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とある病院で見た、白天使と黒天使

作者: 神谷透
掲載日:2026/04/17

私は、子どものころ怪我が多かった。


その中でも、一度だけ命に関わるような大怪我をして入院したことがある。



当時の担当看護師は、怖かった。



事故で腎臓を傷つけ、尿が出にくくなっていた。


出なければ、管を通して排尿させる必要があった。



ある日、親が病室を離れたときだった。



担当看護師のAが、私の横まで来た。



「今日、おしっこが出なかったら管を入れるからね」



そう言って、少し笑った。



「昼からやるから。それまでに出さないと痛いよ」



そのまま、何事もなかったように病室を出ていった。



私は怖くなった。



午前中ずっとトイレに座っていた。


激痛が走った。


それでも力を入れ続けた。



しばらくして、血の塊と一緒に尿が出た。



親は安心したように、ナースコールを押した。



私は、看護師に脅されていたことを親に言っていなかった。


だから、コールを押すことを止めなかった。



担当看護師は病室に来ると、一瞬だけ私を見た。


でも、すぐに親の方へ向き直った。



「自尿があってよかったですね」


「あと数日、様子を見て問題なければ退院になると思います」


「詳しいことは後で先生から説明がありますね」



笑顔だった。



私には、何も言わなかった。



夜になると、別の看護師が巡視に来た。



「お腹は痛くない?」


「ちゃんとおしっこは出てる?」


「何かあったら、いつでも呼んでね」



その看護師は、優しかった。



私は思わず聞いた。



「昼の看護師さんは、夜は来ないんですか?」



看護師は少し考えてから言った。



「ああ、Aさんは昼だけなんだ」



「来てほしかった?」



私は、首を横に振った。



それを見た看護師は、少しだけ笑った。



「大丈夫。今日はもう来ないから」



「安心して寝ていいよ」



そう言って、病室を出ていった。



その後、私は何事もなく退院した。



退院の日、看護師Aの姿はなかった。



私は、夜勤の看護師のような人になりたいと思った。



人の気持ちを察して、


安心させることのできる人。



それが、看護師を目指した理由だった。



そして私は、精神科で働くようになってから、


もう一度“黒天使”に出会うことになる。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


同じ看護師でも、

人によってこんなにも印象が違うのかと、

子どもながらに感じた出来事でした。


あのときの恐怖も、

夜勤看護師の優しさも、

今でもよく覚えています。


だからこそ、

自分はどちら側でありたいのかを、

今も考え続けています。

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― 新着の感想 ―
 時間帯によって現れるタイプが異なるアメ担当・ムチ担当混在の病院……子供にとってギョッとする体験ですね。 終盤の出来事にも驚きました。
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