和尚様と小僧さん
和尚様が、小僧さんを連れて、田んぼの中の道を歩いていました。.
「――これ妙然、拙僧より先に行く奴があるか」
和尚様は、自分を追い越そうとした小僧さんを呼び止めます。
「和尚様が歩くのが遅いので」
「遅くかろうと、影を踏まぬよう少し後ろを歩くものだ」
「わかりました、和尚様」
しばらくして。
「一休みするか」
和尚様が振り向くと、小僧さんがいません。
東西南北どちらを向いてもいません。
「はぐれたか? おおいっ、妙然」
「はい!」
「うわっ」
小僧さんは、和尚様の真後ろの死角にいました。
「隠れて師を驚かすとはけしからん奴め!」
「和尚様が後ろを歩けと仰られましたので、常に頭の後ろにいようと動いたのです」
「……前後ろは、足の向きで考えれば良い。見えなくては、こちらが心配する」
「わかりました、和尚様」
そのうちに、川に差し掛かりました。
「さて、この辺りで斉とするかな」
和尚様は、川縁の切り株に腰掛け、風呂敷包みを開きます。ところが、入っていた筈のおむすびがなくなっていました。
「やや、いつの間に」
「はい、お地蔵様の前を通った時に一つ、三本杉の前を通った時に一つ、水たまりを飛び越えた時に一つ、落ちました」
「何かを落としたら拾うものだ!」
「わかりました、和尚様」
和尚様と小僧さんは、また歩き始めます。
少し歩いたところで、後ろから馬を曳いた男がやって来ました。
「おんや、和尚様」
「おお、吾六さんではないか」
「ねえ和尚様」
「これ、妙然」
和尚様は小僧さんを睨みます。
「他の方とお話をしている時に、割り込んではいけない」
「はい、わかりました」
「失礼しました、吾六さん。それで、お元気ですかな?」
「それが、どうもここのところ――」
小僧さんは、和尚様と男と馬の後ろを歩いていましたが――。
馬が歩きながら、糞をし始めました。
「――いやぁ、和尚様にそう言って頂けると、スッキリしました」
「いつでもおいでなさい」
話を終え、男は何度もお辞儀をして、先に行ってしまいました。
和尚様がふと振り返ると。
「妙然、お前、何を」
「和尚様、落ちた物を拾いました」
小僧さんは、山ほど馬糞を抱えていました。
「……もういい!」
和尚様は怒鳴って、電話を取り出しました。
「あー、もしもし? あんたんとこのロボット、全然使えないぞ、返品だ返――は? 外出用アプリのインストール? いや……そういうのは、確かに、やって、なかった……ですが」
読んでいただき、ありがとうございました。
ショートショートの定番、ネタかぶりの地雷原、昔話パロディでした。
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