし困ったことがあれば、連絡をください

それでは、私はこれで」

「お金といい、色々と・・・何かすみません」

赤倉を玄関まで見送る

「いえいえ、これくらいのことであればたいしたことはありません

本当にお世話になったのは私の方なのですから」

赤倉はそういって去っていった


その夜

「あっ・・・つぅ・・・」

3ヶ月前のあの日から繰り返される惨劇のフラッシュバックが今日も起きていた

ここ3ヶ月、満足に睡眠という眠りを取れた日は1度もない

だが、今日の悪夢は何かが違った

普段、兄の一撃で夢が覚めるというのに今日はその瞬間で時が止まった

「何か・・・違和感はないかな?」

それは誰の声だったのだろう

「君の兄上の実力で本気の一撃を受けて、果たして君の命は助かったのだろうか」

本家と分家の当主達をほぼ無傷で殺戮した兄にとってそれは不自然といえる

もしかして・・・俺は生かされたのか?

「もし、その疑問を解く気があるならば・・・滝の祠へ来い」

そうして夢は覚めた


滝の祠

実家の裏にある滝の裏側にある代々の当主を祭っている祠

ただし、入り口には門があり、当主に引き継がれる鍵がなければ開かれることはない


起きた俺は3ヶ月ぶりに滝へと足を運んだ

「・・・」

滝の祠には一度、子供時に連れてきて貰ったことがあるが、その時は特段変わった様子はなかった

滝をかわすように裏側に回ると祠を護る門は健在だった

この門には特殊な術が施されており、破壊しようとするとその力が跳ね返るようになっている

最も、鍵がなければ開くわけでもないのだが・・・

ぎぃ・・・

「・・・なんで?」

鍵は院によって回収されていったし、院はこの場所を知らない

それなのに鍵が開いている!?

俺は疑問を解消する為、門の中へと入った


・・・ようこそ、最後の龍を受け継ぐものよ

そこには人の形をした何かがいた

「なんだ、あんたは」

気を張り、臨戦態勢をとる

こういう体質だと悪霊や怪物などを視認することも少なくないが、こいつはまるで別次元のものだ

・・・久しぶりというには今朝話したばかりだが、ここに来てもらったのはもう10年以上前になるか

「前に来たとき・・・だと?」

覚えていないか・・・お前は昔ここへ来たのだ・・・私に会うために

「会い、に?」

そう・・・お前の体に施された封印は・・・我が施したもの

出来ることなら、その封印は解かれぬことを祈っていたが・・・世界はそれを許さなかったようだ

「何を言っている!?」

・・・今までお前の家系が伝承してきた技とは『人が龍となる法』

しかし、我が真に残した法とは『龍を殺す法』なのだ

「・・・どういうことだ」

かつて、我は龍を殺した

その影響で我の血には『龍の呪』を受けてしまい、子、孫に龍の力が生み出されるようになってしまった

人の中にいる龍はほうっておけば暴走し、その本人も食い殺す

故に自ら龍となることでその力を制御させたのだ

「・・・」

だが、龍になる法もまた苦行の道

龍殺しの道は途絶えるのが目に見えていた

そこでこの祠をつくり、代々の力を持つものの遺骨を納めることで我が意志を存命させてきたのだ

「・・・つまりあんたは・・・」

・・・我は初代龍神

龍殺しを極め、龍となる法を生み出したもの

我が血を引きしものよ、これよりお前に施した4つの封印のうち1つを解く

その後、7人の王を探し、自分の行く道を選ぶのだ

7人の王との出会いはお前を成長させるだろう

そして、進む道が決まったならばもう一度ここに来い


人の形をしていた何かは、そういうと霧散した


パチンッ!


体の中で何かがはじけたようだった

体に激痛が走り、血液が逆流しているかのようだった

苦しみ、のた打ち回りながら、天井に描かれた2匹の龍と刻まれた文字に気付いた

そこには


黒き龍が終わりを告げ、白き龍が再生を奏でる


そう刻まれた

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