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慶太郎、アジフライの迷宮に潜る

ウオヌマでコシヒカリを大量に購入したのちに、隣村で飯ごうと土鍋、それからドワーフの卵焼き専用フライパンをハジマリ卵と交換した。ハジマリの卵は時間停止のマジックバッグに大量にある。これでいつでもTKGが食べられる。


ただ、だし醤油は量がないから心もとない。乗り合い馬車の商人が「調味料は魔都のバザールで買った」の言葉から魔都エルヴィスを目指すことにした。




「魔都まで川沿を進んでいけばいいけど……、途中の"アジフライ"って町が気になる。川沿いなのに、アジが採れるのかなあ。」




地図を広げると、アジフライとの記載。


シスターに習ったこちらの言葉、だいぶ勉強したけど間違いはないはず。なんだよ、アジフライ町って。




「アジフライに行くのか? そんな装備で大丈夫か? 」


アジフライ町への道中、筋肉ムキムキな冒険者に声を掛けられた。


「えっ、そんなに危険なんですか? 」


「そりゃアジフライといえば迷宮だからな。」


「えっ、迷宮って、モンスターがいたり、宝箱があったりする……―――え、じゃあ宝箱でお宝がゲットできたりします? 」


「そりゃもちろん! 宝箱から美味しいアジフライが出るからな! 」




迷宮都市アジフライ。


その迷宮の宝箱から出る、滅多に出ない宝物―――それがその名の由来となったアジフライ。


衣はサクッとしていて、身はフワッフワで旨味の汁がじゅわわわーっと来るらしい。青魚特有の臭みは一切なく、上質な白身魚のような品のよい味わいながら、アジ特有のうまみが凝縮されているそうな。


いや、宝箱と言ったらポーションとか金銀財宝とか魔法の道具とかじゃないんかい!と、ツッコミたくなるが、冒険者氏の熱いアジフライ推しの話を聞いているうちに慶太郎の口には唾液が溜まってきた。




「俺も、アジフライが食べたい! 」




こうしてアジフライ目的で冒険者ギルドに登録した慶太郎は、"どうのつるぎ"を片手に迷宮に入ることにしたのであった。


迷宮では、アメーバみたいな"スライム"を突っついて倒したり、角の生えたウサギを斬り倒してみたりしたが、ゲームのようにレベルが上がったのかどうかは慶太郎には分からなかった。ゲームのようにステータスをみる方法がなかったからである。


慶太郎の感覚だとレベルが上がったというより、コツをつかんだみたいで楽に倒せるようにはなった気はしている。


初心者迷宮とも言われているらしく、へっぴり腰な慶太郎でもまあまあの活躍ができている。


どうのつるぎで魔物を、倒すと砂が崩れるみたいに死体が消えて、いわゆるドロップ品が出ることがあるが―――




「ドロップ品が卵とピクルスと卵ソースマヨネーズなのは、タルタルソースを作れってことなのかね……。」


「え、君"タルタルソース"作れるの? 魔王様の言ってたアジフライ専用ソースのタルタルソースだよ!? 」




宝箱には恵まれなかったため、一度迷宮から出て、ギルドにやってきた。手に入れたドロップ品を納品するとふくよかな受付の女性が、慶太郎の独り言に反応する。




「タルタルソースも魔王様なんですねー…。アジフライ専用って訳じゃなく、他にエビフライとか鶏をあげたものとか、なににつけても美味しいヤツです。作れるっていうか……、すごい昔に一回だけですけどね。玉ねぎとかレモン汁なんかも使うんですけどね。」


「はー、ノームはそんなものまで作れるんだねえ。この迷宮は、もちろん玉ねぎもレモン汁もドロップするよ。」




慶太郎のいう昔とは、もちろん以前の世界でのことだ。調理実習で作った記憶があるだけである。


「茹で玉子も玉ねぎもピクルスもみじん切りして卵ソースと混ぜるだけですよ。そのあと、レモン汁とかコショウで味を整えるんですけど。魔王様は作り方まで残さなかったんですか? 」


「へぇ! 思ったより簡単そうだね。残念ながらタルタルソースって名前しか残らなくてねえ。魔王様がアジフライを手に入れたときに"タルタルソースがあったらもっとおいしい"っておっしゃっていたのよ。あなたと同じようにドロップで材料はそろってるとも言ってたから、またこの町に来たら聞かなきゃって町長とも言ってたけど……。ねえ、ノームの坊っちゃんが代わりに教えてくれる? ギルドのクエスト扱いにするよ! 」

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