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黒角の魔聖女  作者: 未羊


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第67話 道化とメイド

 道化師のような姿である魔族クラウン。

 変なところで伸ばす癖があったり、少々芝居がかったような言動が目立つ、実に気持ち悪いタイプの魔族だ。それでいて、死んだ人間を操っていたりする。


死霊術師(ネクロマンサー)ですか。さすが魔族、言葉遣いも趣味も非常に悪いですね」


「こーれはー、じーつに失れーいでーすねー。さーすがにー寛容なミーもー、あーたまにーきーましたよー」


 ブラナが露骨に嫌う態度を見せているために、クラウンはかなり怒りをにじませているようである。


「魔ー族のくーせにー、ミーたちにー、さーからうでーすかー?」


「私が従う相手はただ一人。お嬢様だけでございます。お前たちとはそもそもなれ合うつもりなどありませんよ」


「オーウ、そーれはー、残念でーすねー」


 ブラナからはっきりと断られて、クラウンはとても悲しそうである。


「しかーたあーりませーんねー。ミーたちに逆らーうのであればー……」


 クラウンは残念そうに顔に手を当てながら笑うように話していたかと思うと、いきなり武器を構えてブラナを睨み付ける。


「死んでーもーらいまーす!」


 取り出した大きな鎌を手に、クラウンは標的をブラナへと変更した。


「ミーの可愛ーいおー友だちー。雑ー魚の相ー手をたーのみますよー」


 クラウンは出現させた死体に、引き続きコークロッチヌス子爵の私兵たちの相手をさせている。


「かはーんしーんのクモはー、実に醜ーいでーすねー。きれいにー殺してー、コレクショーンにするのでーす」


 ブラナを見つめながら、クラウンの顔が怪しく笑みを浮かべる。

 だが、その表情に怯むブラナではなかった。なにせブラナは元暗殺者。その程度の笑みなど、何度向けられてきたことか覚えてもいられないくらいだ。

 ブラナは短剣を構えて、楽しそうに微笑んでいる。


「これは遠慮は要らないといったところでしょうか。実に、楽しめそうですね」


「ミーの笑みにーも屈しなーいとはー。ひひっ、楽しーめそうでーすねー」


 二人して獲物をがっちりと握りしめる。


「これ以上、コークロッチヌスの地で好き勝手はさせません。少なくとも退いてもらいます」


「やーれるものなーら、やーってごらんなさーいっ!」


 ブラナとクラウンとの間で、バチバチとした火花が散り始める。

 コークロッチヌス子爵領を守る戦いがここに始まったのだ。


「それっ!」


「きひっ! そんな攻撃、当たりませーんよ!」


 ブラナが先制攻撃を繰り出すと、クラウンは余裕で攻撃を躱していた。

 だが、ブラナはなぜか余裕の笑みを浮かべている。


「さあ、コークロッチヌスの兵士たちよ。早く領民を守りに行きなさい!」


 ブラナは、コークロッチヌス子爵の私兵たちへと声をかけていた。

 よく見てみると、クラウンが復活させた死体たちは、クモの糸によってがんじがらめに捕らわれていたのだ。


「なぜ、魔族が我々を助ける」


「お嬢様と私の望みだからです。さあ、こいつは私に任せて行きなさい!」


「くそっ、魔族に借りを作りたくはないが、この場は感謝する!」


 隊長と思しき男は、ブラナの作った隙を利用して、クラウンのそばから離れていく。


「逃ーがしませーんよ!」


「あなたの相手は私ですよ!」


 追いかけようとするクラウンを攻撃し、ブラナは自分へと注意を向けさせる。


「あーあ、ミーたちの邪魔をすーるなんて……、悪い女性(ひと)はおーしおきでーす!」


「望むところです!」


 バチバチとした火花を散らすブラナとクラウン。

 邪魔となる兵士たちを遠ざけたことで、ブラナは安心して戦えるというものだ。

 ただ、クラウンの実力にはかなり警戒をしているようで、少しばかり冷や汗が浮かんでいる。

 しばらくの間、二人は睨み合いながらじりじりと様子を窺い合っていた。


 ―――


 一方、吹き飛ばされた少年の魔族はというと……。


「あたたたた……」


 たくさんの木々をなぎ倒し、地面にまでめり込んでいたので、相当のダメージを負っているようである。


「くそっ、なんだあのアラクネは……。この俺がここまでコケにされるとは思わなったぜ。ペッペッ」


 口に入ってしまった土を吐き出しながら、予想外の事態を理解しようしているみたいだ。

 だが、さすがに地面にめり込むほどの強い攻撃を受けたために、少年の魔族は思ったよりもダメージを受けている。

 とはいえ、命令を受けてやって来た以上、このままおめおめと帰るわけにはいかないというものだ。


「なんとしてもあのアラクネにやり返してやらねえといけねえ。あの実力からすると、クラウンでもやりづれえだろうしな。俺をここまでコケにした報いを受けてもらわなきゃ、俺の気はおさまることはねえ。倍返しにしてやる」


 完全に頭に血がのぼっているらしく、ブラナへとやり返すことばかりを考えているようだ。

 一人だけ離れた状況なのだから、ブラナたちを放って任務を遂行すればいいというのに、魔族の高いプライドがそれを邪魔しているようだった。


「この俺をバカにしたことを、後悔させてやる!」


 少年の魔族は、なぎ倒された木々を目印にして、クラウンのところへと戻っていくことにしたようだ。

 軽く跳躍したかと思うと、ものすごい速さで元の場所へと戻っていく。魔族というのは身体能力がとても高いのである。

 ただ、その反面、先程も言った通りにプライドがやたらと高い。そのため、予想外のことが起きると周りが見えなくなってしまうという欠点も持っている。それが、少年の魔族の今の行動につながっているのだ。


「必ず、殺す」


 少年の魔族は、険しい表情を見せたまま、元の場所へと戻っていったのだった。

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