王宮編1
それから、一時間強、やっと、町の城壁門にたどり着いた。
門の前は堀になっており、水が流れているようだ。
「ブライアン殿下が、紅の巫女様を無事保護し、帰還されたぞ!!
門を開け放て!!!!」
すると、うおおおおおおお!!!!
というような、空気を震わせるような歓声が、城門の奥から聞こえた。
そして、門は、上から落ちてくるように開き、そのまま堀と町をつなぐ橋となった。
開いた門の先には、光の道?いや違う、道脇にずらりと、
皆、松明や、ランプを持って、頭を下げて、並んでいた。
「おかえりなさいませ、ブライアン殿下、アトランティス首都アトラスに、
ようこそいらっしゃいました、紅の巫女様・・。」
みな顔を上げていく、そして紅の巫女の顔を見た者だけが、固まっていった。
「女神だ…。」
誰かが、そんな事をポロリと言った。
人間離れした美しさ、闇の中でも光り輝く赤い艶やかな髪。
深すぎる引き込まれそうな赤い瞳、紅を引いたような赤い唇。
額に輝く紅色の宝神石
王子に抱きかかえられるようにして、白馬に乗って近づいてくる姿は、
その神々しさに、みな息をのみ。目が離せなくなった。
そんなことは、もちろん本人の健太は全然分かっていなかった。
ただ、呆然として、いきなり訪れた感覚に、支配された。
自分は、ただのサラリーマンで、時々飲みに行くのだけが楽しみで、
そんな人間だったはずだ・・。なんなんだこれは?
来てから初めて、本当の意味で異世界に来たのを実感した。
そして、自分が、自分ではなくなってしまったことを感じた。
俺の人格とか、性格とか、そんなの全然知らない人たちが、
紅の巫女というだけで、みな頭を下げている。
気持ち悪い。吐き気がする。自分が、自分じゃないような、
自分というものを否定されてるような感覚
ただ一人よくわからない闇のような場所で、漂っている。
孤独孤独孤独・・・。
「巫女殿!!巫女殿!!」
王子の声がとうのいていく、意識の中、聞こえていた。
(ちゅんちゅん)
眠い・・まぶしい・・。もうちょっと寝たい・・。ん?まぶしい!?
うそおおおおお!!やべえええ!!!!!!!ちこくだあああああ!!!!!
一気に意識を覚醒させて飛び起きた。
「目覚まし時計のやつ俺を裏切りやがったなああああ!!!!!
メガネ!!メガネ!!どこいったあああお前まで、俺を裏切る気かぁ!!
鬼課長の説教どんなか知ってるのか?一時間ねちねちねち(×100)
おんなじことを言われ続けられる、あの苦痛を!!
説教してる暇があったら、仕事しろよって!!!メガネええ出てこい!!
お前のせいにしてやるかんな!!!」
周りを見回しても、目覚まし時計どころか、メガネまで無い!!
ってか・・ここいつものベットじゃなくないか?俺のベットのシーツこんな真っ白な奇麗なのじゃねえし・・。
それもメガネ付けてなくても景色がはっきり見える。
「くっくっくあはははは・・。」
急に聞こえた笑い声に、ベットの横を見ると、なんか色気を垂れ流してるような、
王子とはまた違った金の髪と深い青の目を持った胸糞悪い、美形が大笑いしていた。
涙でるまで、笑うのは、失礼じゃないっすか?
思い出した。昨日よくわからない世界に巫女として召喚されて、
それも、見た目も性別も変わってた。おわり。
でもひとついいたい、笑われる筋合いはない!!!
「相当いいお目覚めだったみたいで・・・ぷっくく・・。」
こいつ!!!!美形なのをいいことに、皮肉いいやがって!!
サラリーマンには、遅刻は死活もんだいなんだぞおお!?
顔がいいからって、何でも許されるとはおもうなああ!!
・・・大体は許されるかも知れないけどなあ!!
だが、そんな女ばっかりだと思うなよ!?
「そうですわね、とてもいいめざめでございましたわ・・。
誰かしらんやつに、笑われて、皮肉言われるまではな・・。」
完璧な笑顔で言い放ってやった。
少しあっけにとられてる。よし、課長夫人たちの、
笑顔で繰り広げられる、冷たい戦いを見てきた俺をなめんな。
「・・ふふくあははは・・本当に面白いね・・巫女姫様?
僕の名前は、レイン・バルスト・ルーベル・アトランティス、以後お見知りおきを・・。」
顔が一瞬まじになった。こいつ侮れない。
あれ?名前にアトランティスってこいつ王族なのか!!
そんな事を思っている間に、手首を優しく持ち上げられ・・・
え、これって・・やっぱりかああ!!!!!お約束!!!
レイン?は俺の手の甲にキスしたかと思うと、さっと部屋を出て行ってしまった。
とりあえず、俺は、シーツで手の甲を拭いた。
あとがき
王宮編に入ります。
健太の心理が、難しかったです文才を誰か下さい・・。
新キャラ出ました!!!!
次の更新は、2日更新はきついので、5日の予定です。
誤字脱字の報告は、ありがたいです。
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