第28話 マーモちゃんのそっくりさん増殖中
ネット環境はありましたが、道具がスマホしかありません。
生まれて初めてスマホで書きましたが、ここらで限界を感じましたので、ちょっと短いです。
翌朝、全員に魔法を教えるんだけど、人の魔法属性は変わらないのが常識のこの世界で、魔法を覚える現場を人に見られたくはない。
それで、ビアルヌを出て一度東に向かい、それからこっそりと南下して人が来ない辺りを探す。
見つけた場所は、魔獣の通り道から少し離れ、東側に向かって岩場が続いているために居るのは元からいたか偶々流れ着いたか、強くないが状況判断に長けている魔獣のようで、こちらにちょっかいを掛けてはこなかった。
マイラたちは全員が光属性を持っていないわけではなく、サファとシャラは光属性は持っていたのだが、これまで使う機会がなくて不活性のままだったので、今回は活性化させるだけになる。
「はい、私が魔法を送るから、それを感じて、とにかくたくさん起動してね。」
私の指示で皆と一緒になってフスフスと魔法を起動する練習をしていたが、やはりサファとシャラはすぐに音が変わり始めて回復魔法が使えるようになった。
俺は残った皆に魔法を送りながらフェンとマーモちゃんを構うのと平行して探知を行い、お昼に良さそうな大きめの鳥を数羽風弾で落としていて、落とした鳥はフェンに回収に行ってもらっていた。
サファとシャラが魔法を覚えて人手が増えたので鳥の処理を手伝ってもらおうと思ったのだが、サファもシャラも鳥を捌いたことなんかないみたいで、仕方がないので血抜きから解体までを教えながらやる。
2人ともさすがは良いところの生まれらしくて顔色が…って、2人とも、昨日、魔獣を殺してたのに、何でよ。
それから簡単な竈を風魔法で重さを軽減して組んで昼食の準備をしていたのだが、途中でマーモちゃんが、きゅきゅ、と鳴いて森の奥を指差してきた。
なんだろうと探知してみると、数人が探知範囲を斜めに、森の奥からビアルヌの町に向かって北東に進んでいるのが見えた。
へえ、この奥に何か行ってみる価値のあるものがあるのかな、と思いながら、探知した人たちがどんな人たちなのか、一応探りを入れてみたのだが、何だか探知した像が乱れて安定しないのに戸惑った。
精査してみて、幻覚か何かで本来の姿を偽装しているのだと分かった。
(ふうん、何かほかの人たちに隠し事をするようなことがあるのね。)
干渉していることがバレないように、慎重に偽装を探り、擬装にトリックフォックスの偽装を被せて相殺するようにしながら正体を探ると、魔族特有のカメラのレンズを思わせる眼の煌めきが擬装の下から見えて思わず息を飲んだ。
両手を皆に向けて振って訓練の中止を告げると、俺は彼らの人数を確認して強さを探る。
人数は3人、強さは……全員でかかれば、何とかなるか?
殺すならともかく、全員を尋問可能な状態で捕まえるというのは難しいかもしれない。
どうしようかと考えていると、マーモちゃんは彼らには興味を示さずに彼らの来た方を指差しているのを見て気がついた。
あ、そうか、マーモちゃんの仲間を探すためだけなら今彼らを捕まえなくても良いかもしれないんだ。
取りあえず皆に集まってもらって、この先にアスリーさんのマーモちゃん以外のほかの幽体に関する手掛かりがあるかもしれないことを説明して、調査に掛かって良いかを確認する。
「アスリー様のためになるのでしたら、ぜひともお願いします。」
ライラの言葉に周囲の誰もが頷いた。
皆、頼もしい限りで嬉しいけれど、彼らをどうしようかと提案したら、マーモちゃんの仲間を探した後で、と皆して先送りにしようとするのはなぜかな?
魔族の3人が通り過ぎるのを見送り、彼らの後から追加で来る者もいないことを確認してから、マーモちゃんの反応を見て、取りあえず昼食を優先することにした。
ただせっかく作った竈だけど、今さら火を出すのは止めて、鍋やフライパンに蓋をしたまま直接火魔法で熱を通していき、匂いが広がるのを抑えるために風魔法で周囲との空気の流れを遮断する。
料理自体は、美味しくできたよ?
当たり前じゃない。
◇◆◇◆◇◆
昼食後、森を南下し始めてしばらくしてマーモちゃんが、きゃきゃ、と鳴き始めたので何事かと思ったら、体に魔力が当たるのを感じて反射的に結界を張ったと同時に周りがバンバンと爆ぜるように吹っ飛んだ。
ボワンと結界が撓むような衝撃に周囲を探ると、フェアリィデビルが数匹、こちらを見下ろしていて、マーモちゃんが歯を剥き出して怒っているところをみると、仲間ではないらしい。
マーモちゃんに接触しながら同化して新しいフェアリィデビルがマーモちゃんの仲間ではないことを確認してから、そのことをみんなに伝えて反撃を開始する。
以前にフェアリィデビルは空間魔法と風魔法を使うと聞いたが、空間魔法と風魔法なら俺も得意分野だからね。
まずは皆の周りに結界を張って守り、マーモちゃんを抱いたまま宙に浮くと見通しのよい場所を確保して小さな土柱を30個ほど作ると、フェアリィデビルが隠れた後ろに予め収納空間を作っておいて、フェアリィデビルに向けてばら撒くように土柱を打ちだした。
フェアリィデビルは慌てて身を隠そうとしたが、隠れ場所になりそうなところには俺が予め設置してあって、仲間が収納空間に落ちていく悲鳴が聞こえるのにパニックになりながら逃げようとして、きゅきゃあーっ!、と断末魔のような叫び声を残して消えてゆく。
実は、俺が最近まで収納空間を生き物に使ってはいけないと思い込んでいて、セルジュさんからそんなことはないと聞いて、使ったのは今回が初めてだった。
でも、フェアリィデビルたちのあまりのリアクションに俺が恐る恐る収納空間を覗いてみると、うなだれたまま一固まりになって動けなくなっているフェアリィデビルたちを見つけてホッとした。
マーモちゃんと一緒にのぞき込んでいると、フェアリィデビルたちはなにを思ったのか俺とマーモちゃんに頭を下げて、クアクア、と鳴いている意味を図りかねていると、マーモちゃんが、きゅあー、と鳴いて相手の頭に手を当てた。
それから俺のところにきて俺をつぶらな瞳で見上げるので、ついマーモちゃんの頭に手をやると……あ、これ、ひょっとして。
ほかのフェアリィデビルのつぶらな瞳をみるに、やっぱりか。
ノーメが目敏く何があったか気がついて、へへ、お猿さんのボスに就任おめでとー、と言ってきた。
ふふ、ノーメとそのお猿さんが俺の手駒としては同格だということに気がつかせてあげてもいいのよ?




