序章「おとぎ話」
ゲームのように舞台からのお話になります。初めての作品となりますので、何卒ご容赦ください。
遥か昔、それは千年も前に遡る。アスカティアという王国がありました。そこに住む人々は精霊と共存していました。風の精霊は爽やかな風を吹きわたらせ、水の精霊は清い水を創りだした。火の精霊は強かな炎を魅せ、地の精霊は大らかな大地を護っていた。シルフ、ウンディーネ、サラマンダー、ノームの四大精霊との契約で、精霊は人々の生活と世界の均衡を守っていたのです。
しかしある日、王城の中に不思議な裂け目ができました。禍々しい黒紫色の靄の中から、見たこともない種族が現れたのです。すぐにそれは王様の耳に届き、騎士たちを呼びました。その種族たちには全く歯が立たず、窮地に追い込まれました。王様はそんな異形な者たちの姿を見ることになります。
「初めてお目にかかる。我はサマエル。」
たった四人の部下を引き連れて現れた者はそう名乗りました。サマエルは自分たちのことを魔族と名乗り、この国の土地を寄越せと要求しました。王様はとても悩みましたが、彼に選択肢はありませんでした。そうしなければ、皆殺しにすると脅されたのです。見せつけのように傷だらけの部下を差し出されてしまい、そうすることでしか民を守ることが出来なかったのです。
摩訶不思議な力を持つ魔族。魔法でも、武器でも及ばぬ彼らに、王様は王都を明け渡すことを決意しました。アスカティア王国の人々は追い出され、近くの村に寄せ合いました。王様は武力国家であるエリアル帝国へ使いを送り、協力を仰ぎました。エリアル帝国の皇帝は他人事とは思えず、アスカティア王国と手を結ぶことを決意しました。
しかし、どんなに強い兵士を魔族に仕向けても、どんなに強い武器を用意しても、魔族には敵いませんでした。しばらく彼らの小競り合いが続いているときのことでした。村人たちは、王様が見たという裂け目を見つけたのです。それは、綺麗な湖の上に現れました。月に照らされ、現れたのは白い羽が生えた人間でした。天使と名乗る彼らは魔族を追ってこちらの世界にたどり着いたのでした。
天使と四大精霊、アスカティア王国、エリアル帝国は力を合わせて魔族たちと戦いました。天使たちが施した加護のおかげで武器や魔法が通じたのです。魔族の中でもサマエルの部下たちが強く、苦戦を強いられる中、ただ一人の天使がサマエルと対峙しました。
「我が名はアズライール。神の命により、サマエルよ、貴様を討つ。」
サマエルは愉快そうに笑いました。しかし、サマエルが纏っているものは紛れもなく、殺意そのものでした。嘲笑をみせ、サマエルはアズライールに告げます。
「神?お告げだと?そんなものを理由としてあげるな!貴様らの言葉で告げよ!我は宣言する!我らを滅ぼさんとする貴様らを、捻り潰して見せよう!!」
サマエルは圧倒的な力を見せます。何百、何千、何万の兵士、天使、精霊が倒されていく。アズライールは皆の力を借りて戦います。兵士や魔導士、天使たちは残りの魔族を抑え、精霊たちはサマエルの力を押さえつけました。ようやく隙をみせたサマエルに、アズライールはトドメを刺しました。しかし、サマエルの命を奪うことは叶いませんでした。
「ふふっ……あははははははは!!」
狂ったように笑うサマエルは力を溜め始め、自分もろとも壊そうとしました。アズライールは天使たちを呼び寄せ、サマエルを封印するように努めました。サマエルは最後まで抗いましたが、力が弱まっていたため封印することに成功しました。
サマエルの力を四つの宝玉に注ぎ込み、本体は湖の底に眠らせました。アズライールは四つの宝玉を四大精霊たちに預けました。決してそれを壊してはならない、使ってはいけない。さすれば、サマエルが力を取り戻し、永遠の眠りから覚めるだろうと残したのです。
それから人々の生活に平和が訪れたのでした。